Eighter -Midnight Howling-
22nder 〜とある封廟の禁断フォビドゥン C〜



#5
 海軍戦略研究所の地下……あろえ、與鷹(よたか)交喙(いすか)、総介がそれぞれ銀鯱(ぎんしゃち)四天王と死合っている最中、かんなはとい
うと、四人(正確には総介のところには桜がいるので五人ですが……)と同じように地下の地面に叩きつけられて
いた。
 地面に大の字に仰向けになっているかんなだが、そのおかげで傷一つなかった。
 と、いうのも、今の状況から考えるに大の字じゃなかったら手足が崩落で鋭くとがった瓦礫に串刺しにされ、最
悪切断されていただろうからである。これはまさしくかんなの超運のおかげである。
 ってか、それ、大の字のまま動きが取れないってことなのでは……
白拍子かんな「……」
 どうしようかとかんなが考えていると、突如瓦礫が消えてなくなる。
 瓦礫がなくなり自由になったかんなが身を起こすと、目の前には《シルエット》がいた
*「……余計な世話だったかな……」
 それは瓦礫を消し去って助けたことだろう
かんな「いえ、そんなことはないですが……」
 空虚で得体のしれない《シルエット》……だから、距離を取って用心するのは当然のことである。
かんな「私を助けてくれたことには礼を言います。が、あなたは何をしにここへ来たんですか?」
 とりあえず助けてもらったならば、お礼を言うのが世の情け。
*「敵対するつもりはないよ……それは分かると思うが……」
かんな「……」
*「今、ここでやるべきことは先に進むことだ……こんな場所で(いたずら)に戦力を消費するものではないよ」
かんな「それは、確かに、そうでしょうね……」
*「他のメンバーが心配なら……」
かんな「いいえ、みんなが無事なのは知っています」
 信じていますではなく、知っていますというところがミソだ。
 なるほど、確かに超運をもってすれば分かるわけだ……と《シルエット》
かんな「ですが、そうですね、こんな場所で足踏みしている場合ではないようです」
 そのまま踵を返し奥へと走っていくかんな。目指すは言うまでもなく、ドラゴンクロニクルが発動している場所
だ。
*「……出しゃばりすぎるのもあまりよくはない……か、しかし、どうして肩入れしてしまうんだろうね……」
 一人残された《シルエット》はそんなことを呟く。だが、彼の言葉に答えてくれるものは何もない。
 そして、気が付けば、《シルエット》もその場から忽然と姿を消し去っていた。
 なお、かんなが地下へ急いだ理由にはもう一つある。
 これまで《シルエット》が登場したときはいずれも場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)が関与していた。それが偶然なのかどうか
は分からないが、今回もそうであるとかんなは超運で察知した。
 だからこそ、急いだのだ。

#6
 一方そのころ……
 横浜、自衛隊海軍基地
 その基地の最高指令室のドアをノックする音がひとつ
*「入り給え」
*「はっ!」
 中の人の許可を得るとノックした漢はドアを開き一歩中へ足を踏み入れるとすぐさま敬礼を行う。
*「楽にしていいぞ、シーゼロ」
シーゼロ「はっ!」
 シーゼロ……それは自衛隊海軍特務、坂本ぜよ子のコードネームである。そして、彼女が面と向かっているこの
部屋の主は北郷南留(みなと)、自衛隊海軍最高司令官である。
北郷南留(みなと)「今回、貴方を呼んだ理由だけど……その前に、銀鯱(ぎんしゃち)という部隊は知っているわね?」
シーゼロ「我が自衛隊海軍の獅子身中の虫……いえ、癌細胞のようなものかと……」
南留(みなと)「ええ……そうなのよね」
 はぁ、とため息を吐くと、それが何か?とシーゼロが尋ねてくる
南留(みなと)「奴らはさる研究所からとあるシステムを奪い、軍事利用を目論んでいる……って情報をキャッチしたのよ」
シーゼロ「民間の研究機関の成果を軍事利用……ですか?」
南留(みなと)「えぇ、最初は馬鹿馬鹿しいと一笑していたのだけど、どうも笑いごとでは済まないみたいなのよね」
 龍脈からエネルギーを吸い取り力とするシステム。ドラゴンクロニクルという名称なのだが……とこれまでの経
緯を語る。
 そして、既に奪われたシステムの破壊と再奪還にむけて民間の何でも屋が活動を開始しているとも告げる。
 無論、それはEighterのことである。
シーゼロ「では、私の任務はその民間の組織をも抹殺し、研究成果を秘密裏に確保すること……でしょうか?」
南留(みなと)「ちょ、待って待って待って……」
 貴方、時々予想以上に物騒なこと言うわね……と冷や汗が止まらない上官。
シーゼロ「……ちょっとしたジョークであります」
 敬礼しながら真顔でそう告げるシーゼロ。
南留(みなと)「あのね、笑えないジョークはジョークって言わないのよ……」
 そして、固まる二人。
シーゼロ、南留(みなと)「ぷっ……ふふふ……」
 その後、二人は我慢できなくなり吹き出す。
 この二人、上司と部下という階級の差はあれこそ、かつては共に戦火を潜り抜けてきたたたき上げの軍人である

南留(みなと)「ええと、ともかく、あなたの任務は……いわゆる後詰ってやつね?」
シーゼロ「……」
 ええと、もしかして不満だった?と部下の顔色を窺う上司。その姿はとてもじゃないが海軍最高司令官の姿とは
思えない……
シーゼロ「これを機に銀鯱(ぎんしゃち)を壊滅に……ということね?」
南留(みなと)「ええ、難しい任務かもしれないけれど、これは貴方以外に適任がいないの」
シーゼロ「任せてください。お国の為ならば、我が生命など惜しくはなぁ〜〜い」
南留(みなと)「いや、何もそこまでしなくても……」
シーゼロ「これもちょっとしたジョークであります」
南留(みなと)「あのねぇ……」
 あきれてものも言えないが、ともかく、任務は開幕した


続

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