Eighter -Midnight Howling-
20ther 〜盗まれしは腕時計B〜



#3
 東京都にある質屋から腕時計三個が盗まれた……
 そして、その腕時計には何かが隠されていた!?……更にそれをかぎつけた場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)が暗躍を始める。
 天四斗(あまよと)、Eighter本部
*、*「あの〜、すいません」
梓與鷹(よたか)「ん?」
 東京都で<腕時計盗まれてすぐ、天四斗(あまよと)では一組の男女がEighter本部を訪れていた。
百鬼あろえ「依頼ですかぁ?」
*、*「あ、ああ、私達はこういうものでして……」
 名刺を出しだす二人。そこにはそれぞれ中谷頼史郎、中谷穂乃佳と書かれていた。
あろえ「ははぁ、中谷夫婦?」
中谷頼史郎、中谷穂乃佳「いいえ、違います」
 キッパリと否定する二人。そして、女性の方が私は『なかたに』と言い、男性の方が俺は『なかや』って言うん
だ、なんて言い出す。
 まあ、義姉弟の契りを交わした仲ではあるが……とも続けるのだった。
一同「……」
 漢字が同じでも読みが違うのかよ……と謎の驚き。
頼史郎「依頼内容というのは言うまでもない、盗まれた腕時計の奪還だ」
與鷹(よたか)「ははぁ、つまり、あなたたちは質屋・ずんいいよの従業員か何かだと」
穂乃佳「いえ、違います」
 って、違うんか〜い!と心の中で突っ込む一行。
頼史郎「そうですね……事の詳細を語った方がいいでしょう……」
穂乃佳「あの腕時計はそもそも頼史郎の家から盗まれた代物だったんです」
あろえ「盗品を売って……更にそれが盗まれたってこと?」
 ああ、と頷く頼史郎。
 二人はとある研究所で働く研究員で、龍脈からエネルギーを取り出すシステムの開発を行っていたのだという。
頼史郎「研究は一応の成果を見せ、俺達は無事龍脈からエネルギーを取り出すシステムを開発することに成功した
んだ」
穂乃佳「それが、ドラゴンクロニクル……そして、先月、盗まれてしまったの」
あろえ「ちょ〜〜っと待って……その盗まれたシステムと腕時計が結びつかないんですけど」
頼史郎「話はまだ続くんだ」
あろえ「あ、はい……」
 勝手に話の腰を折ってしまいすいません……と引き下がるあろえ。
 龍脈からエネルギーを取り出すことに成功した直後の事、俺達の研究成果を奪おうとする組織が現れたんだと続
ける頼史郎。
 そこで二人は一旦研究所にあったシステムを完全に破壊し、マイクロチップに設計図を保存、頼史郎の家にあっ
た腕時計に隠したのだという。
 あ、ここで漸く話が繋がったと、あろえはポンと腕を叩く。

#4
頼史郎「しかし、組織の連中は俺の家を見張っており、俺がマイクロチップを腕時計に隠した事を知っていたんだ
……」
あろえ「それで盗まれた……んん?」
 しかし、そこで再びあろえが首を傾げる。
 それも当然であろう。組織に盗まれて売り飛ばされたというのならば既にその人形にデータはないはずだ
 更にそれが盗まれたというニュースは、一体どういうことなのか?
穂乃佳「腕時計を盗んだのは組織の連中ではなかったんです」
 骨董品を盗んで売りさばく別の犯人が、頼史郎の家にあった腕時計の値打ちを知って盗んだというわけだ。
 そして、盗まれた腕時計は質屋・ずんいいよに売り飛ばされ、更にそこからまた盗まれたのだ。
 ニュースを見て、盗まれた腕時計は俺のものに間違いない!と確信した頼史郎はEighter本部へ彼
女と共にやってきたのだ。
頼史郎「ニュースの映像は見ましたか?」
與鷹(よたか)「まぁ、一応は……」
穂乃佳「顔にモザイクがかかっており、誰なのか特定ができない映像でしたが、あの衣服は間違いなく組織のもの
だったんです」
 衣服からどうやって判断できるのか……と思われるが、実は犯人はセーラー服を着た男性だったのだ。
 アレがコスプレではないとすれば答えは一つ……
與鷹(よたか)「なるほどな」
(かみ)総介「そして、これは早々に手を打たなければならない案件」
一同「うおおおおおっ!」
 突如やってきた総介に一同はびっくり仰天
與鷹(よたか)「総……」
山咲(やまざき)桜「一刻も早く、システムを、その設計図を奪還する必要があるのでしょう?」
頼史郎「……あ、ああ……」
 なんでそれを?と驚きを隠せない二人。
與鷹(よたか)「どういう事なんだ?」
穂乃佳「ドラゴンクロニクルは一応の完成を見せましたが、まだ不完全なんです」
頼史郎「龍脈からエネルギーを取り出すシステムは今までにない画期的な代物……だが、しかし、龍脈からエネル
ギーを全て取り出してしまうとその土地には災厄が訪れる」
 科学者とは思えない物言いだな……と一行。
 もし、システムが悪用され、日本の龍脈という龍脈からエネルギーが取りつくされてしまえば最悪日本沈没とい
うことにもなりかねない……
頼史郎「だから、頼む、奴らが、システムを悪用しているようであれば、それの完全なる破壊を!」
穂乃佳「そして、システムの奪還を……」
與鷹(よたか)「……わかった」
頼史郎、穂乃佳「ありがとうございます」
 オーパーツではないが、悪用されれば大変なことになる代物を放置しておくわけにもいかない。
 與鷹(よたか)はこの依頼を受けることにしたのだった。


続

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