Eighter -Midnight Howling-
20ther 〜盗まれしは腕時計 A〜



#0
 腕時計……それは時間を確認する必需品。
 しかし、現代では携帯などで手軽に時間を確認できるため、必需品ではなくなった感もある。
 さておき、これはとある腕時計に隠された秘密が世界を揺るがす……かもしれない物語

#1
 東京都、質屋・ずんいいよ
 そこは、質屋の中でも特に腕時計を専門に扱っている店であり、界隈からは皮肉を込めて『質ずん』などと呼ば
れている
 事件はそんなお店で起こった
*「て、店長!こ、これを見てください!」
*「あ?どうした?」
 血相を変えて倉庫へやってくる店員。そして、店長に防犯カメラの映像を見せる
*「なっ、こ、これはッ!」
 そこには一人の男性が棚に飾ってあった一個三十万超過の腕時計を堂々を持っていた鞄の中へ詰めて去って行く
という決定意的瞬間が映し出されていた
*「野郎ッナメた真似をしてくれる!」
 そして、店長は思い切った行動にうって出たのだった

 天四斗(あまよと)、Eighter本部
梔曹(くちなし・つかさ)「東京都、質屋・ずんいいよから腕時計三点、総額百万円相当の品が盗まれる……か。高価な腕時計もあった
もんだなぁ……」
梓與鷹(よたか)「まぁ、極地でも動くような腕時計となれば数十万はするかもだな」
(つかさ)「これに対し、質屋・ずんいいよの店長、六麗楠(ろれくす)樫夫は、犯人が盗み(コト)を起こした決定的瞬間を撮った映像を公開
……」
 一応プライバシーを護るために顔にはモザイクがかかっているが、一週間以内に返却されない場合はモザイクを
外すことも辞さない構えとのこと
 後悔したのならば、名乗り出て返却し、公開を取り下げろという話である。
※なぜにダジャレ……

 それはさておいて……東京都、某所
*「ブツの奪還に、成功しました」
*「ご苦労だった……」
 机の上に質屋・ずんいいよから盗んできた腕時計がおかれている。
*「遂に我らが手にコレが……」
 そのまま漢は何を思ったのか突如腕時計を分解しだす。
 そして中身を確認するのだが……
*「ん?」
 中身は当然ながら、歯車やゼンマイと言った普通の機械式時計の中身であった。
 漢はチッと舌打ちをすると隣の腕時計を手に先ほどと同じように分解する……だが、しかし、またしてもその中
身は機械式時計と変わらない。
 とうとう最後の一つも分解してみるも、しかし、結果は変わらなかった。
 折角盗み出した腕時計も、バラバラに分解されてはもう売り物にはならない……

#2
*「どういうことだ?」
 三個の腕時計を地面に叩きつけた後、漢はギロリと部下を睨み付ける。
*「お、お待ちください……」
 冷や汗が止まらない……下手をすれば……殺される。ただ、事前に信頼と実績のあるルートから手に入れた情報
によるとこの三つの腕時計のいずれかの中に隠されていることは確定だったはずだ……
*(どこで消えた……アレは……どこで!?)
 店で確認して盗んでからここに持ってくるまでには確かに一度も手を触れてはいないため、あり得るとすればそ
の間に盗まれたということになるが……しかし、誰が、どうやって?
*(我らが組織に裏切り者でもいるというのか?……まさか、そんな……)

*「探し物はコレかな?」
一同「誰だ?貴様は!」
 と、そのとき、一行の背後より声がする。
 一同がそこを見ると、闇からヌっと姿を出すのは一人の子供
*「ガキぃ?」
 しかし、そこにEighter一行などがいたらそうは思わなかっただろう。なぜならば、こやつは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)
の中でも人の姿を持つ悪魔だったからである。
 そして、そんな人の姿をした場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)はここにいる連中が探し求めていたブツ……マイクロチップを手
にしていた。
*「貴様……それをよこせ!」
*「嫌だよ……」
 それに、これはすごく面白そうな代物……折角だから僕が有効活用してあげるよ……と続ける
*「巫山戯(ふざけ)おって」
 ガキだろうが構いやしねぇ、殺せ!という号令を受け部下は懐から拳銃を取り出し射撃
 ガアンンッ
一同「ばっ、馬鹿なッ」
 だが、しかし、そんな銃弾を人差し指と中指のたった二本で挟んで止めて見せる。
 ありえない光景にガタガタと震えが止まらなくなる一行。
*「こんなもので僕を殺そうだなんて……滑稽、滑稽。あまりに滑稽すぎて笑いが止まらないよ……ウフフフ、ウ
フフフフフ……」
 狂気の笑み。それを見て、一行は目の前のガキがとんでもないバケモノだと気付かされる。
*「ウフフフ……君たちも、僕の道具(パーツ)として使ってあげるよ」
一同「何……」
 ずおおおおっ
 次の瞬間、一行は黒い靄のようなものに包まれ、その場に立ち尽くす。
 通常の人間が場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)にかなうはずがないということだ。
*「ウフフフ、ウフフフ……《キツネザルの使徒》……楽しい宴に、招待してあげるよ……」
 そして、その場から彼も姿を消すのであった。
 果たして、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)は一体どんな手を使って襲い掛かってくるのか
 そして、こいつらが盗み出したブツの正体は一体何か!?


続

前の話へ 戻る 次の話へ