Eighter -Midnight Howling-
16ther 〜ウラミ骨壷に入る C〜
#5
東京都のとある古美術商でおきた盗難殺人事件……そこには場違いな黒き遺物が関与していた!
そして、使われた場違いな黒き遺物(が判明したのはいいが、それを教えたのは謎の人物……
果たして、奴は一体……
※そう言えばタイトルにある『骨壷』なんて全然出てきてない気がするけど、気にしたら負けです。
梓與鷹(「……奴は一体……」
かんなが空虚と言わしめたアレは……一体何なのか?
上(総介「まぁいい、行くぞ……」
與鷹(「行くって……総?」
そんな與鷹(を軽く無視して、総介は纏(いずなの家へと上がりりこむ
纏(いずな「なっ、貴方達は一体何なんです?」
総介「警察だ!」
いずな「警察?警察の方が一体何を?」
総介「貴様を逮捕しに来た!」
いずな「なっ、なぜ私が?」
山咲(桜「令状も既にあります」
そう言って桜が懐から逮捕令状を取り出して見せる
いずな「盗撮に覗きに薬物ですって?……寧(ろ私は被害者ですから!」
総介「ああ、貴様は被害者だった……萬阡古(館の主人、田代正巳のな……」
いずな「だったら、彼を逮捕すべきでしょう」
白拍子かんな「いえ、貴方は彼を殺し、彼の罪を受け継いでしまった」
いずな「こっ……殺した?私が……?」
馬鹿なことを言わないで頂戴!とヒステリックに叫ぶいずな
私ができるのはせいぜいベッドの上で男性を殺す程度ですよ!と続けるのだが、それはそれで何か間違っている
のではないか
総介「では、そこにある壷は?」
いずな「え?」
総介が顎でくいっといずなの後ろにある壷を指し示す
それは萬阡古(館から奪われた壷であった
いずな「こっ、これは、買った……のよ?」
買った覚えがないので疑問形ないずな
総介「まぁ、ともかく、話は署で聞く」
いずな「……嫌だと言ったら?」
と、その時、突如いずなの声のトーンが変わる
ヒステリックな声から人間味を感じない冷たい声に……
そのままガイバラの銘の入った壷を手に取ると総介に殴りかかる
ズガムッ
総介「チッ、やはりこうなるか……」
ひらりと壷の攻撃をかわす総介
そして、床に叩きつけられた壷は怪訝(しなことに壊れることがなかった
それは、世にも珍しいガイバラの割れない壷
更にそんな壷を軽々と持ち上げ鈍器として殴りつけるいずなはもはや人間とは思えなかった
いずな「今すぐ、私の前から消え去りなさい」
ブンッ
かんな「はっ」
壷で殴りかかるいずなに対し、かんなが神滅超越者(で斬りかかる
さしもの割れない壷も神滅超越者(の斬撃には敵わず袈裟状に斬り裂かれる
#6
かんな「ここまでです」
更に、そのまま神滅超越者(の鎬(に当たる部分にていずなに当て身を喰らわせる
いずな「ぐううっ」
弾き飛ばされるも何とかこらえて体勢を立て直すいずな
いずな「その程度なの?」
かんな「……」
しかし、いずなの問いには答えず、哀しげな表情で彼女を見つめるかんな
與鷹((……かんな……)
かんなは優しすぎるから、たとえ場違いな黒き遺物(に支配され最早二度と元の人間に戻ることができなくなった
としても、それを斃す……殺すことは忍びないのだと與鷹(は感じていたのだが……
総介「クソッ、どうにも厄介な代物だな……魔王殺し終候群(というものは」
與鷹(「総?」
総介の言葉の意味が分からずぽかんとする與鷹(
桜「アレの最もタチの悪い点は継承です」
見かねて桜が助け舟を出す
與鷹(「継承……はっ、まさか、そんな……」
いずな「うふふふ……そうだ……お前たちに私は斃せない……」
凶器の笑みでそう呟くいずな
そう、魔王殺し終候群(の最も恐ろしく、悍ましき点は斃した相手にその悪意全てを引き継がせるというところに
ある。
だからこそ、ここでいずなを斃してしまえばかんながその悪意を継承せざるを得なくなるのだ。
しかし、今、ここで彼女を斃さないことには悲劇は終わらない
與鷹((彼女を斃さずに無力化するには、どうすれば……)
総介(無駄だ……そんなことができるのならば、かんながとっくにやっている)
與鷹((そんな……)
では、どうすればいいのか……
いずな「来ないのならば、こちらから行く」
かんな「くっ」
神滅超越者(目掛けて飛び掛かるいずな……それを超運で察知して刃を下げて後退るかんな
與鷹(「なっ……」
かんなはいずなを斃すことができないが、いずなはかんなに斃されることができる
それは最悪の展開だ
総介「どけ、かんな……こうなれば仕方があるまい、俺が奴を殺す!」
桜「駄目です!」
與鷹(「総、お前……」
いずな「ふっ……」
ズドッ
全てを受け入れる覚悟でいずなを殺そうと前に出る総介……だが、次の瞬間、いずなの胸から飛び出る謎の腕
いずな「か……はっ……」
一同「なっ?」
気がつけば、いずなの背後に先ほどかんなが空虚と言わしめて謎の人物が立っていた
與鷹((何の気配も感じなかった……や、奴は……一体)
いずな「……ふ……ふふふ……うふふふ……」
*「ああ、そんなものは僕には何の意味もないよ……」
いずな「……馬鹿な……」
ずぼっ
そのまま貫いた腕を抜き取る男性。そして、その場に頽(れるいずな
総介「貴様……」
與鷹(「お、おい、総……」
鬼のような形相で男を睨みつける総介に與鷹(が止めに入ろうとするも、余りのすごみに腰が引けてしまう
総介「貴様は、何だ?……なぜ魔王殺し終候群(の、悪意の継承がなされない?」
*「さぁ?何故でしょう?」
総介「巫山戯(るな!」
*「私が何か……という問いにだけ答えてあげましょう……私は《ネガティヴ》でも《ポジティヴ》でもない……
《シルエット》……」
総介が一足飛びにかかるが……しかし、その次の瞬間には、男はまるで影のように姿も形も消える
*「今回は特別だ……君たちはここで終わるべきではないからね……」
そして、残されたのは声のみ……
総介「クソッ」
ギリっと歯軋りを一つ、そして、そのまま踵(を返す総介
與鷹(「総?」
総介「帰るぞ」
桜「はい」
與鷹(「え?」
……あの男は一体何だったのか?
#7
一方……とある場所でも……
*「馬鹿な……魔王殺し終候群(が……」
*「殺ったのはキツネザルの使徒ではないけれどね……」
*「そんなことは……」
*「だが、アレは……」
*「なるほど、初めから存在しないモノに対しては継承もできないということか……」
*「なっ、アレがなんだか……分かるとでも?」
*「奴自身が言っていた……《シルエット》と……」
*「まさか……アレは……」
《ネガティヴ》が場違いな黒き遺物(、《ポジティヴ》が場違いな白き遺物(であるとするならば、《シルエット》
とは一体何なのか?
謎を残したまま、この事件は幕を閉じることとなる……
END
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