Eighter -Midnight Howling-
16ther 〜ウラミ骨壷に入る A〜



#0
 消せない怨みは骨髄に入る……
 出来ればそのまま骨壷に入って最後まで表に浮かび上がってこないでほしいものではあるが、中々そのようにい
かないのが人生。
 そして、これはそんな怨みが人生を狂わす物語……

#1
 東京都、某所の古物商、萬阡古まちこ館
警官「中川警部……死亡しているのはこの古美術商、萬阡古まちこ館の主、田代正巳(58)さんです」
中川邦武ほうむ「うむ……」
警官「見てください、左胸と腰に刺し傷があります……」
 どうやらこれが致命傷のようですね……と警官が続ける
警官「第一発見者は近所に住んでいる田代氏の知り合いの方でして……」
 今日はいつもと違って店に電気がついていない……また、いつもディスプレイウィンドウに飾ってある壷が無く
なって不審だったため、通報したところ、今に至るといった具合である。
邦武ほうむ「金目当て……金目のモノ目当ての犯行か……それで、店に居合わせたバアさんに見つかり、殺して逃げたと
いうことか……」
警官一行「え?」
 中川警部の発言にぎょっとする一行
邦武ほうむ「ん?どうした?」
警官「あ、この人、女性だったんですか……」
邦武ほうむ「……ん?」
 死亡した田代正巳……ソレは男性とも女性ともとれる顔つきの壮年の人物……
 故に『たしろ・まさみ』という名前からは男性なのか、女性なのかよく分からないのだが……
 正しい性別は男性である。
 中川警部は『まさみ』とう名前に女性であるとカン違いをしてそのような発言を行ったのだ。
邦武ほうむ「って、こいつ、漢!?」
警官「え?あ……はい、そうですよ……」
邦武ほうむ「……マジか……オバサンだと思っていたらオジさんだったのね……」
 そういってホトケの顔をマジマジと見る邦武ほうむ

 だが、しかし、司法解剖の結果、驚くべきことが分かったのである。
 彼……いや、彼女はいわゆる両性具有であり、オジサンでもオバサンでもなかったのだ……
 女性とも男性とも見える顔つきの壮年……それは男性でも女性でもないが故の中途半端な顔つきだったのである
 だからこそ『まさみ』という男性とも女性ともとれる名前を付けられたのであろう
※いや、そんなことはどうでもいいから!

 東京都、警視庁、捜査一課

警官「あ〜、中川警部……近くに住んでいた人がたまたま写真で撮っていたモノがありまして、盗まれた壷という
のがどんなものなのか分かりました。」
 こちらですとホワイトボードに数点の写真を張り付ける警官
邦武ほうむ「……」
 まず一点目の写真に写っていたのは『クラインの壷』と呼ばれる形状の謎めいた壷であった。
 二つ目の写真には『マクベ』と読みとれるような紋様の入った壷が写っており、三つ目の写真にはとあるクシャ
ミとかアクビとかが関係するような古く懐かしい感じの壷が写っていた
 なお、四つ目にはガイバラの銘の入った壷が写っていたのですが、前の三つのインパクトに負けたため、皆あま
り注目しなかったようです。

#2
 天四斗あまよと、Eighter本部
 警視庁にて中川警部が捜査本部を立ち上げたその頃……総介はというと、例によって例の如く、桜と共に與鷹よたかの
もとを訪れていた
梓與鷹よたか「よう、総……今日はどうしたんだ?」
かみ総介「つい先ほど、東京都で古美術商が殺されるという事件が発生した」
與鷹よたか「つい先ほど……?」
山咲やまざき桜「ええ……」
 こちらで独自に調べた結果ですが、殺された古美術商は女性の下着を盗撮したり、男性の風呂を覗き見したりと
言う前科が多々ある犯罪者で……と桜が告げると
雨水おぼろ「……女性も男性も覗くだなんて、そりゃまた節操無いヘンタイですね……」
桜「司法解剖の結果、彼……いえ、彼女?……あ、ともかく、死亡したその人は両性具有だったそうで、故に男性
女性どっちでもイケたのではないか……とかいう噂がまことしやかに流れています」
一同「……」
 トンでもない発言に一行はドン引き……というか、唖然として開いた口がふさがらない模様
桜「更に、薬物に依存しているという気もあり……」
総介「まぁ、そんなことはどうだっていい……」
 桜が淡々と情報を告げる中、総介はそれをぶった切り、ここへやってきたその目的となる話を告げる
総介「おそらく、犯人は盗撮の被害に遭った老若男女のいずれかであろうが」
與鷹よたか「範囲広いな〜」
総介「……」
 與鷹よたかの突っ込みに思わずギラリと睨みつけてしまう総介。
 そして、バツが悪くなって黙りこむ與鷹よたか※まぁ、老若男女のいずれかって全く特定できてませんからね……両性具有の盗撮犯、恐るべしと言ったところで
 ある(別に恐ろしくもなんともないけど……いや、ある意味恐ろしいかもしれないけど……)
総介「問題なのは犯人の手掛かりが一切ないと言ったところだ」
與鷹よたか「総……」
総介「まぁ、聞け……それだけならば、ホシは慎重にコトを進めただけとそう捉えられても仕方がないが……」
白拍子かんな「実際は違ったと?」
桜「ええ……最近は何かと物騒な世の中……なのかどうかは知りませんが、街角に防犯カメラが設置されている事
は御存知ですよね?」
與鷹よたか「……まさか……」
総介「そうだ……ホトケが死亡した古美術商……その付近にも当然街角防犯カメラが設置されていた……」
かんな「そして、何も映っていなかったということですね……」
総介「……店にはディスプレイウィンドウとして外から見える位置に壷が数点飾ってあったのだが、防犯カメラの
映像には壷が勝手に消える映像はあっても、人の手で盗まれたように映ってはいなかった……」
與鷹よたか「……なるほど……」
 ならば、それは、こちらの事件であるという可能性が高いわけだ……


続

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