Eighter -Midnight Howling-
13ther 〜とある黒遺の制奪 B〜
#3
東京都で起こった想像を超えた殺人事件……そこには場違いな黒き遺物(が関与しており……そして、一行はその
元凶を討つべく出陣し、第三の人の姿を持つ場違いな黒き遺物(と遭遇するのであった……
梓與鷹(「総……何が分かったんだ?」
上(総介「奴の……鋩隕鋩蝕(の全貌だ」
與鷹(「全貌って……」
総介「先ほどの攻撃の爪跡をよく見ろ!」
言われるがまま先ほどの地面を刳り取ったかのような跡を見る
與鷹(「……凄まじい威力……まるで鉄球を叩きつけたかのような……」
総介「そこだ!そこが違う……」
與鷹(「はい?」
思わず総介の顔を見てしまう與鷹(
総介「よく見てみろ……もし、鉄球で殴りつけたのならば、その威力の反動で近場の地面が盛り上がる……だが、
あれはそうじゃない……」
與鷹(「……確かに、言われてみれば平らだな……」
山咲(桜「なるほど、文字通り、刳り取った……と、言うわけですね……」
與鷹(「……大地を繰り抜いた……では、その質量はどこに?」
総介「奴が喰らったと言うことだ……」
故に、『ぼういんぼうしょく』……
と、そのとき、與鷹(がはっと気付く
與鷹(「総……さっきからかんなが派手な大技を繰りださないのは……もしや」
総介「ああ、そうだ……奴が喰らい、その糧とするからだ……」
だからこそ、大技を放てないでいる……
歯付(サヤ(チッ)
……そして、與鷹(、総介らの会話は当然、サヤの耳にも入っていく……
サヤ(あの人間(……タブラを追い詰めたと聞いたが……中々の切れ者……放置しておくと後々厄介かしら……)
かんな「死合の最中に別のことを考えられるなんて……余裕ですね」
サヤ「黙れぇッ!《キツネザルの使徒》ッ」
かんながそれを阻む……
かんなは的確にサヤの行く手を阻んでいる……一見すると、かんなが不利に見えるが、大技を使えない分防御に
撤しているため、サヤはかんな以外に手出しが出来ない状態だった……
つまり、死合は膠着状態にあったのだ……
サヤ「人間(風情が……消えてなくなれ!鋩隕鋩蝕(ッ」
かんな「麟廻舞刃(」
ズドンッ
かんなの信義を帯びた麒麟がサヤに襲いかかる
サヤ「無駄無駄ッ!私の鋩隕鋩蝕(で喰らいつくせないものなどないッ」
バアッシュッ
サヤ「何?」
麒麟が青ざめた水(から放たれた闇に呑みこまれたかと思った次の瞬間、その闇がはじけ飛ぶ
サヤ「馬鹿な……私の鋩隕鋩蝕(で喰らいつくせないものなど……」
驚愕で立ちつくすサヤの眼前に麒麟が迫る
……そして……
ズドンッ
サヤ「ッ!」
直撃……
#4
與鷹(「やったか!」
あの距離では回避のしようがない……哀れ、サヤは麒麟の餌食となったか……と思った與鷹(だが……
総介「いや、まだだ……」
サヤ「くっ……おのれ、人間(……おのれ、《キツネザルの使徒》!」
直撃を何とか回避したものの、無傷とは言えない状態のサヤ
かんな「私の信念は貴方如きには喰らいつくせません」
神滅超越者(を突きつけてかんなが宣言
サヤ「ふざけるなッ!人間(」
怒りに任せて青ざめた水(を振るうサヤ
かんな「遅いっ」
ザシャアッ
だが、そんな隙だらけの攻撃がかんなに届くはずがない……逆にかんなに返り討ちとなり青ざめた水(ごと右腕を
切り飛ばされるサヤ
サヤ「ぬ……ぬぅう……」
すぐさま左手でも青ざめた水(を創り出し襲いかかるサヤ
サヤ「鋩隕鋩蝕(ッ」
ガガガガガガガッ
縦横無尽に辺り一面を喰らいつくすサヤ
かんな「無駄です……」
しかし、そんな攻撃もかんなの超運の前では無力
サヤ「そんなことは百も承知ッ!」
そして、襲いかかる右手
與鷹(「え?右?」
我が目を疑う與鷹(……
つい先ほど、かんなに斬り飛ばされたはずの右手が復活していた
與鷹(「なん……どういう?」
総介「あれが、鋩隕鋩蝕(……」
喰らいつくして糧とする……つまりはそういうことだ……と総介
與鷹(「……なっ、回復は自由自在ってことか……」
そこにナニかがある限り、喰らいつくすことで回復できるサヤと……そうではないかんな……長引けばかんなが
不利になるのは明白であった……
サヤ「さぁ!いよいよメインディッシュに」
*「そこまでだ!」
一同「!!!!」
死合、第二幕開幕……かと思われたその瞬間……そこに新たなる声が響く……
與鷹(「どこだ?」
声はしても、その姿が見当たらない……きょろきょろと辺りを見渡す與鷹(に対して、総介は黙って宙を睨むだけ
であった……
……総介は知っていたのだ……いや、察知していたと言うべきか……その声の主はこの場所にはいないという事
を……
*「下がれ……」
サヤ「で、ですが、――様……私は……」
*「遊びが過ぎたようだな……下がれ……」
サヤ「クッ……おのれ、《キツネザルの使徒》」
ギリッと歯軋りすると、サヤはすうっと闇に消えていく
與鷹(「あ、待て……」
與鷹(の叫びも虚しく、サヤは忽然と姿を消すのであった……
総介「……去った……か……」
ならば、もうここには用はない……事件は終わった……と、言うことで総介は桜と共に足早にそこを去っていく
のであった……
與鷹(「あ、おい……総……総ってば……」
與鷹(だけが、一連の流れから取り残され浮いているのであった……
#5
とある空間、とある場所……そこは場違いな黒き遺物(の集合場所
サヤ「どうしてなのかしら……――様……私は……」
*「あのまま長引けば、お前が倒れていた……」
サヤ「クッ……」
全てを喰らいつくす鋩隕鋩蝕(を持つサヤならば、そこにナニかがある限り、闘い続けることが可能ではないのか
……
確かに、そこにナニかがなくなるまで喰らいつくしてしまえば打ち止めとなるが……そうではないのだ……
※そもそも、そうなるまえにかんながぶっ倒れます……
喰らいつくして糧とすると言っても、喰らいつくしたどれだけが糧となるのか……というのが問題だ……
あの時、縦横無尽に鋩隕鋩蝕(を放ったのも、それだけ喰らいつくさなければ腕の一本回復するのも困難だったか
らである……
簡単に言い表すと百の力を使って攻撃を繰り出し、与えたダメージから十を回復する……
つまり、効率が悪いということだ……
サヤ「《キツネザルの使徒》め……」
しかし、例外もある……それは人間……人間を喰らえば今度は逆、十の力で攻撃し、百を回復できるのだ……
だが、それが出来なかった……なぜならば、かんながそれを遮断していたから……
*「……いつも我々の想像を超える……それが《キツネザルの使徒》……か……」
だからこそ、サヤはその想像を全て凌駕する場違いな黒き遺物(を持ち出したのだが……しかし、こちらの想像力
よりも、あちらの想像力の方が上だった……というわけだ……
*「……さて、次は……どうしたものかな……」
そして場違いな黒き遺物(の暗躍の夜は更けていく……
END
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