Eighter -Midnight Howling-
11ther 〜有り得ぬ受胎酷恥じゅたいこくち A〜



#0
 神奈川県、郊外
 その夜、一人の女性がスコップを片手に地面を掘り進めていた
*「はっはっはっはっ……」
 切羽詰まった表情の彼女はそのまま掘った穴に何かを埋めると逃げ去るようにその場を去っていく……
 ……そして……これが事件の発端だった……

#1
 翌日……
警官「那智警部……埋められていたのはウェアを着た嬰児えいじでして……」
那智飛虎とぶとら「死体遺棄か……」
警官「はい、昨夜、丑三つ時にフードを被った人物が何かしでかしているのを見た……という目撃情報もありまし
て……」
警官「これが、穴を掘る際に使ったスコップだと思われます……」
 現場の近くに破棄されていたスコップを持ってくる警官
飛虎とぶとら「ふぅむ……」
 それは、まるで日曜日に神様が世界を棄てたかのような装飾の施されたスコップであった。
飛虎とぶとら「よし、鑑識に回せ……指紋が残っているかもしれん……」
警官「はっ直ちに……」
 そして、すぐさま鑑識に回され、結果、スコップには近くの喫茶店でバイトをしている女学生のものであるとい
うことが判明した……

 と、言うわけで早速警察はその喫茶店へと足を運ぶこととなる……

 喫茶店・赤毛庵
*「いらっしゃ……」
 警察が来たことでさぁっと血の気が引くウェイトレス
 そんな彼女を一旦おいといて警察は店の奥へと進んでいく
*「あの……何か?」
 恐る恐る声を駆けるのはこの喫茶店の店主である
飛虎とぶとら「こちらに原諏禊美はらす・はらみさんがいると思いますが……」
*「ああ、彼女でしたら……」
 カランッ
 ダダダダッ
 そのとき、喫茶店の入り口が勢いよく開き、先ほどのウェイトレスが逃げ去っていく
*「あ、あの子……ですが……」
飛虎とぶとら「逃がすな!追え!」
警官「はっ、直ちに……」
 すぐさま彼女を追う警官
*「……あ、あの……い、一体何があったんですか?」
飛虎とぶとら「実は……彼女は嬰児えいじ遺棄の疑いがありましてな……」
*「嬰児えいじ遺棄……そんな、まさか……」
 あの清楚な彼女に限って……と店主も困惑気味であった……

警官「那智警部……どうにか、彼女を確保しました……」
 暫くして、警官が彼女を連れて戻ってくる
飛虎とぶとら「うむ、御苦労だった……」
原諏禊美はらす・はらみ「放して……あれは……違うの……」
飛虎とぶとら「何が違うと言うのだね?」
禊美はらみ「だから……その……」
 アレは私の子だけど……私の子じゃないのよ……と禊美はらみ……
 どうも、言っていることがよく分からなかった……

#2
 神奈川県、神奈川県警
警官「那智警部……調べた結果なんですが、あの嬰児えいじはどうも魚鱗癬ぎょりんせんにかかっていたようですな……」
飛虎とぶとら「ふぅむ……魚鱗癬ぎょりんせんか……」
警官「はい、肌も緑色ですし、気味悪がって遺棄したのではないかと思われます……」
 嬰児えいじの写真を見せながら、警官が話しだす……
飛虎とぶとら「……可哀そうに……」
 ガタガタッバタンッ
警官「たったったった、大変です!那智警部!」
飛虎とぶとら「どうした?騒々しいぞ……」
 と、そこへ一人の警官が駆け付ける
警官「死亡していたと思われた嬰児えいじですが……息を吹き返しました!」
一同「何ぃ?」
警官「本当です……あんなに冷たくなっていて……死亡していたものだと思われていたんですが……」
飛虎とぶとら「……何と言う……生命の神秘か……」
警官「那智警部……殺人では無いから罪はちょっと軽くなりますかね……」
飛虎とぶとら「フン、生きたまま埋めたってことだ……罪は重くなるだろう……」
警官「そ、そうですか……そうですよね……」

 そんなことはともかく、取調室にて、彼女はしきりに、あれは私の子供であって私の子供では無いと主張し続け
ていた……
 一体、何を言っているのか……
警官「ふざけたことをいうものじゃない……アンタの子供なら、アンタの子供なんだろう……」
禊美はらみ「そう……だけど、でも、そうじゃないの!」
警官「何を言っているんだ……」

 ……その頃、Eighter本部では……

 天四斗あまよと、Eighter本部
かみ総介「……先日、神奈川県にて、女子学生が嬰児えいじを殺して遺棄するという事件が起こった……」
梓與鷹よたか「……それはまた……」
 唐突に現れてはこのように話しだす総介……それに対して與鷹よたかはもう、驚くことも無かった……
 いや、事件の内容に関しては驚いているのだが……
 そして、総介がEighter本部ここへやってくるということは、その事件は通常の手段では解決できない事件
であることを意味していた……
総介「嬰児えいじを遺棄したのは近くの喫茶店でバイトをしている女学生、原諏禊美はらす・はらみ(十七歳)だったのだが……」
與鷹よたか「……だが?」
百鬼あろえ「あ、ひょっとして相手が分からないとか……」
総介「いや、分かっている……」
 あろえの発言に対し、首を横に振りながら呟く総介
與鷹よたか「じゃあ、何が問題なんだ?」
総介「……その相手が問題だ……」
あろえ「相手?」
 そして、総介は懐から一枚の絵を取り出す
総介「コイツだ……」
あろえ「……へ?」
 それはモンタージュ……顔を魚鱗癬ぎょりんせんにおかされたのだろうか……こう言っては失礼だが、醜い顔の男性が描かれ
ていた……
総介「彼は尚神威しょう・かむい……年齢は……不明だ……」
與鷹よたか「不明って……?」
総介「……そもそも、これはモンタージュではない……」
あろえ「はい?」
 モンタージュではない……それは一体どういうことなのか……


続

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