Eighter -Midnight Howling-
9ther 〜姉の襲いかかる時 A〜



#0
 ある日、けいを探しにやってきたのはけいの姉を名乗る女性たち……そして、お家騒動のような展開となり、けいを認
めない姉、イェル子はけいを勝負を行い、雌雄を決しようとする
 果たして、けいはイェル子に勝てるのか……
 そして、イェル子ってのは本当に彼女の本名なのか?
 ……あと、ついでにけいのお家騒動って一体何なのか……
けいのお家騒動がオマケ扱いになっとる……

#1
天然蛍あましか・けい「はっ」
天然あましかイェル子「ふん」
 ガキンッ
 睨みあったまま動かなかった二人だが、突如両者、一斉に飛び掛かる……と同時に刃をかち合わせる
イェル子「力はあるみたいね……でも、まだまだ甘いわッ」
 そのまま右脚の蹴りが炸裂……が、しかし、それを左腕でガードするけい
けい「甘いのはそっちじゃないの?」
イェル子「このっ」
 バックステップで距離を取るイェル子。だが、その隙にけいは追撃を行う
けい紅龍炎舞然こうりゅうえんぶ」
 深紅の炎の龍を作りイェル子を四方から責め立てる
イェル子「くっ……あああ!」
 回避する暇もなく、炎に包まれ、呆気なく崩れ落ちるイェル子
突込魁とつこみ・かい「え?……勝負ついた?」
 あまりの呆気ない決着に唖然とするかい……しかし、その次の瞬間、背後から強大な殺気が
かい「ッ!」
 振り向くと、そこには無傷のイェル子が腕組みして経っていた
かい「うそっ……」
 思わず今しがたイェル子が崩れ落ちたであろう場所を見るが、そこには焦げ跡はあっても、イェル子は存在しな
かった……
イェル子「夢でも見たんじゃないの?」
天然枝理あましか・えり「……」
 やれやれ……とため息をひとつつく枝理えり
けい「……うん、夢……そうだね。夢は見たよ……俺がイェル子アンタを斃すってな夢ッ」
 叫ぶと同時に後方のイェル子に襲いかかるけい
イェル子「それはきっと逆夢……いえ、逆夢になるわ……」
 迫るけいの真・炎双刃を蒼い爪で受け止めながらそう呟くイェル子
けい「じゃ、正夢になるように頑張るね……」
 それは単なる努力じゃないか……と、思いつつも、かいはそういえば、けいの夢はよく正夢になっていたような……
と、いうことを思い出す
枝理えり「イェル……子め……油断しているからあんなことになるんだ……」
 けいとイェル子の死合を眺めて枝理えりはぽつりとそう漏らす
かい「油断?」
枝理えり「ん?いや、こっちの話だ……気にするな……」
 そう言われても、気になるものはしょうがない……
 また、気になる点といえば、先ほどから枝理えりがイェル子を呼ぶ際の妙な間も気になる

#2
かい「……あの、なんでイェル子……さんを呼ぶとき、妙な間があるんですか?」
 ……自分も妙な間をつけてしまったなぁ……とか思いつつかいが疑問を投げてみると……
枝理えり「イェル子なんて言いにくいだろ?……」
 まぁ、確かにそうですけど……
枝理えり「だから、イェルって呼んでいるんだが……そうするとあいつ、怒るからなぁ……」
 だからとってつけたかのように妙な間をあけて『子』をつけている……のか……それもそれで、怒られるような
気がするんだが……
 本人がそれでいいのならば、何も言うことはない
かい(ってか、そもそも、本当に『イェル子』って名前なのかどうかすら怪しいんですけどね……)
 そもそも名づけ方からして怪訝おかしいのだ……一人が枝理えりなんて日本語めいた名前なのに対して、もう一
人はイェル子なんていかにも取ってつけたかのような名前……
 それは、まるで、美鈴メイリン、ルナマリアってな姉妹のようなちぐはぐさだった……
 ……まぁけいの家系なので親がトチ狂ってそんな怪訝おかしな名前を着けた……とも考えられる……世の中には現代版
寿限無じゅげむ……ルーシー(以下略)なんて人物もいるのだ……

 と、そんな観客ギャラリーの四方山話はどうだっていいのだ……
 死合の方はというと……

けい蒼鳳炎舞そうほうえんぶッ」
 蒼き炎の鳳がイェル子の四方からイェル子目掛けて襲いかかる
イェル子「四方から襲うの好きよねぇ……」
 ささささっとまるで曲芸のように迫りくる鳳を回避すると同時にカウンターとして水の球体をぶつけて掻き消し
て行くイェル子
けい「水は嫌いだって言ったのに……」
イェル子「いい加減好き嫌いをなくしなさいよ、子供じゃあるまいし……」
 いや、そういうことじゃないと思うんだが……
けい「え〜〜……だって嫌いなものは嫌いなんだもん……」
 そんな子供じゃないんだから……と思わずかいはガクっとなる
イェル子「……あ、そう……じゃ、そのまま私の熱き塊を受けて沈みなさいッ!」
 そこは熱き魂の間違いじゃないのか……と心の中で突っ込むかいだが、イェル子は右手を天に掲げて巨大な水の球
体を造り上げている……更にそれがゴポゴポと沸騰しているように湯気だっていることから強ち、熱き塊ってのは
間違っていないのかもしれないが……
 紛らわしいにも程がある
けい「だから、水は嫌いだって……」
 炎でガードするけいだったが、振ってきた巨大な水の球体は炎を受けると突如爆発的に燃え上がる
 ゴッ
イェル子「水は嫌いって言うから特別にガソリンを用意してみました」
けい「ぐっ……くぅ……」
かい「え?」
 そんな大量のガソリンを一体どこから用意したというのか……いや、そもそも、あのガソリンにはそんな臭いは
しなかった……
 一体イェル子はどんな手品を使ったのか……
 ……いや、沸騰させていたようだけど……そうなると燃えだすんじゃないか……ってな疑問も残るけど……
イェル子「ふふん……どうやら、この勝負……私の勝ちの様ね……」
かい「そ、そんな……けいッ!」
枝理えり「いや……まだ、勝負はついてない……ここからが本番の様だな……」
イェル子「何を馬鹿……」
 しかし、イェル子は最後まで言えなかった……
 彼女の背後に立つ気配を察知したからだ……
イェル子「馬鹿なッ!」
 思わず叫ぶと同時に振り向くと、そこには無傷のけいが立っていた
けい「第二幕……行くよ……」
 雌雄はまだ、決しない……


続

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