Eighter -Midnight Howling-
8ther ~姉の舞い降りる時 C~
#5
ある日蛍の元へその姉を名乗る女性(だから、以下略)が登場……そして、何やらお家に関する騒動のようで…
…魁がいることで決心がつかないのではないかということに……
と、そんな折、盗み聞きしていた魁の元にまた、一人、謎の女性が現れる
*「……私は……天然イェレー……あ、ううん……イェル子」
ぶんぶんと首を振って否定する女性……
突込魁「は?イェル子?」
天然イェル子「そ、イェル子」
……じとっと自称イェル子を見つめる魁……どう見たって偽名……しかも、無理のある名前だから仕方がない
こいつ、もしやどこぞのSAN値を減少させることが生き甲斐の這い寄る宇宙人なんじゃないか……
イェル子「あそこのエリィ……枝理の……まぁ、妹ってなていで……」
魁「ていってなんですか!ていって!」
ますます疑わしくなったので思わず突っ込む魁。
イェル子「ていっ!」
ブンと手刀を繰りだすイェル子。
突然の出来事に驚きつつそれを回避する魁
魁「ていってそういう意味じゃないッ!」
渾身の突っ込みが決まる!
……だが、大声で突っ込んだのがいけなかった……これでは盗み聞きしていたことがモロバレではないか……
天然蛍「ん~……そこでなにしてるの?」
魁「はっ!」
しまった!と思ったが時、既に遅し……蛍、枝理がそこへやってくる
蛍「あ~~、誰かと思えばイェル子姉ちゃん」
天然枝理「……何だ、イェル……子か」
魁「……疑いもしないッ!」
サラっとイェル子ってな名前を受け入れていることに驚きを隠せない魁……と、言うか、枝理の発音にもちょっ
と引っかかる部分があったんだが……
……ってか、本当に『イェル子』なんてふざけた名前なの?と魁
イェル子自身が最初に言いかけた『イェレーなんたら』ってのは何だったのか?
枝理「……で、イェル……子、何をしに来たんだ?」
生憎、今蛍と大事な話をしている最中でな……とさりげなく蛍を抱き寄せる枝理
イェル子「五月蠅い枝理ィ……アンタは……いえ、アンタらは本当にコイツを指名するわけ?」
枝理「……父君がお決めになったことだ……我ら娘はそれに従うまで」
イェル子「だとしても、こんなこと、前代未聞よ……」
キッと蛍を睨みつけるイェル子……それはまるで仇敵を見るかのごとく視線だった
枝理「だったらどうするというのだ?……我らが父君に言いあっても却下されるだけだぞ……」
イェル子「そんなことは……分かってるわよ!……でも……」
どうしても認められないことがある……
魁「……」
そして、そんな中、一連の会話についていけないのは勿論、魁である
枝理「こいつ以上の適任者はいない……それは理解しているはずだが……」
イェル子「……」
忌々しげに黙りこむイェル子……それはつまり、肯定という意味である
#6
魁「……あの、さっきから一体何の話を?」
たまりかねて魁が尋ねると……
イェル子「部外者は黙ってなさい」
魁「部外者って……」
枝理「待て待て、彼女は部外者ではない……何せ蛍の婚約者だからな」
イェル子、蛍「初耳だ!」
魁「だっ、誰が婚約者よッ!」
イェル子、蛍が知らなかった……とか呟いている中、思わず赤面して突っ込む魁
イェル子「違うじゃない」
枝理「すまん、正しくは嫁だった」
魁「いや、そう言う意味じゃないッ!」
……そもそもこの『嫁』ってのは『既婚』という意味なのか『○○は俺の嫁』ってな意味なのか……
枝理「……婚約者でも嫁でもないとなると……お前は一体蛍の何なんだ?」
難しいことを言うな……と一人勝手に考え込む枝理
魁「え?……それは……」
唐突に問いかけられて、思わず回答に困る魁
実際、魁は蛍にとっての何なのだろうか……
……目覚まし時計……?ストッパー、たまにアクセル?
蛍「まぁ、なんでもいいじゃん」
魁「あ、あはは……」
蛍にそう言われてガクっとする魁であった
魁(そっか、私は蛍にとってなんでもいい……どうでもいい存在か……)
やけになって一人笑う魁……
イェル子「で、話を戻すわよ……」
枝理「うむ、いいぞ……」
イェル子「私は貴方を認めない……OK?」
蛍「OKだ!」
いや、蛍がそこを堂々を肯定しなくても……
イェル子「だから……」
枝理「だから?」
蛍「勝負するの?……それはいい考えだね……其の右に纏いしは紅き炎爪……燃ゆる紅蓮の腕……」
夢炎の刃、真・炎双刃!とゴウゴウと既に炎をまき散らし、刃を構える蛍
魁「いや、なんでそうなるの!」
イェル子「奇遇ね……私もそう思っていたところなの……」
対するイェル子もメラメラと燃えながら蒼い爪の様な武器を手にしている
魁(い、いつのまに臨戦態勢に?)
気が付かなかった……つい先ほどまでそんな気配はなかったのに……とイェル子の殺気に驚きを隠せない魁
枝理「じゃ、負けを認めるか、戦意を喪失した方が負けってことで……」
イェル子「構わないわよ」
蛍「うん……じゃあ、始めようか……」
そう言って対峙したまま微動だにしない二人
魁「……どうしてこなった……」
そんな中、魁だけが一人、頭を抱えている
枝理「まぁ、心配はいらないわ……『勝てば官軍、負ければ判官贔屓』って言葉があるでしょ」
魁「いや、そんな名言はないからッ!」
思わず突っ込む魁
正しくは『勝てば官軍、負ければ賊軍』である。
……そして、お家のナニカをかけた(?)姉と弟の死合は始まった!
END
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