Eighter -Midnight Howling-
8ther 〜姉の舞い降りる時 B〜



#3
 ある日突然、けいの元にけいの姉を名乗る女性が現れた(いや、『姉を名乗る』って……騙っている別人とかじゃな
いんだから……)
 果たして、彼女の目的とは一体何なのか……
天然蛍あましか・けい「……ええと……誰だっけ?」
 ふぁあと欠伸をしながらそう問いかけるけい。今までどこかで昼寝をしていたことが窺える
天然枝理あましか・えり「私は枝理えり……」
けい「エリィ……?……ああ、姉ちゃんだ!」
 ぽんっと手を叩いて思い出すと同時にぱっちりと目を覚ますけい
けい「来てくれたんだ……」
枝理えり「ああ、来てやったぞ……」
けい「遠いところからはるばるようこそ……と、言いたいところだけど……生憎、お茶菓子もお茶漬けも用意してな
いんで何もないけど……」
※お茶漬けを用意するのは間違っている……というか、京都府の風習で遠まわしにとっとと帰れ!って意味なので…
 …くれぐれも用意しないように……
枝理えり「別に気にするな……お茶菓子なら、来る途中で食べてきたし、お茶漬けなら今日の朝ごはんだった」
 そして、この弟にして、この姉あり……何だ?この摩訶不思議な会話……
 ……と、いうか、お茶菓子を繰る途中で食べてきたってのはどういう意味なのか……菓子折りを持ってきたが途
中でお腹がすいて食べてしまったということなのだろうか?それとも、和菓子店で何故か試食コーナーがあってそ
こでたらふく食べて何も買わずに去って行ったということなのだろうか?
 もし、そうだとすればなんてフリーダムな人なんだろうか……
けい「で、何しに来たの?」
枝理えり「お前の……今後のことだ……」
けい「……ふぅん……」
 スッとぼけていたけいだったが、枝理えりのその言葉に突如真面目な顔つきになる。
 ……どうでもいいが、これほどまでに真面目な顔つきが似合わない人ってのも珍しい……やはり、けいはいつもボ
ケボケしているのが一番ということか……
けい「今後のコトって……アレかな?」
枝理えり「……それしかないだろう……」
 一見会話がかみ合っているように見えるがそこは天然ボケのけいと天然ボケのけいの姉の会話である……きちんと何
のことか確認しないことにはトンでもないことになるのは明白だ……
けい「う〜〜ん、残念だけど、今すぐってわけにはいかないんだよね」
枝理えり「……まぁ、そうだろうな……こちらとしても、今すぐそうしろとは言わんさ……」
 腕組みをしながらそう答える枝理えり
 ……あれ?ひょっとして本当に会話が成立している?

 一方、その頃……

突込魁とつこみ・かい「……な、何?……あの二人は……何を話しているの?」
 自分が探していた所ではけいを見つけられなかったので、枝理えりの探しているところに合流して何か進展がなかった
かどうかを聞きに行こうとした矢先、かいけい枝理えりが真剣な顔で話しこんでいるのを目の当たりにする
かい「……けいの今後……?」
 それは、天然の家のコトなのだろうか……
 けいは何か重大な一族の後継者だったりするというのか……いつもスッとぼけているのはそれを隠すためなのか

#4
かい「……いや、それはないわ……」
 しかし、すぐさまそれを否定するかい※誰だってそう思う、俺だってそう思う
かい(きっとけいとその姉のことだから……)
 またスッとぼけた会話なんだろうな……と勝手に想像しだすかい
 ……例えば、小さい頃、けいが姉に対して大きくなったら結婚しようとか言い出して……今になってスッとぼけた
姉が結納はいつごろ?とか言い出してきたとか……
かい「……何か、ありえそうで怖い……」
 勝手に想像して勝手に衝撃を受けるかいであった……

 ……まぁ、そんなことはさておいて、もうちょっと二人の会話を盗み聞き……もとい、観察するかいであった

けい「そういえば、それって俺じゃないとだめなの?」
枝理えり「無論だ……お前以外の……お前以上の適任者はいない……とのことだ……」
 こっちも驚いているのだ……まさか、お前が適任者などとはな……と枝理えり
けい「……そっか、それがセカイの答えなんだね……」
枝理えり「ああ、そういうことだ……」
けい「うん、分かった考えておく……」
枝理えり「なるべく早めにな……と言っても、時間は無限にあるが……」
 そう呟いて考え込む枝理えり
枝理えり「……ところで、決心がつかないのはあの女のせいなのか?」
 あの女と言うのは、勿論、かいのことである。
けい「ん?何が?」
 しかし、どこ吹く風な感じでそう答えるけい。
 ……いや、存外何も考えてないんだと思うけど……
枝理えり「……いや、違うのなら、いいんだ……」

 ……しかし、盗み聞きしていたかいはそうはいかなかった

かい(……何?……私のせいでけいの決心が鈍っているって……?そして、家のコトで何か重大な取り決めがある……
ってこと?)
 じゃ、じゃあ私がいなければ……と、考え込んでいると……
*「盗み聞きなんて、感心しないねぇ……」
かい「ぴゃっ!」
 背後から突如かけられた声に思わず間抜けな声をあげてしまうかい
 恐る恐る振り向いてみると、そこには一人の女性が立っていた……
かい「……え?」
 その女性は……枝理えりと瓜ふたつの双眸を持つ女性だった……あちらが鮮やかな深紅の髪の持ち主であったことに
対してこちらは美しい紺碧の髪の持ち主であたった。
 ……そう、枝理えりとの違いはその一点のみだったのだ!
 つまり、彼女は本当にかいの姉ですと言われても誰も疑わないような姿格好をした女性だったのだ!
かい「……あ、あなたは……一体……誰?」
*「ん?私……ん〜〜〜っと……」
 そのまま考え込む女性……
 その仕草でかいは確信した……このスッとぼけた気配……自分が誰だったかなんて一瞬忘れちゃうようなアホはけい
の関係者以外にいない……と……
 ……果たして、その推理は合っているのだろうか……それとも……


続

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