Eighter -Midnight Howling-
8ther 〜姉の舞い降りる時 A〜



#0
 天然蛍あましか・けい……彼はいつもぼけ〜っとして、暇さえあれば昼寝をしているそんなだらけた人生まっしぐらの人物
 そして、彼の生活を管理している人物こそ、当初はけいをぶち殺せと依頼されて出向いてみたものの、格の違いを
思い知り、更に依頼人の裏切りもあって……すったもんだで今に至っている突込魁とつこみ・かいである。
 ……そんなかいの想いはどこ吹く風、今日も今日とてけいはふらりと気の向くままに出向いては昼寝をしているのだ
が……
 今回はそんなけいかいに関するとある火の……いや、日の物語

#1
 天四斗あまよと、とあるブティックにて
*「……なるほど……」
 試着室の中で一人の女性がいくつもの衣服を試着しては鏡の前でそれを見る
*「流石は、《Dの後継者》……最有力候補……その力は折り紙つきと言うわけか……」
 傍から見れば《Dの後継者》なるモノがつくった衣服を着て感想を呟いているように見えるがそうではない……
 では、彼女は一体、何を考え、そんなことを呟いたのか……
*「よし、まぁ、こんなものだろう……」
 その後も数着試着を行うと、彼女は気に行った服を買って店を出ていくのであった……

 と、いうことはおいといて……その頃……
突込魁とつこみ・かい「全く、アイツは今日もどこに行ったんだ?」
 今日も今日とてけいを探しているのは彼を管理する人物(?)かいである。
 そんなにしょっちゅういなくなるのならば連絡先でも聞いておけば……と、思うのだが、生憎、けいにそんなもの
などない!
 ……いや、それは彼が実は戸籍がないとかそんな類のことではない。彼に携帯を渡しても二、三歩歩いた後には
どこかに落っことして連絡がつかなくなっていることが目に見えているからである……
 いっそのこと、発信気でも着けておいた方がいいのではないか?
かい「この前は羅将門らしょうもんの近くの一本杉の上で昼寝をしていたし、その前は……」
*「……なぁ……」
かい「もしかしたら、天四斗あまよとにはいないなんて恐ろしいこともあったりして……」
*「お〜〜い……」
 けいのことだけを考えてあちこち右往左往しているかい……そんなかいに話しかける人物がいるのだが、しかし、その
声はかいには届いていなかった……
*「……ちょっといいか?」
かい「え?はい?……私?」
 その後も根気よく話し続け、遂にかいと疏通することに成功。
 思わずかいもドキっとしながら声のした方を向くと……そこには一人の女性が立っていた……
 ……無論、彼女は冒頭にてブティックでショッピングをしていた女性である
*「やっとこっちを向いたか……」
かい「……ええと……あの……」
*「こっちにけいがいると思うんだが……」
かい「ッ!」
 咄嗟に身構えるかい……と、言うのも、ここ最近……でもないけど、今までの経験上、けいを尋ねてきた人物はその
殆どがけいに怨みを持つ敵だったからだ……
※最も、けいは昼寝の邪魔をされたってなことでその敵のナニカを蹴散らしていたんですが……
*「……そんなに身構えなくても……あ〜、私は……」
 と、そこで言葉に詰まる女性。
 ……一体、何が?

#2
*「……」
かい「……」
 その後も暫くぼけ〜っとした時間が過ぎる
かい「あ、あの……」
*「ん?……ああ、そうだった!思い出した!……私はけいの姉だった!」
かい「それ忘れることじゃないでしょうに!」
 渾身の突っ込みが炸裂。
 思わずすぱ〜んと突っ込みの手も入る
 ……と、言うか、何より、けいに姉がいるなんて初耳なのだが……しかし、このスッとぼけた感じはどこからどう
見てもけいのそれだった……
*「うん……私はけいの姉……天然枝理あましか・えり……」
かい「は、はぁ……お姉さん……?」
 けいに姉なんて……と思うかいであったが、しかし、かいけいの家族のことに関しては一切聞いた覚えがなく、その家
族構成がどうなっているのかもさっぱりなのである
かい(姉……ねぇ……)
 そのまままじまじと枝理えりを見つめるかいかい(……けいとはあんまり似てないね……)
 鮮やかな深紅の長い髪、シアンブルーの瞳、そしてマフラー……髪の色を除けばけいの姉ではなく、かいの姉と言っ
た方がしっくりくる……そんな女性であった。
天然枝理あましか・えり「で、話を戻すけど……」
かい「あ〜、けいですが……ちょっと行方が……」
枝理えり「行方不明なんですか?」
かい「いや、行方不明というか……」
 所在不明……?いや、どっちにしろ意味は変わらないか……どこかで昼寝していることは確かなのだが……
枝理えり「まぁ、じゃあ、二手に分かれて探しましょうか……」
かい「……あ、はい……お願いします……」
枝理えり「任せてね。こう見えても昼寝ポイントを探すのは得意なの」
かい「……」
 この弟にしてこの姉あり……と、いうことなのだろうか……いや、そもそも、この人も木の上とかで昼寝するん
だろうか……と色々と突っ込みたいところをぐっと我慢するかいであった
 ……と、いうわけで、かい枝理えり……二人によるけい捜索の旅が始まった!
※いや、捜索ってそんな大げさなものじゃないんですけどねぇ……
かい「……じゃ、私はこっちの方を探してきますね……」
枝理えり「うん、よろしく〜」
 そうして、かいを見送り、かいの姿が見えなくなるまでそれをじっと見つめている枝理えり……

枝理えり「……さて……」
 かいの姿が……そして、その気配が完全に遠ざかったことを確認すると枝理えりは早速行動を開始する
枝理えり「そこにいるんだろう?」
 ……そんなことを言ったところで出てくるけいでは無い。
 そもろも、その程度で見つかるのならば、かいは日々東奔西走しないのだが……
天然蛍あましか・けい「ん?何?呼んだ?」
 ……だが、しかし、あっさりと登場するけいであった……

 ……さて、けいの姉……彼女は一体けいに何の用件があってここに来たのか?

続

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