Eighter -Midnight Howling-
7ther 〜メダリストの愧死きし B〜



#3
 タブラ VS かんな……かんなは茜瑙哭セドナ覚醒を行わず、苦戦を強いているように見えるが、それは、タブラがかん
なの力を一つ見逃さず解析しようとしているからであった……
 ……そして、手の内を隠しつつ、かんなは死合に臨む
羅叉らさタブラ「《キツネザルの使徒》……そろそろ遊びは終わりかもね!」
白拍子かんな「……そうですね……そろそろお終いにしましょう……」
 そう言ってかんなは神滅超越者ラグナロクエクセルの刃を五尺まで伸ばす
タブラ「今更長刀の方が得意だったなんていうつもりじゃあないだろうなぁ……」
 どんなことをしようとも、最早貴様の力は解析済みだ……全ては予想の範囲内!とタブラは盲いた蘭学ブラインド・ダッチで襲いか
かる
かんな「……」
 ドンッ
タブラ「な……にぃッ……」
 だが、しかし、タブラはかんなの太刀筋に弾き飛ばされる
タブラ「馬鹿な……貴様、何を……」
かんな「そろそろ終わりにしましょう……先ほどそう言ったはずですが?」
 ギラリと輝くかんなの双眸……そして、その額には茜瑙哭セドナの印が輝いていた
タブラ(な、何……さっきまでと雰囲気が……)
かんな「はっ龍咬舞刃りゅうこうぶじん」
 上段から一気に神滅超越者ラグナロクエクセルを振り降ろすかんな……と、同時に応龍おうりゅうに変幻する光の龍が……今ま
での比では無い大きさで解き放たれる
タブラ「ぬ……なあっ……」
 その荘厳なる佇まいに一瞬虚を突かれるタブラ……
 だが、この程度で怖気づくようでは場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツは務まらない
タブラ「ふざけるなぁッ蝕無戴漫しょくむたいまんッ!」
 タブラ渾身の一撃……
梓與鷹よたか「なっ?」
 その一撃はかんなの放った応龍おうりゅうをいともたやすく無効化して見せる
タブラ「フ……アハハハハハ……見たか!《キツネザルの使徒》ッ……貴様がどうあがこうと……」
 ズダンッ
 だが、言い終える前にかんなは一足飛びにかかる
タブラ「は?」
 間抜けな声を上げるタブラ……と、同時にタブラの右腕が……盲いた蘭学ブラインド・ダッチごと斬り飛ばされる
タブラ「ガアアアアッ」
與鷹よたか「そうか!攻撃を繰り出した直後こそが最大の無防備……」
 かんなは持ち前の超運をもってして、見事、その刹那の瞬間を……最大の勝機を掴んだのだ!
かんな「はっ」
 そして、タブラに兇刃が迫る
タブラ「なぁ〜〜〜めるなぁッ」
 左手で神滅超越者ラグナロクエクセルの刃を掴むタブラ……そして……
タブラ「蝕無戴漫しょくむたいまんッ」
與鷹よたか「なっ!」
 そのまま神滅超越者ラグナロクエクセルの刃を握りつぶすように消し去る
タブラ「フフフ……残念だったなぁ……《キツネザルの使徒》……蝕無戴漫しょくむたいまん盲いた蘭学ブラインド・ダッチの固有技じゃあないかも
ねッ」
 ここにきて形勢は再び逆転……勝負はスタート地点へと舞い戻る……
 ……いや……最早タブラに同じ手は通用しないだろう……そう考えると……かんなが圧倒的に不利だ!

#4
與鷹よたか「かんな」
 慌てて飛び出しそうになる與鷹よたかの肩を総介が掴み引きとどめる
與鷹よたか「総……」
かみ総介「黙って見ていろ……」
與鷹よたか「だ、だが……」
山咲やまざき桜「タブラがかんなの行動を分析し、攻撃を繰り出していたのと同じように、かんなもまた、タブラの行動を
分析し、相手の全てをさらけ出させていたのです」
 そして、桜が解説
タブラ「何ぃ?」
 死合そっちのけで、思わずタブラは総介らを睨みつける
かんな「奥の手の隠しあいは私の勝ちです」
 一瞬の隙を突き、タブラを横に薙ぎ払うと同時に零距離からの鳳鸞舞刃ほうらんぶじん
タブラ「グアガアアアッ」

 ……そして、タブラは平穏を齎す炎の鳳凰に焼かれて……消ゆ……

與鷹よたか「やったのか?」
かんな「……いえ、逃げられました……」
 茜瑙哭セドナ開封を解いて、神滅超越者ラグナロクエクセルの刃を納めてかんなが呟く
総介「チッ……またしても……逃げられた……か……」
狂言くること優佳「って、てか……アンタ達何なのよ……一体……」
 そして、ここで漸く今まで置いてけぼりにされていた当の本人……優佳が口を開く
総介「気にするな……全ては終わったんだ……」
優佳「え?……いや、そんなこと言われても……」
 全然納得できないんですけど……と憤慨する優佳に対し、桜が躍り出る
桜「全ては、終わったのです」
優佳「いや、だから……」
桜「終わったんです」
 ズズズズズっと妙な凄みでそんなことを宣言する桜……そんな桜の気迫に圧された優佳は、はぁ……としか言い
ようがなかったのだった……
総介「さて……もはや、こんな場所に用はないぞ……山咲やまざきッ」
桜「はい、警部……」
 妙にウキウキ気分で総介の言葉に従い、そのまま総介につき従って桜はその場を後にする
與鷹よたか「……」
かんな「リーダー……帰りましょうか?」
與鷹よたか「……あ、ああ……そうだな……そうするか……」
 そして、與鷹よたかもかんなに諭され、その場を後に……Eighter本部へと帰還するのであった……

優佳「……ってか、本当に一体何だったの?」

 ……一人取り残された優佳はぽつりとそう呟くことしかできないのであった……
 ともかく、場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツ無慈悲な癒身狂クルーエル・セラピストが原因の今回の事件は幕を閉じた
 ……だが、場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツの暗躍はまだ……終わらない……

#5
 とある時間、とある空間……とある一幕にて……
タブラ「クソッ……《キツネザルの使徒》めぇ……」
*「甘く見過ぎていた……と、いうことか……」
タブラ「ッ……!」
*「いずれにせよ……お前もその様では次の行動に差し支えるだろう……」
タブラ「グッ……」
 かんなに右腕を切り飛ばされ、更に腹部に大ダメージを受けたタブラ……生きているのが不思議なくらいの重体
だ……
*「仕方がない……お前は暫く休んでいろ……」
タブラ「で、ですが……」
*「なに、堕落堕落だらだらと過ごすのもまたオツなものよ……」
タブラ「……は……では、暫し、堕落堕落だらだらと過ごすのもいいかもね……」
 ……こうして、タブラは暫しの急速を得た……メメントに続き、タブラまでが急速に入った今、場違いな黒き遺
物の侵攻は止まった……かに見えるが……そんなことはないのだ……


END

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