Eighter -Midnight Howling-
3rder 〜オタクツワモノ共が夢の跡 A〜



#0
 夏コミや オタクツワモノ共が 夢の跡
 ……これは松尾芭蕉の有名な俳句……ではありません!(いや、それは見ればわかる……)
 そして、夏だけじゃないだろう……と、まぁ、そんなことはおいといて……これは、所謂オタクが引き起こした
事件である……

#1
 徳島県、阿南某所
*「……納得いかねぇ……」
 ……その漢、赤井おりるは、言いようのない怒りに震えていた……
赤井おりる「こんな話、認められるか」
 そのまま漢は同じ気持ちを抱いている存在が他にいないかと、巨大掲示板群、チャネル・ツヴァイにてスレッド
を立ちあげてみる……
 ……暫くは荒らしや同意していない連中の書き込みが続き、おりるは更にイライラを募らせていたのだが……やがて
一つの書き込みに目をつける
おりる「んん?」
 それは、どこかのサイトのURLを張り付けただけのコメントであり、通常ならばアダルトサイトやウィルスサイ
トへのリンクとしか思わないのだが……しかし、おりるは妙に気になって、そのサイトをクリックすることにした。
おりる「……こ、これは……」
 ……かくて、事件は始まる……

 天四斗あまよと、Eighter本部
梓與鷹よたか「脅迫行為を阻止してほしい……?」
*「……はい……」
 依頼に来たのはブリッツノベルワークスに務める社員、球譜拿日日紀ぐふな・ひびき……
球譜拿日日紀ぐふな・ひびき「……みなさんは夏越レン先生の『妹のことなんか全然可愛くなんかないんだからね』という作品に
ついて御存じでしょうか?」
一同「……」
 唐突に出てきたトンでもないタイトルに一同唖然
百鬼あろえ「ああ、知ってる知ってる……」
 と、唐突に会話に参加するのはあろえである。
日日紀ひびき「最初は普通のファンレターや励ましのメールだったんです……」
 ……作品に出てくるとあるキャラの熱烈なファンのようで、連載がある度励ましのコメントを送ってくれていた
のだが……
 しかし、ある時からそのキャラだけをもっと全面的にプッシュしたほうがいいなどと独善的なコメントを送って
くるようになったのだという……
與鷹よたか「……それで、最近は脅迫めいたコメントになっているということか……」
日日紀ひびき「……はい……」
 俺が代わりに書いてやるから原稿よこせ!などと書き込みがされる始末だとか……
日日紀ひびき「……それだけじゃないんです……」
 そういって、日日紀ひびきは懐から携帯を取り出し一通のメールを見せる
與鷹よたか「……これは……?」
 そこにはただ一言……

『お前を見ているぞ』

 と書かれているだけだった……

#2
日日紀ひびき「こちらは、夏越レン先生の携帯なのですが……このメールが届いて以来、執筆作業中に妙な視線を感じる
ことがあると……」
 ……既にこのような嫌がらせのメールやコメントは五百を超えていると言う……
一同「……」
 しかし、それは気のせいなのではないか……と思う一行であった……
 ……そして、更に迷惑行為は続く……
日日紀ひびき「先日は夏越レン先生の写真……その首を切断して血塗れになっているような加工を施された画像が添付さ
れたメールが届いたんです……」
與鷹よたか「それはまた悪質な嫌がらせだな……」
日日紀ひびき「……ですが、この画像の恐ろしさはそこじゃなかったんです……」
あろえ「……と、言うと……?」
日日紀ひびき「その加工が施された写真……それは先生のブログや著者近影などに使われているものではなく、先生の自
宅を盗み撮りしたとしか思えない写真だったのです」
 勿論、先生の住所は公開されていない……犯人は一体どうやって先生の住所をつきとめたというのか……
與鷹よたか「そいつぁ……」
 妙な視線を感じるというのは思いすごしではなく、本当に監視されているのかもしれない……と考える與鷹よたかであ
り……こんなことが出来るのはオーパーツが関与しているのではないか……とも考える
與鷹よたか「分かりました、必ずや犯人を突き止め、迷惑行為を阻止させて見せます」
日日紀ひびき「ありがとうございます……これは、依頼料の前金代わりの先生のサイン色紙です」
あろえ「ラッキー!」
 ……そして、日日紀ひびきはEighter本部を後にする……

與鷹よたか「……さて、では、早速犯人を捜し出すとするか……」
 そう言って與鷹よたかはかんなに目配せを行う。
白拍子かんな「既に特定済みです」
 日日紀ひびきが依頼にきた際、既にかんなは犯人の特定作業に入っていた……
 そして、早速レムリアで特定した犯人の情報を空間スクリーンに投射する
かんな「犯人は赤井おりる(32)……ある日突然オタクの仲間入りを行った人物で……」
あろえ「なるほど、そのきっかけが『妹のことなんか全然可愛くなんかないんだからね』だったと……」
 はは〜〜ん、分かったぞといった風にあろえが語りだす。
かんな「はい……」
あろえ「じゃ、犯人もわかったことだし、あとは報告すれば万事解決……」
與鷹よたか「いや、それは違う……」
かんな「……ええ」
あろえ「ん?何?まだ何かあるの?」
 この依頼は既に解決……かと思ったあろえだったが、しかし、それはあろえの思いこみだった……
與鷹よたか「あの脅迫メールの加工写真……あれをどうやって撮ったのか……また、どうやって公表されていない住所を
つきとめたのか……」
あろえ「……」
 そんなことが出来るのは夏越氏の近所に住んでいる人物か、あるいはオーパーツの力を利用したか……
 もし、近所の住民による犯行ならば、流石に夏越先生も気付くはずである……
 ……そうなると、残る可能性は、オーパーツしかない……
※なんでもかんでもオーパーツのせいにするのはどうなんでしょうかねぇ……(いや、そんなこと言われても)
かんな「しかも、場違いな黒き遺物……」
與鷹よたか「何ぃ?」
 その時、與鷹よたかの脳裏には狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングに操られ、死でしか解放されなくなった静寂しじまを
斃したときのかんなの哀しげな表情が過ぎった……
與鷹よたか(また、あんなことが起こるというのか……)
 ……この事件、犯人が死して終わる以外の結末はないというのか……


続

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