Eighter -Midnight Howling-
3rder 〜オタク共が夢の跡 B〜
ラノベ作家、夏越レン……彼に襲いかかる熱烈なファンからの度を越した熱い思い……
そして、最早脅迫の域にまで達したその行為を止めるべく、彼の担当編集はEighterに依頼を行う。
調査の結果、犯人は場違いな黒き遺物(を使っているということが分かり……
天四斗(、Eighter本部
梓與鷹(「いくぞ、奴を止めに!」
白拍子かんな「はい」
與鷹(は一人、決意を新たに、犯人の凶行を止めるべく立ち上がる
徳島県、阿南、青井の家
百鬼あろえ「……ここ……だよね?」
かんな「ええ」
あろえは早速チャイムを鳴らすと、『はぁい』と女の人の声が聞こえてくる
與鷹(「……え?」
レムリアの情報では青井降(は独身の上、姉妹はいない……ならば、あの女性の声は一体だれなのか?
*「何?アンタら……何か用?」
明らかに不機嫌な態度で客を出迎える謎の女性……
一同「……」
それに唖然とする一行……
だが、それは接客態度に唖然としていたのではない、出てきた女はコスプレをしていたから唖然としていたのだ
……
あろえ「って、あの格好、『妹のことなんか全然可愛くなんかないんだからね』に出てくるブラックキャットのコ
スじゃない……」
コスプレ趣味のオタク友達……いや、その前に『だが、漢だ!』とかいうオチだったりしないだろうか……と與(
鷹(が思っていると、かんなが口を開く
かんな「……あれが場違いな黒き遺物(……深沈せし聖女(……」
與鷹(、あろえ「なっ?」
……場違いな黒き遺物(で造られたアンドロイドなどではなく、人型の場違いな黒き遺物(……
そのような代物、今まで見たことがなかった……
與鷹(「……だが、冷静に考えると人を道具(として扱うのが場違いな黒き遺物(……ならば、モノの形をし
ているよりはヒトの形をしている方が当然と言えば当然かもしれん……」
モノに道具扱いされる人間は通常ありえないが、ヒトに道具扱いされる人間はなくはない……
ならば、人を効率的に道具(扱いするには必然的にヒトの姿をとったほうがよいということになる……
青井降(「……何だぁ?貴様ら……邪魔をするなぁッ!」
そして、今回の事件の犯人、降(も颯爽と登場する
與鷹(「いや、アンタこそ、夏越レン先生の邪魔をするのはやめてもらおうか……」
降(「邪魔ぁ?……ハッ……ブラックキャットのことを誰よりも愛する俺のあふれんばかりの思いを……よりによっ
て夏越の邪魔だとぉ?……貴様……」
原作作家を既に呼び捨て……こいつ、何さまのつもりなんだろうか……
降(「ブラックキャット……危ないから下がってろ……奴らは俺が始末する!」
ブラックキャット「……ええ、あなたに任せるわ……」
そして、ブラックキャットは家の中に入り、降(が外に出てくる
降(「死ぃいいいぃ〜〜〜ねやぁああ〜〜〜」
袖口に仕込んだ銃を取り出すかのような仕草を行うと出てくるのはデリンジャータイプではなく、マグナムタイ
プの拳銃……そして、そのまま與鷹(ら目掛けて発砲
與鷹(「ぬなっ?」
かんな「だが、甘い……」
ジュッ
すぐさま神滅超越者(のブレードを展開し、その腹で弾丸を受けるかんな
#4
與鷹(「……奴は今、どこから拳銃を取り出した?」
唐突に拳銃が出現したとしか思えないその行為に、與鷹(は驚きを隠せずにいた……
かんな「あれは、手品なんかではなく、深沈せし聖女(の力です……」
與鷹(「何だって?」
あろえ「……そういえば、深沈せし聖女(の力って何?」
かんなの言葉に、あろえがふとした疑問を投げかける
かんな「妄想を現実にする……と言えば分かりやすいでしょうか?」
與鷹(「……無茶苦茶な能力だな……」
そして、オタクの悪い見本のような能力だ……と與鷹(は思う。
つまり、先ほど降(が出現させた拳銃はどこかに隠し持っていたものを取り出したのではなく、妄想で思い描いた
ものを現実のものにしたのである……正に、種も仕掛けもないとはこのことである
※いや、種と仕掛けは本人の妄想力なのでないわけではないのでは?
……ちなみに、降(の持っている拳銃をよく観察すると、どうにも適当な造形になっているのが分かる……これは
降(の妄想力が足りないというか、想像力が足りない証拠であろう……
降(「チィッ……こいつじゃダメか……」
ゲシュタルト崩壊したようなデザインの拳銃を投げ捨て、降(は次に漆黒と翠緑の二本の剣を妄想具現化する。
※投げ捨てられた拳銃は地面に落ちる前に再び妄想の世界に消え……跡形もなく無くなっています……
降(「俺のあふれる思い……ブラックキャットとの甘い日々の邪魔をする奴はぁ……殺すぅッ!」
そのまま怒涛の剣撃ラッシュを繰り出す降(。
……しかし、かんなはそれを涼しい顔して神滅超越者(にて受けるのであった……
降(「うぉおおおおおおッ!!」
かんな「……」
鬼気迫る表情で日本の剣を縦横無尽に操る降(……だが、しかし、その斬撃がかんなに入ることは一度もなかった
……それほどまで、両者に実力の開きがあった……
降(「ハアアアッ……貫け!奴よりも速くッ」
そう叫び、今度は白銀の翼を妄想具現化、スピードで撹乱しつつ多方向からヒットアンドウェイを繰り返す降(
……しかし、それでもなお、かんなにかすり傷一つ負わせることは出来なかった……
それは、かんなの超運をもってすれば造作もないことであった……
あろえ「……ねぇ、リーダー……なんでかんなはとっととあいつを斃さないの……」
與鷹(「……」
その答えを與鷹(は知っていた……場違いな黒き遺物(に操られた人間を止める方法は死しかない……だが、かんな
は人を殺すことに躊躇いを感じているのだ……
もし、総介が死合っていたならば迷いもせず即刻降(を殺しに行っただろうが、かんなはそれが出来ない……
断じてやる気がないわけでも、死合を面白おかしく楽しんでいるわけではないのだ……
與鷹((何か、何か手はないのか……)
……そして、場違いな黒き遺物(を使えば使うほどに、使用者は場違いな黒き遺物(に取り込まれ、最終的には死を
迎える……
どうあがいても、この絶望から逃れる術はない……
與鷹(「……クソッ……」
そして、與鷹(は決断する……かんなに降(へ死という解放を与える役目を負わせるのは酷である……
だから、自分があの場違いな黒き遺物(を破壊する……
あろえ「リーダー……?」
かんなと降(との死合が激化するなか、その一瞬の隙を狙い與鷹(は青井の家の中へ飛び込む……
果たして、與鷹(はブラックキャットを破壊することが出来るのか……
続
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