Eighter -Grand Harmonise-
29ther 〜揺らぐ心と剣の鬼 B〜



#3
天四斗あまよと、羅将門にて対峙した萌と松子しょうこ……そして死合が始まったのだが……松子しょうこいわく、萌には迷いがある
と言い放つ……そして……死合はますます白熱していく……
ザガッ
冥時みょうじ萌、前田松子しょうこ「くっ……」
ブシュアアアアッ
両者渾身の一撃が……互いを斬りつける……
萌「なめるなぁッ!六壬移臠陣りくじんいれんじん!」
ヴオンッギャギャギャギャギャギャッ
多少の傷なんてなんのその……空間転移しながら松子しょうこに何度も斬撃を浴びせる萌
松子しょうこ「……はっ!」
ギギギギギギギギギッ
だが、その全ての斬撃は軽く受けられる……
萌「……ぬうう……」
松子しょうこ「……やりますね……」
全て受け切ったとはいえ、油断していれば間違いなく致命傷を負っていた……松子しょうこもまた、萌の剣腕を称賛
する
萌(何故だ……何故……何故勝てん!?邪眼ならいざ知らず、魔眼で心眼に遅れを取るなどと……)
萌「キサマ……いさむと同じく、心眼を超えた心眼の!?」
松子しょうこ「いいえ、私は心眼……神眼を仕えるのは今のところただ1人……『真なる剣聖』のみですよ……」
だが、萌の憂いに……松子しょうこはきっぱりと断言する……
萌「……」
ならば……何故!?と萌は黙り込む……
松子しょうこ「……言いましたが……心に迷い、揺らぎのある今のあなたではたとえ魔眼を使ったとしても私に勝つ
 ことは出来ません……」
そんな中、松子しょうこは続ける……どうして……剣鬼として恐れられているあなたの剣が……今は見る影もない
のかを……
萌「迷い……だと!!?」
ギリッ
自分が迷っているなどと……ありえない……だが……しかし……と、歯ぎしりする萌……
松子しょうこ「……勝ち戦って……つまらないんですよ……」
更に松子しょうこは続け……それに萌もキれる……
萌「……揺らいでいる……だと!?迷っている……だと!?……それがどうした……俺は……俺の
 道を行く……ただそれだけだ!おおおおおっ!太乙煉無陣たいいつれんぶじん!」
ズゴアアアアアッ
邪悪な剣圧が松子しょうこに迫る……
ダッ
松子しょうこ「秘刃・血雨ちさめ!」
ガギインッ
邪悪な剣閃を斬りはらい、そのまま懐に飛び込んで一刀両断で応戦する松子しょうこ
萌「ぬ……ぬうううう……」
松子しょうこ「はあああああ!!!」
ドギャオアアアアアアアッ
刀を捌き、その衝撃で大地が凹む
ザザザザザザザッ
そして、両者はすれ違う

#4
萌「ハッ!転移衝てんいしょう!」
ギュンッ
だが、間髪いれずに間合いを詰める萌、空間を転移して、松子しょうこの背後を狙う萌……
松子しょうこ「そこです」
ガギンッ
萌「なっ!?」
ザザザザッ
だが、簡単に弾き飛ばされる
萌「……キサマぁああ……」
思わず我を忘れ、斬りかかろうとする萌……しかし、松子しょうこの反応が早かった……
ヒュオアッ
萌「ぬ!?」
一気に間合いを侵食される萌……だが、その程度で怯む萌ではない……
松子しょうこ「……ここまでです……」
萌「何がここまでだ!……死合はまだここから」
グオッ
互いに兇刃が迫り……
ギャギャイイ〜〜〜〜ン
キュラキュラキュラキュラッ
萌「はっ……」
右の2刀を弾き飛ばし、左の2刀を千寿院村正せんじゅいんむらまさで受ける松子しょうこ
ドドスッ
思わず、弾き飛ばされた刀を見てしまう萌……それは……命取りであり……そして、萌が敗北したこと
を意味した……
松子しょうこ元屠歳殺げんとさいさつ流……四刀流で私と渡り合えたあなたが二刀流になれば……私と渡り合えますか!?」
萌「……くっ・・」
ぱっ
ガランッ
負けを認めた萌はガックリと項垂れ、左の2刀をも手放す
萌「……俺の……負けだ……だから、殺せ!……それが死合の定め……」
そのままドカリと地面に座り、覚悟を決める萌……
松子しょうこ「……」
パチリッ
しかし……トドメをささずに納刀する松子しょうこ
萌「キサマ……何を!?」
松子しょうこ「……無闇に人を殺すこともない……それが私の剣の道……剣聖への道」
萌「貴様……も所詮いさむと同じ……俺を馬鹿にするか!?」
怒りを顕わにする萌……
ピクッ
と、その言葉に、ちょっと表情が変わる松子しょうこ……
松子しょうこ「……でも、非情なるあなたはそんな甘い私に負けたのですよ……」
萌「……」
チャキキッ
バッ
ザザザアッ
地面の2刀を拾い、そのまま飛ばされた2刀のもとへと飛ぶ萌
萌「迷い……?揺らぎ!?……いいだろう、認めてやろう……確かに、俺は……迷っていた……
 揺らいでいた……だからこそ……次、死合うときまでには……そうだ……次に死合う時こそは……」
……だが、その続きを……『答えを探してくる!』……とは言えなかった萌……
萌「覚えておけ……次に逢う時こそ……貴様の命日だ!」
ダダッ
捨て台詞と共に萌は去っていく……
・
・・
・・・
パチリッ
そして、4つの刀を納刀し、その場を立ち去る萌……そして、1人残された松子しょうこは……
松子しょうこ「……あの人も……剣聖を目指している……負けられないなぁ……この宿命……」
やはり、1人黄昏れる……
真なる剣聖・いさむ、孤高の剣鬼・萌、盲目の松……この3人をとりまく関係は今後、どう発展していくので
あろうか!?


END

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