Eighter -Grand Harmonise-
29ther 〜揺らぐ心と剣の鬼 A〜



#0
いさむに破れ……それから心が揺らいだ冥時みょうじ萌……今回はそんな剣鬼・萌の物語……
と、その前に……

#1
天四斗あまよと、羅将門
前田松子しょうこ「……ふぅ……今日も……いい夕焼けですね……」
今日も今日とて目を閉じて……夕焼けを眺める(?)松子しょうこ
松子しょうこ「……それにしても、『大不便者』とはよく言ったものですね……」
※『大不便者』……『大武編者』(正確には『だいふへんもの』)と書かれたマントを羽織った慶次が自分の
 相手になるものがいなくて不便で不便でしょうがないことから叫んだ逸話から
そんなことを思いながら黄昏れる松子しょうこ……と、そのとき……
ゴアアアアッ
松子しょうこ「……」
松子しょうこの元に……凄まじき邪気が……迫る。
邪悪の巣窟羅将門の中でも随一の邪気……その持ち主は1人しかいない……
ザッ
冥時みょうじ萌「見つけたぜ……アンタが前田松子しょうこだな……」
もちろん、その1人とは萌に他ならない……
松子しょうこ「……この邪悪な気……アナタは冥時みょうじ萌さんですね……」
邪気が全てを物語る……故に振り向かずに答える松子しょうこ
萌「ああ、そうだ。……どうあっても俺と死合ってもらうぞ?」
ズラッ
と、すぐさま邪眼開放+元屠歳殺げんとさいさつ流、四屠しとの陣発動。既に死合う気は十分だ……
※ちなみに、黒い段だら羽織のせいか普段より凶悪に見えたり見えなかったり……
松子しょうこ「……」
が、しかし、なんだか松子しょうこは上の空な模様……
萌「フン、言いたいことは刀で問え……」
そんな松子しょうこに萌は叫ぶ
松子しょうこ「……そうですね……分かりました……」
ヒュゴアッ
と、言い終えるや否や、一気に間合いを侵食して斬りかかる松子しょうこ
萌「くっ?」
ギギンッ
左の2刀でそれを受ける萌
萌「噂に疑わぬ穀蔵院こくぞういん一刀流……か!?……だが……」
グオンッ
右の2刀が松子しょうこを襲う
スカアアッ
萌「ぬう!?」
いち早くそれを察知し間合いから離脱していた松子しょうこ
松子しょうこ「……あなたのその邪悪な気配……心眼を使わずとも居場所を特定できますよ……」
チキッ
千寿院村正せんじゅいんむらまさを構えなおす松子しょうこ。若干余裕めいている……
萌「……だが、そうでなくては詰まらんッ!」
ズゴゴゴゴゴゴッ
勝ち戦ではつまらない……と松子しょうこ……そんな松子しょうこの意をくんでか、萌も萌で全力で相手をすることに……
松子しょうこ「これは……」
が、しかし、高まるかと思われた萌の邪気が……段々と薄らいでいく
松子しょうこ「……禍々しさの中に清々しさ……もしや……」
ヒュオアッ
萌「これがッ!邪眼を超えた邪眼!!魔眼だぁッ!」
それは……いさむとの死合にて掴んだ萌の極意……いさむが心眼を超えた神眼を習得したように、萌もまた、邪眼を
超えた魔眼を習得したのだ……

#2
瞬時に間合いに侵食し、そのまま斬りかかる萌
松子しょうこ「ちいっ!」
ギャギャイインッ
萌「転移衝てんいしょう轟計都ごうけいと!」
ヴオンッ
ズガンッ
空間転移し松子しょうこの背後を狙い、そして2刀、2刀の十文字斬り
ザガアッ
萌「……避けた……か!?」
ザザザザザッ
だが、それを辛うじて回避し、距離を取る松子しょうこ
松子しょうこ「……なぜ・・あなたは魔道をくのですか?」
そして、対峙した松子しょうこと萌……刀で問えと言われたばかりなのに、思わず質問してみる松子しょうこ
萌「……俺が剣鬼だからだ!」
そして、萌も萌で応えてみる
松子しょうこ「……哀しい人ですね……」
哀しげな表情で萌を見つめる松子しょうこ
萌「黙れッ!!」
ドオンッ
憐れみの表情を向けられ……思わず怒りの剣閃を放つ萌……その剣閃は松子しょうこの近くを掠める
萌「キサマに……何が分かる!!……キサマに!!」
松子しょうこ「少なくとも……心が揺らいでいることは分かります……言葉では強がっていても……」
萌「黙れぇえええ!!!」
ゴギャインッ
猪突猛進な斬り込み……それは剣鬼としてはそぐわない……感情に任せた乱暴な剣……
ギリギリギリギリギリッ
そして、そのまま組み合う両者
松子しょうこ「あなたのこれまでの生き方を否定するかのような何かがあった……」
萌「だから……何だ!!?」
ドオオオオオオオンッ
魔眼の氣が飛び交いあたりを吹き飛ばす
松子しょうこ「……」
萌「馬鹿馬鹿しい……貴様、俺が迷っているとでも……?そう言いたいと言うのか!?ふざけやがって……
 この俺に迷いなどないわ!……そうだ!俺がこの世で信じるものは『刀』のみッ!!」
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
叫びと共に清々しい邪気が膨れ上がっていく
松子しょうこ「……『真なる剣聖』……」
萌「あ?」
松子しょうこ「……あなたも剣聖を目指すもの……ならば……この闘い、退くわけにはいきません」
ズオオオオオッ
松子しょうこの殺気も膨れ上がっていく
萌「何をフザけたことを……俺は『孤高の剣鬼』・冥時みょうじ萌だッ!!」
ドンッ
双方一足飛びにかかり……
萌「四刃光臨しじんこうりん!」
キュオアアッ
松子しょうこ「秘刃・閃光きらめき」
キュギャイインッ
お互いに放った光の剣閃がこれまたお互いに走る
萌、松子しょうこ「てぇえええええ〜〜〜〜い!!!」
ザザザザザッ
勝負は……ついたのか!?……それとも……


続

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