Eighter -Grand Harmonise-
27ther 〜過住かすみ宗家のヒミツ B〜



#3
攻太郎こうたろう羅神綺無らじんきむ流を使えるわけ……そこには過住かすみ宗家の血が隠れていた……そして、同じく羅神綺無らじんきむ流を
使えるかんな一行らにも過住かすみ宗家の血が流れていたのだという……全ては陰轟留牡鴉アンゴルモアを封印するため……
だが、今、その力は急速に過住かすみ家から白拍子家に移動している……
過住攻太郎かすみ・こうたろう「で、祖父さん、力が失われつつあるって言ってたけど……それでアンゴル・モアの監視、封印の
 方は大丈夫なのか!?」
過住剣八郎かすみ・けんやろう「……大丈夫だった……というべきだな……と、言うのも、これまで陰轟留牡鴉アンゴルモアの活動は
 活発ではなかった……だから、事なきを得たのだ……」
攻太郎こうたろうの問いに剣八郎けんやろうは答える……が……
攻太郎こうたろう「……『だった』……って過去形なのが凄く気になる……なんかイヤな予感がするんだが……」
剣八郎けんやろう「……ああ、既に陰轟留牡鴉アンゴルモアは2度黄泉帰った……」
攻太郎こうたろう「ちょっと待て……2度って何だ!?」
聞き捨てならない台詞に攻太郎こうたろうは驚愕……しかし、剣八郎けんやろうは更に続ける……
剣八郎けんやろう「無論、2度ともたおされておるがな……」
攻太郎こうたろう「……」
だからこそ、今、世界は平穏を保っているのだ……と、剣八郎けんやろう。全てはかんなの……過住かすみ宗家の力を受け
継いだ傍流、白拍子家のおかげである……
剣八郎けんやろう「……出来れば儂が生きている内に……陰轟留牡鴉アンゴルモアが復活する前に……お前に託したかった……」
後悔に顔をしかめながら、剣八郎けんやろうが慟哭する……
攻太郎こうたろう「お、おいおい……」
剣八郎けんやろう「だが……お前以外に我が力を欲しがる存在があった……」
くわっ!
攻太郎こうたろう「うおっ!?びっくりした……」
どうしたものか……と声をかけようとした矢先、突如目を開き叫びだす剣八郎けんやろう。その迫力に後退る攻太郎こうたろう
攻太郎こうたろう「……ってこんな力……なぜ欲しがるんだよ?」
大体……こんな力……何に使うんだよ……と攻太郎こうたろう……
剣八郎けんやろう「我らが力が強大だからこそ人はその力を欲する……その力がたとえ身を滅ぼすことになろうとも……
 だから儂は遺言で残すことにした……我が力を求めし愚かなものどもを全て抹殺し、お前に全てを伝えるため
 に……」
攻太郎こうたろう(……だから遺言の内容があんな内容なのな……家族内で潰しあうような……あんな……呪い
 めいた……)
※ちなみに、詳細は『世にも奇妙な遺言』を参照。

#4
攻太郎こうたろう「……で、祖父さんよぉ……アンゴル・モアが2度黄泉帰ってことごとたおされたんじゃあ俺の役目は無いん
 じゃないの!?」
そして……陰轟留牡鴉アンゴルモアたおされたのなら、もう、一族のお役目御免なんじゃないの!?……と攻太郎こうたろう……
いままでお疲れさん……とかそんな気分でいるのだが……そこを一喝
剣八郎けんやろう「甘ったれるな!陰轟留牡鴉アンゴルモアは確かにたおされた……だが、終わりではない……人間が居る限り……
 陰轟留牡鴉アンゴルモアは永劫死なん。いずれまた復活する」
攻太郎こうたろう「ぬぅおお!!……なな……何ぃ!?」
ビビリつつも、それまた厄介な話だ……と思う攻太郎こうたろう
剣八郎けんやろう「いいな、攻太郎こうたろう……次に復活するときこそお前が……お前が……お前の手で陰轟留牡鴉アンゴルモアを……
 たおすんだぞ!」
攻太郎こうたろう「次って……俺の生きている内に復活しないってこともありえるんじゃないの?」
剣八郎けんやろう「……それはありえん」
弱気な攻太郎こうたろうだが……きっぱりと断言する剣八郎けんやろう
攻太郎こうたろう「な、何で……?!」
剣八郎けんやろう「何故なら儂が生きていたころと違い今の世界は邪悪に満ち溢れている……そのあらゆる負の力を糧
 とし、陰轟留牡鴉アンゴルモアの復活周期は驚異的スピードで早まっている……」
攻太郎こうたろう「はい!?」
剣八郎けんやろう「100年にも経たない内に2度黄泉帰ることなど本来はありえんのだ!」
攻太郎こうたろう「……そ、そうなの?」
剣八郎けんやろう「いいな!攻太郎こうたろう……過住かすみ宗家の血にかけて、次に陰轟留牡鴉アンゴルモアが復活した際には……必ず己が手で
 陰轟留牡鴉アンゴルモアたおすんだ!」
攻太郎こうたろう「いや、仮に俺が手を下すにしろ……そのアンゴル・モアってのがどこに居るのか分からなきゃ対処
 の仕様が無いんですけど……」
剣八郎けんやろう「案ずることは無い。お前に過住かすみ宗家の力が伝わったことにより、陰轟留牡鴉アンゴルモアの波動を感じることが
 出来るようになっておる……」
攻太郎こうたろう「……つまり……?」
剣八郎けんやろう「……陰轟留牡鴉アンゴルモアの動きがお前には手に取るように分かるはずだ……」
攻太郎こうたろう「……はぁ……」
剣八郎けんやろう「……もう、時間か……」
スウッ
剣八郎けんやろうの体が薄くなる
攻太郎こうたろう「え?爺さん……時間って……なんだ!?」
剣八郎けんやろう「頼んだぞ!攻太郎こうたろう……陰轟留牡鴉アンゴルモアを……たおすんだ!!!」
スウウウッ
そういい残し、剣八郎けんやろうは消える

#5
攻太郎こうたろう「ちょ、祖父さん!!」
ガバッ
と、同時に布団から跳ね起きる攻太郎こうたろう
攻太郎こうたろう「……夢……!?……ったく祖父さんめ……自分勝手に話を進めやがって……」
シャッ
そのまま起き上がった攻太郎こうたろうはカーテンを開ける
攻太郎こうたろう「……いいだろう、祖父さん……こうなったら何が何でもアンゴル・モアをぶっ潰す!!過住かすみ宗家の
 名に懸けてな!!」
……そして……後に攻太郎こうたろうはかんなと相対するのだが……それはまだ先の話である。


END

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