Eighter -Grand Harmonise-
2nder 〜秘伝書はかく語る C〜



#5
いさむ、亡き師匠の言伝にて剣聖剣術道場・地下に封印されていた真実を知る……
そして、いさむは更なる剣の道を進むことを決意したのだが……そんな時、謎の忍びがいさむの前に現れ……
なし崩し的に死合うことに……
※ちなみに、いさむ月陽歳刑つきかげさいぎょう流後継の際に見たあの鳥の影は……まぁ、そのうち判明しますよ。
 楽しみに待っていてください。
某敢それがし・いさむ「おぬし、何者でござるか!?」
*「……」
ギリギリギリッ
組み合いながら、いさむは問う……しかし、漢は答えない……
いさむ「ぬうんっ!」
*「……」
ギャギイインッ
バッ
いさむの重い一撃を回避し、距離を取る漢……
いさむ(ぬぅ……黙して語らず……さすがは忍びのものでござるな……)
*「つむじ!」
ギュゴガアアッ
いさむがそんなことを考えていると、突如舞い踊るように4回の斬撃が繰り出される
いさむ「こ……れは!?」
ガガガガッ
いさむ「……神崎一刀流でござるか……!?」
漢の技を回避しつつ、いさむは言う
*「……ほう、流石に……分かるか……」
いさむ「お主、神崎の手の者でござるか!?」
そして、いさむは再び問う……すると、漢は観念したかのように、自分の素性を簡潔に表す
*「……侍は名乗ってから死合うもの……だが、忍びは影に徹する故に、名乗ることは……死ぬ時のみ!
 ……だが、お前がそこまで拘ると言うのなら……良かろう……我が名は通……神崎通……」
いさむ「神崎……通」
神崎通「私が名乗ったのだ、そちも名乗ってもらおうでは無いか」
いさむ「……拙者は……いさむ某敢それがし・いさむでござる」
なし崩し的に死合ったので、名乗りを忘れていたいさむもまた、通に対して名乗りを上げる
通(某敢それがし・いさむ……か……まだ、この様な漢が……生きているとはな……)
チャキジキッ
お互いに自分を名乗ったことで、死合は仕切り直し、両者は刀を構え直し、対峙する……

#6
いさむ「……お主……何ゆえ着物を左前に着ているでござるか!?」
……いさむ、通が着物を死者が着る作法左前で着ていることに気がつく……
通「……これは……俺が俺である存在証明……」
いさむ(忍びの……存在証明でござるか……)
しかし、このとき、いさむは少し勘違いをしていたのだが……まあ、それはまた別の話である……
・
・・
・・・
いさむ「おおっ!」
ヒュオアッ
いさむ「ぬ!?」
ゴガスッ
飛び掛るいさむ……しかし、視界から通は消え、次の瞬間背後から吹き飛ばされる
いさむ「む……お!?」
通「……忍びと侍とでは生きる世界が違う……忍びとは死を前提に作戦を考える……だが、侍は生命を
 厭わないも死を前提としては死合わぬ……その差は……死合に現れる!!」
いさむ「……」
通「……さよならだ……」
ギュンッ
瞬時に間合いを侵食し、そのまま突きかかる
カッ
眼を見開くいさむ……
ザシャアアッ
通「ぬ……ぐ!?」
と、同時に斬り飛ばされる通
通(なっ!?忍びよりも速い斬撃……だと!?)
ゴゴゴゴゴゴゴッ
迫る殺気……
いさむ「……死を前提とした作戦をたてる……それも結構なことでござる……だが、人間の本質は『生きたい』
 という願望……」
通「だからどうした!貴様が生き急ぐものならば俺は死に急ぐもの……両者のミゾは永遠に埋まらんわ!」
ガガギンッギギインッ
言い終わると同時に鍔迫り合いが繰り広げられる
いさむ(この漢……本当に死を前提として死合を繰り広げているでござる……なぜ……それほどまでに……
 いや……それ以前に……この漢の気……何か違う……)
通(ちっ……全ての斬撃が無意味か……この漢……剣術の究極の型……心眼の使い手か!?)
通「ならば、受けてもらおう!忍びの剣を!……翳渡かげわたり」
ズオッ
いさむ「ぬ……!?」
通が自分自身の影に沈む
いさむ「……」
通「凩」
ゴッ
いさむの影から飛び出た通が一気に斬撃を繰り出すが……
いさむ「そこっ!」
ギャギイインッ
通「なんと!?」
エモノを弾き飛ばすいさむ
チャキッ
刀を突きつけるいさむ
いさむ「……生命を粗末に扱うものではござらんよ……お主……」
通「……忍びに負けて生き延びるという道は無い……殺せ!」
パチリ……
しかし、納刀するいさむ
通「何を……している!?」
いさむ「……お主も……哀しき漢でござるな……拙者の剣は徒に人を殺めるものではござらん……」
哀しげな眼で通を見るいさむ
通「……フ……フフフフ……甘い漢よのぉ……そんな考えは速めに捨てんと……生命がいくらあって
 も足りぬぞ!」
バッ
飛ばされた刀まで飛ぶ通、そして刀を手にし……
いさむ「通殿……」
チキッ
とっさに刀に手を伸ばすいさむ
通「……だがな……死を前提に生きるより……今ある生を謳歌する方がいいやもしれん……」
パチリッ
納刀する通
いさむ「通殿……」
通「……某敢それがし・いさむよ……またいずれ、いずこかで……」
ヒュンッ
通はそういい残して闇に消えていく……
いさむ「……通殿……」
突如現れ、突如消える……ただ、謎を残して去っていった神崎通……彼は一体……
今後、彼の事が明らかになることは……あるのか……それとも……


END

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