Eighter -Extra Voyage-
68ther 〜魔狼と悪虎の狂演 C〜



#5
 洋上の城塞監獄、水晶の騎士から遂に脱獄の切符を手に入れた二人……だったのだが……
*「ようこそ、絶望の船出で、地獄へ参りま〜す」
天宮裕(あまみや・ゆたか)化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「何だって!?」
 突如、そんな艦内放送が告げられる。
 そして、一人の漢が現れる
(ゆたか)「誰だてめぇは!?」
*「水主村現廃墟(かこむら・いはご)。言っとくが俺は強いぞ、なんたって双虎拳(そうこけん)の使い手だからな……」
梶太郎(かぢだろう)「なっ、貴様が現廃墟(いはご)か!?」
(ゆたか)「何?!知っているのか……ってなるほど、双虎拳(そうこけん)の使い手ってことはお前の同門ってことか……」
 梶太郎(かぢだろう)を見て驚きの表情をしつつも、自己解決して再び現廃墟(いはご)に向き直る(ゆたか)水主村現廃墟(かこむら・いはご)「お前か、化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)……双虎拳(そうこけん)の面汚しが……」
梶太郎(かぢだろう)「黙れ!貴様こそ双虎拳(そうこけん)の面汚しだろうがッ!」
(ゆたか)梶太郎(かぢだろう)!貴様の同門だか知らんが、速攻に退場してもらうとするぜ!」
 一足飛びにかかる(ゆたか)
梶太郎(かぢだろう)「ま、まて!」
現廃墟(いはご)「フン、馬鹿め!翠虎弾(すいこだん)!」
 ダンダンダンッ
(ゆたか)「ガハァッ!?」
 突如左手で拳銃を取り出すと迷わず(ゆたか)の腹めがけて三発お見舞いする現廃墟(いはご)。
 流石に飛び込んでいる最中に弾丸を回避してカウンターを喰らわせるほど器用ではない(ゆたか)はモロに銃弾を喰らっ
て派手に吹き飛ぶ
(ゆたか)「ぐっ……」
現廃墟(いはご)「安心しろ、麻酔弾だ!」
 その言葉を最後に(ゆたか)はガクリと頽れる。
梶太郎(かぢだろう)「てめぇ!」
 ギロリと現廃墟(いはご)を睨み付ける梶太郎(かぢだろう)。
 先ほど、現廃墟(いはご)のことを双虎拳(そうこけん)の面汚しと言い返した理由がコレだ!
現廃墟(いはご)「時代は常に進化している……拳で殴り合うような古臭い時代は既に終わったんだよ!」
 更に右手で抜刀しつつ現廃墟(いはご)は告げる。
 そう、この水主村現廃墟(かこむら・いはご)なる人物、双虎拳(そうこけん)を納め、それをアレンジして銃と剣を使って攻撃を繰り出すのを得意
とする異端児なのだ。
梶太郎(かぢだろう)「てめぇが相手なら遠慮はいらねぇ……ぶち殺す!」
現廃墟(いはご)「かかって来い、梶太郎(かぢだろう)!拳だけでは銃と剣に敵わないことを身をもって教えてやる」
 銃を持った左手でクイクイと誘い、挑発を行う現廃墟(いはご)梶太郎(かぢだろう)「うおおおっ!黒虎咬(こっこきょう)!」
 現廃墟(いはご)の心臓に狙いをつけて一気にとびかかる梶太郎(かぢだろう)
現廃墟(いはご)空虎剪(くうこせん)」
 対して現廃墟(いはご)は刀のハラで梶太郎(かぢだろう)のドタマをぶん殴りそのまま首をへし折ろうとする……が、しかし、頭を屈め
てそれを回避しつつ拳を進める梶太郎(かぢだろう)。
 ダァンッ
梶太郎(かぢだろう)「うおあっ!」
 ガシィイッ
 すぐさま銃撃に切り替える現廃墟(いはご)。だが、梶太郎(かぢだろう)も心臓から銃弾に狙いを切り替えて掴み止めて見せる。

#6
現廃墟(いはご)「やるな……」
梶太郎(かぢだろう)「てめぇこそだ!」
 そのまま睨み合う両雄……だが、それも一瞬の事ですぐさま後退ると、再び攻撃を繰り出す両雄
梶太郎(かぢだろう)極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
現廃墟(いはご)無彩虎襲(むさいこしゅう)!」
 何度も拳打をお見舞いして、相手が怯んだ隙にトドメの一撃を繰り出さんとする梶太郎(かぢだろう)
 まずは刀の一閃を以てして相手の両眼を切り裂いてから銃撃を繰り出さんとする現廃墟(いはご)
現廃墟(いはご)の方、殺意が高すぎない?
 目を刀で狙うのは反則過ぎるだろぉ!ってなことですぐさま飛び退って回避、そして、更に襲い来る銃弾も辛う
じて掴み取ったり回避ししたりとやり過ごす。
現廃墟(いはご)「どうだね?拳一本で銃と剣に渡り合おうなどと無謀の極みだろう?」
 銃のマガジンを交換しながら現廃墟(いはご)が言う
梶太郎(かぢだろう)「うるせぇよ!第一、拳一本じゃねぇっての!」
 いや、言葉の上げ足を取らんでも……
現廃墟(いはご)「しかし、奥義の一つを以てしてもお前を仕留められないとは、私の実力もまだまだってことだな……」
梶太郎(かぢだろう)「銃と剣に頼りっぱなしでてめぇの腕が落ちたんだんろうよ!」
現廃墟(いはご)「フン、言ってろ……」
 そして両雄は再び睨み合ったまま動かない……いや、攻撃を繰り出す隙を伺っている……と、言うよりは次で決
めるべく気を練っているみたいなものだ。
 そして、時は来た!
梶太郎(かぢだろう)現廃墟(いはご)「ハッ!無色虎獄屠(むしきこごくと)!」
 梶太郎(かぢだろう)は拳打で、現廃墟(いはご)は斬撃で具現化した虎を解き放ち襲い掛からせる。
梶太郎(かぢだろう)「うおおおおッ!」
 双虎拳(そうこけん)とは、拳とつくからには拳打を以てして具現化した虎の方が威力が上だった。
 ジリジリと競り負けていく現廃墟(いはご)だが、特に焦った様子は見せない。
梶太郎(かぢだろう)(勝ったぁ!)
 ダンダンダンダァンッ
 そして、梶太郎(かぢだろう)が勝利を確信した次の瞬間。無慈悲にも銃弾が叩き込まれる
梶太郎(かぢだろう)「ガハッ……現廃墟(いはご)……貴様ッ!」
現廃墟(いはご)「だから言っただろう……銃と剣に拳が勝てる道理がないと!」
 よろよろと後退る梶太郎(かぢだろう)。最早勝負はついた……
(ゆたか)「てめぇ、真剣勝負を何だと思ってやがる」
 と、その時、(ゆたか)がゆらりと立ち上がる
現廃墟(いはご)「ハッ!真剣勝負だから真剣を使って何が悪い!」
(ゆたか)「そうじゃねぇだろボケカス!」
 拳銃使うなって言ってんだッ!
現廃墟(いはご)「しかし、驚いたな……君にぶち込んだ麻酔弾はとある警察をやめて探偵になった漢を眠らせるために使っ
ている強力なモノだったのに……」
※いや、どこの名探偵コ〇ンだよ!

#7
現廃墟(いはご)「まぁ、いい、次は君が相手かな?」
(ゆたか)「あぁ、貴様に地獄を見せてやるぜ!邪狼群憑(じゃろうぐんひょう)!」
 ズゴオオッ
 黒い気を全身に纏ってパワーアップする(ゆたか)
現廃墟(いはご)「それが双狼拳(そうろうけん)裏奥義って奴か……だが、所詮銃と剣の前では無意味だよ!」
(ゆたか)「じゃあ、やってみやがれ!」
現廃墟(いはご)「やれやれ……」
 ダンダンダンダンッ
 それほど死に急ぎたければ……と無造作に(ゆたか)めがけて全弾ぶち込む現廃墟(いはご)
現廃墟(いはご)「な、何!?」
 だが、何と言うことでしょう、(ゆたか)を覆っている黒い気が銃弾を止めているではないか
(ゆたか)「死ね!虐狼魔覇(ぎゃくろうまは)!」
 バッ
 天高く飛んでそのまま一気に落下と同時に襲い掛かる(ゆたか)
現廃墟(いはご)「チッ」
 カチカチッ
現廃墟(いはご)「しまった、弾切れッ!?」
 銃で応戦しようにもさっき全弾ぶち込んだのがマズかった
現廃墟(いはご)無色虎獄屠(むしきこごくと)!」
 ガッ
 バキィンッ
 咄嗟に斬撃に切り替えるが遅い、(ゆたか)の攻撃の前に砕け散る刀身
(ゆたか)「おらぁ!双虎拳(そうこけん)の面汚しはそのままてめえのツラぁ、てめぇの血で汚しとけぇ!」
現廃墟(いはご)「げごろぉお?!」
 自分の面を自分の血で汚して現廃墟(いはご)は絶命するのであった。
(ゆたか)「……敵討ちってワケでもないがな……」
梶太郎(かぢだろう)「ぐお〜〜〜」
(ゆたか)「……って麻酔弾だったんかいッ!」
 梶太郎(かぢだろう)は死んではいなかった……
 まぁ、さておき、地獄の船出を乗り切り、(ゆたか)梶太郎(かぢだろう)は脱獄を見事完了させてしまったのであった
 だが、與鷹ならきっと二人を返り討ちにしてくれるだろう……多分
※なんだ?その〆……


END

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