Eighter -Extra Voyage-
68ther 〜魔狼と悪虎の狂演 A〜



#0
 天宮裕(あまみや・ゆたか)……與鷹(よたか)を憎み双狼拳(そうろうけん)を地に貶めた極悪人。
 今は洋上の城塞監獄、水晶の騎士に投獄されているわけだが、彼の執念は凄まじい。
 そして、今回もまたそんな(ゆたか)に関するエルスイフ
※elsif!?……だから何さ!?ぜんぜん違ぇよ!『エ』しかあってねぇよ!

#1
 東京地方、某所
 その洋上には難破した艦を改造して作られた城塞監獄がある。その名も水晶の騎士!
 言わなくてもわかるかもしれないが、水晶の夜(クリスタルナイト)って英単語を間違って和訳したネーミングだ
※いや、間違えるなよ、そんなとこ!
 そして、今、ここに新たなる囚人がブチこまれんとしていた。
*「おらっ、とっとと入れ!」
*「ぐげっ!?」
 乱暴に牢屋にぶち込まれる一人の漢。
 その部屋には既に(ゆたか)という先客がいるのだが、彼は我関せずといった感じで瞑想に耽っていた。
*「今日からここが貴様の家だ」
*「ここから出せ!」
*「お前が罪を償えば直ぐにでも出してやるぞ」
 まぁ、無理だろうがな……と続けて看守は去っていく。
*「クソッ!」
 ドコオンッと床に拳を叩きつける漢
*「與鷹(よたか)めッ!」
天宮裕(あまみや・ゆたか)「何!?貴様、今與鷹(よたか)と言ったか!?」
 その次の瞬間、それまで無視を決め込んでいた(ゆたか)が、カッと目を見開き入ってきた漢に飛び掛かる
*「あぁ?なんだてめぇ、俺様を双虎拳(そうこけん)化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)と知ってそんなクチを聞いてンのか、あぁ?」
(ゆたか)「テメェが何モンかなんてどうだっていいんだよ!……俺が知りたいのは與鷹(よたか)って奴のことだ!」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「はぁ?」
(ゆたか)「その與鷹(よたか)って奴はまさか、梓與鷹(よたか)のことか!?」
梶太郎(かぢだろう)「てめぇ、何故奴のことを?……どこで……」
(ゆたか)「質問を質問で返すなぁあああ!ブッ殺すぞッ!」
梶太郎(かぢだろう)「お、おう、すまん……」
 謎の気迫に気圧される梶太郎(かぢだろう)だった。

 それから梶太郎(かぢだろう)はつとつとと語る……自分が双虎拳(そうこけん)の使い手、胴崎烈の同門であるということと、奴が與鷹(よたか)の前
に崩れ落ちたことを知り、敵討ちと称して與鷹(よたか)に襲い掛かったら手痛く返り討ちにあったということと……
※ってか返り討ち『と称して』ってことは実際は敵討ちなんてどうでもよかったってことなの?
 それからは與鷹(よたか)を殺すことを生き甲斐に日々修行と称した殺人を行っていた所、再び與鷹(よたか)に倒されて今に至ると
いうことを……
梶太郎(かぢだろう)「俺は與鷹(よたか)を殺さねばならない!俺自身のために!……だから、こんなところで油を売っている暇はないん
だッ!」
 力説する梶太郎(かぢだろう)だが、こいつもまた無茶苦茶な思考回路の持ち主だった。

#2
 そして、(ゆたか)も自分の事を語って聞かせる。
 與鷹(よたか)を殺すことこそが我が生き甲斐!それは(ゆたか)とて同じだった
梶太郎(かぢだろう)「なるほどなぁ、貴様もまた與鷹(よたか)に恨みを持つものってことか……」
(ゆたか)「あぁ、俺は與鷹(よたか)を殺さないと一歩も前に進めねぇ!」
 それは梶太郎(かぢだろう)も同じだった。
 意気投合する二人。まさしく終生の友を得たり!という瞬間だった。
※目的が與鷹(よたか)の抹殺なんて物騒なことじゃなければいい話なんだけどなぁ……
梶太郎(かぢだろう)「俺達は分かりあえる……ならば、二人でここから出るために協力できる!違うか?」
(ゆたか)「それは違いない……」
 だがな、ここは洋上の城塞監獄……脱獄できたとして周りは海……本土へどうやって逃げる?その算段がなけれ
ば脱獄も無意味だ!
梶太郎(かぢだろう)「いや、算段はある!」
(ゆたか)「何!?」
 その言葉にピクリと眉を動かす(ゆたか)(ゆたか)「それは本当か?」
 ガバっと梶太郎(かぢだろう)に襲い掛かる(ゆたか)
梶太郎(かぢだろう)「まぁ、まて、落ち着いて俺の話を聞け!」
(ゆたか)「おっと、すまん……」
 興奮した(ゆたか)が落ち着いてから、梶太郎(かぢだろう)は語る……
 ここは洋上の監獄……とは言え、難破した艦を改造して作った代物……そんな場所で自給自足生活などできるだ
ろうか?いいや、出来ないッ!
 半月に一回の周期で本土から物資が送られてきている。そしてそれは第二、第四週の水曜ってことを俺はここへ
来る途中に知った!
※きっとここに投獄される途中に看守の話とか耳に挟んだじゃないかな……知らんけど……
梶太郎(かぢだろう)「つまり、脱獄のチャンスは月二度!」
 それは多いのか少ないのか……
(ゆたか)「なるほどなぁ……で、今日は何月の何週目の何曜日なんだ?」
梶太郎(かぢだろう)「……」
 この牢獄にはカレンダーなんて便利なものはない!
梶太郎(かぢだろう)「くそっ、万策尽き果てたか!」
 をい、万策尽き果てるの速いな……
(ゆたか)「だが、手はないワケじゃねぇ……」
梶太郎(かぢだろう)「何!?本当か?」
(ゆたか)「あぁ、飯は部屋じゃなくて、食堂で食うことになっている……」
 そして、食堂にはカレンダーとTVがある!
 つまり、そこから導き出される結論は……

 そして、二人にとって待ちに待った食事の時間がやってくる
梶太郎(かぢだろう)「おっしゃぁ〜〜!待ちに待った飯だぜぇ!」
*「おいおい、やけに嬉しそうだな……」
*「まぁ、不味くはないからな、ここの飯……」
*「ってか、あいつ、見かけねぇ顔だな……」
*「おいおい、知らないのか?最近ブチこまれた哀れな野郎がいるって」
一同「あぁ……」
 他の囚人がわいわい騒いでいる中、颯爽と(ゆたか)はカレンダーをチェック。
 そして、TVを見る。
 果たして、二人は脱獄することが出来るのか?


続

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