Eighter -Extra Voyage-
67her 〜過ぎた世界の迷子 B〜
#3
東京、某所
*「大変です!」
*「どうした、騒々しい……」
女を侍らせ、ワイングラス片手にニヤニヤしているオッサンの元に、先ほど佑典を見て驚愕に眼を剥いた漢が飛
び込んでくる。
*「奴が、三田鞠烏佑典(が生きていましたッ!」
ガッシャ〜〜ンッ
持っていたワイングラスを落として愕然と立ち上がる漢
*「馬鹿な……奴は始末したはずじゃなかったのか!?」
*「はっ、はい、そのはずなんですが……」
平伏しながら漢は語る。
*「な、なんてことだ……」
ふらふらと後退るオッサン。
*「奴がまああの時の情報を持っているとしたら……マズイ!」
ここで彼らについて説明を行おう。
彼らは龍漸樽(病院の医師団である。そして、健康的な肉体を持つ人間をドナーに誘っては颯爽とブチ殺してその
臓器を高値で転売する医療マフィアでもある。
今から六年前、佑典(は龍漸樽(病院の闇を知り、告発に向けて着々と準備を進めていた。
だが、すんでのところで殺された……はずだったのだ。
六年たった今、死んだはずの漢が黄泉帰り、龍漸樽(病院は再び危機を迎える。
*「今度こそ、確実に、殺せ!」
一同「仰せのままに……」
シュババッ
佑典(抹殺の命を受け、刺客は行動を開始する。
一方その頃、問題の佑典(はというと、小椋(家の明子の部屋のベッドの上で干からびていた。
言うまでもなく、肉食系女子、明子に六年分の愛を搾り取られた結果である。腹上死しなかったのが不思議な位
だ。
※をいをい
小椋(明子「ふんふんふん……」
そして、明子は今、るんるん気分で佑典(の為の料理を作っている。
材料はウナギ、すっぽん、レバー、亜鉛にマムシなど精力が付くものばかりだ。
※ってか、ガチの肉食系で怖すぎる件
かくて、無防備で死が近い佑典(に、確実に命を刈り取るべく龍漸樽(病院からの刺客が近づく。
*「行くぞ、確実に奴を殺せ!」
*「ガッテン承知の助!」
いや、古いな、お前ら……
明子が料理に夢中になっている隙に音もたてず明子の部屋に忍び込む刺客
*(佑典(!六年前に死んだはずの亡霊……)
*(今度こそ死ね!)
ドガスバキベキゴキッ
一同「げはぁ!?」
だが、しかし、刺客は干からびて腹上死仕掛けていたはずの佑典(に一蹴される。
三田鞠烏佑典(「お前ら、何者だ?」
ニヒルな笑顔を浮かべつつ、両手をカキコキクキキと鳴らしながら静かに立ち上がる。
賢者タイムを迎えた佑典(は無駄に強かった
※お前、どこの浦島だよ!
#4
*「馬鹿な……佑典(がこんなに強いわけがない……」
反撃にあい、刺客が壊滅の憂き目を見てたじろぐは刺客のリーダーだ。
六年前もそうだったが、佑典(は武闘派なんかではなく、情報を収集する頭脳派の漢だったはずだ。
だが、目の前の漢はどうだ?何かの武術の達人とまでは言わなくとも、何らかの手練れだ!この六年の間に修行
でも下というのか!?
*「貴様、何者だ!?」
佑典(「俺は、三田鞠烏佑典(……らしい……」
一同「いや、『らしい』ってなんだよ!」
刺客一同の最もな突っ込みだった。
佑典(「俺は昔の記憶がなくてね……すまんが、いきなり襲い掛かってきたそっちこそ何者なんだ?」
*「こいつ……」
記憶喪失だと!?と驚愕のまま顔を見合わせる刺客の一行。
*(記憶喪失ってんなら、このまま放置しておけばいいのでは?)
*(馬鹿野郎!いつ記憶が戻るともわからないんだぞ!)
だからこそ、今のうちに殺しておかねばならない。
*「貴様に恨みはないが、我らが野望のために、ここで死んでもらう!」
佑典(「死ねだとッ!?」
ズオッ
一同「うくっ……」
その言葉が琴線に触れたのかいきなり凄まじい殺気を振りまく佑典(
佑典(「てめえら、軽々しく殺すとか死ねとか言うんじゃねぇよ!」
*(な、何だこの殺気は!?)
*(クッ、こいつ、俺達がドナー提供者をブチ殺して臓器転売していたことを根に持ってやがるな……)
いや、それはどう考えても違っていると思うぞ……
*「ええい、とにかく、貴様はここで死ね!」
佑典(「だが、断る!」
ゴガアンッ
襲い来る刺客の頭に掌底を叩き込む佑典(
佑典(「何!?……お前ら、人間なのか!?」
一同「はぁ!?」
ドサリとその場に白目を剥いて倒れる刺客の一人。明らかに即死である。
そして、佑典(のセリフに、こいつ、一体何を言っているんだ?という雰囲気になる。
佑典(「……機械兵ではない……ってことは、こいつらは《パラダイス・ロスト》からの刺客ではないということか
……」
ブツブツと何かを呟く佑典(……それは記憶が戻ったということなのだろうか?
機械兵とかパラダイス・ロストとは何か?
*「な、何を言っているんだ?お前は……」
*「お、お前は一体、何者だ!?」
佑典(「いや、だから、俺は三田鞠烏佑典(って言うらしいんだが……」
一同「いや、もうその件いらねぇよ!」
ってか、ここでさっきの状態に戻るんかい!って思う一行であった。
#5
佑典(「とにかく、帰ってくれないかな……」
*「巫山戯(んな!貴様を殺すまで、俺は襲うのをやめないッ!」
※なぜそんな言い回し!?
一同「うおりゃあ!!」
……しかし、既に刺客に勝ち目はなかった。戦闘能力が違いすぎる。
全滅する前には、こいつは三田鞠烏佑典(ではない!と確信を得るも、その情報を伝え帰る術は持ち合わせていな
かった……なぜなら死んでしまったからだ……
佑典(「一体、何だったんだ?こいつらは!?」
……ここまで来ればもうお分かりかもしれないがこの漢、実は三田鞠烏佑典(ではない。
やはり、佑典(は六年前のあの日、龍漸樽(病院からの刺客の前に殺されたのだ。
そして、この漢は偶然にも三田鞠烏佑典(に似た記憶喪失の漢に過ぎなかったのだ……
更に言うと、そもそもの最初の警視庁でのやりとりが間違っていたのだ……いや、間違ってはいなかったのだが
決定的に間違っていたところがあった。
※なんだよ、それ……
漢の持っていた免許証には正しくはこう書かれていたのだ、『生年月日:0x1999年3月15日』と……
※いや、免許証で年だけ十六進数で書くなんてことあります?
この漢の正しい生年月日は西暦6553年3月15日!
つまり、この漢は6553年というブッ飛んだ未来から過去へと転移してきたのだ。
そして、転移の際に記憶もブッ飛んだというわけだ。
彼が自分の正体と、その使命を思い出すのはいつの日になるのかは不明だが、その結果どうなるのかは今回の物
語とは一切関係ないので割愛します。
※そして、別の話で明かされるってこともないと思います。
END
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