Eighter -Extra Voyage-
64ther 〜琉球裏王家の(無限)話〜



#0
 トモナミとライタ……それは遥か太古の昔から琉球を陰ながら守り続けてきた歴史の表より姿を消した王族。
 そして、これは全てが終わった後の、二人に関するエスプレッソ
※エ『スプレッソ』じゃなく、エ『ピソード』だからッ!!

#1
 歴史の墓場、首裏城
 沖縄、普天間基地の地下に隠されていたその遺跡は、今は歴史の墓場に転移され、Eighterの管轄となっていた
ライタ「はぁ……」
 そして、そんな首裏城の前で何をするでもなくぼけ〜っと座り込んでいる漢。
 JJグソー復活を阻止するために永劫ともいえる時間墓守のような真似をし続けてきた彼だが、その役目はかんな
がJJグソーを斃したことで終わりを告げた。
 その結果、やることが何もなくなったライタは、無為に過ごす日々を送ってたのだった。
ライタ「……はぁ……」
 ため息しかでない……
 目的を失った人間というものは、こうも無気力になってしまうものなのか……
 確かに、家族を殺され、復讐のために人生を捧げていた杜季良(やまなし・きよし)も、敵討ちが終わった後は無気力症候群に陥って
Eighterをやめてしまった。
 ジャリッ
 そして、そこへ一人の漢が推参。
 先ほどの話に出来た季良(きよし)だ!
杜季良(やまなし・きよし)「よっ」
ライタ「アンタか……」
 そのままライタの隣に座る季良(きよし)。
 首裏城が歴史の墓場に転移された後から……季良(きよし)はライタの元をたびたび訪れるようになっていた。
 人生の至上の命題(?)をクリアして無気力になったもの同士、何か通じるものがあるのだろうか……
※なお、季良(きよし)はアンブリオの政治の合間を縫ってここを訪れています。
季良(きよし)「……」
ライタ「……」
 二人は何か会話をするわけでもなく、無言で終始そこに佇む。
 だが、それだけでライタは何か満たされるモノがあった。
 だが、ライタもわかってはいた。このままではいけない!……しかし、JJグソーの復活を阻止することだけが至
上の命題だったあの頃とは違う……
 永劫に続くかに思われた地獄のような日々も、終わってしまえば寂しく、悲しいものだ……
 今ではあの地獄のような日々も愛おしかったなんて感じてしまうほどに感覚が麻痺してるのだ……

季良(きよし)「さて、じゃ、俺も戻るとすっかね……」
 ん〜〜と背伸びを一つ行い、季良(きよし)はアンブリオへと戻っていくのであった。
ライタ「……」
 一人残されたライタは、やはり、何をするでもなく、その場に佇み続けるのであった。

#2
 ちなみに、ライタだけがこんなに無気力な毎日を過ごしているわけではない。
 首裏城の深奥……そこで台座に寝ころび、無為な日々を送る彼女もまた同じだ……
 彼女の名前はトモナミ。琉球王朝第零代王としてJJグソー封印の人柱に自ら志願した女である。
トモナミ「……」
※ただ寝ているだけでいい御身分だなぁ……なんて思ってはいけない。
 彼女もわかって入る。このまま万年床を続けるわけにもいかない……と

 天四斗(あまよと)、Eighter本部
季良(きよし)「と、いうわけで、あの二人を何とかしよう会議だ!」
梓與鷹(よたか)「いきなりだな……」
 久しぶりにEighter本部に姿を現したと思ったら突如謎の発言を行う季良(きよし)に一同はびっくり。
季良(きよし)「トモナミとライタの二人のことなんだが、このまま無為に日々を過ごさせるのもアレなんて何とかしてやり
たいんだ」
與鷹(よたか)「……」
 お前からそんなことを言い出すとは、珍しいというか、人は変わるものなんだなぁ……と感慨深い與鷹(よたか)雨水朧(うすい・おぼろ)「でも、いきなり何とかしようって言われてもねぇ……」
百鬼あろえ「せめて方向性だけでも決めてもらわないと、わおわお〜〜んと」
一同「……」
 滑ったので盛大に気まずいあろえだった。
 ちなみに、今は『"ほうこう"性』にかけて『わおわお〜〜ん』と"咆哮"してみたのです。
※解説やめろよ!余計に恥ずかしくなるだけだろ!
季良(きよし)「……」
 そして、方向性とか言われても何も思い浮かばない季良(きよし)であった。
 いきなり作戦会議大失敗の予感だ。
季良(きよし)「と、ともかく……」
 かつて俺がそうだったように、このまま無為な日々を過ごさせるのはあまりに忍びないってことだ!
あろえ「閃いた!」
一同「うおっびっくりした……」
 その時、突如あろえが大声を上げる
あろえ「要するに季良(きよし)と同じことをやればいいってわけよ」
與鷹(よたか)「は、はぁ……」
あろえ「あの二人は琉球王朝第零代王だったわけでしょ?」
季良(きよし)「ま、まぁ……」
 首裏城も歴史の墓場に移転している。
 だったら、あとは簡単。首裏城を王城に二人で国を作ってもらえばいいのよ!
季良(きよし)「いや、簡単に言うが、俺の時とは違うぞ……」
 季良(きよし)の場合、アンブリオという国があり、その王位は長い間空位であった。
 そこに季良(きよし)が新たなる国主となったわけだが、首裏城の場合、ただ、王城があるだけで他は何もないのだ……
 民のいない国など、国として成り立つわけがない……だから、あろえの言う季良(きよし)と同じ方法は取れないのだ。
※とってみてもすぐに破綻するということだね。
あろえ「そこはホラ、八大帝国の中から移住してもいいよってな人を募ってもらって……」
季良(きよし)「却下だ!」
あろえ「う、うぅ……」

#3
 結局、あれからも暫く会議は続いたが、良き案は何一つとして出ず終いだった。
季良(きよし)「参ったな……」
 しょぼくれながらトボトボと季良(きよし)が首裏城へ歩んでいると、いつもの場所にはライタの他にトモナミの姿もあっ
た。
季良(きよし)「ん?」
ライタ「丁度良かった」
 二人はいつもの様に無気力でたたずんでいるわけではなかった。
トモナミ「私たちは、旅に出ることにするわ」
季良(きよし)「はいぃ?」
ライタ「考える時間だけは無駄にあったからな……」
 そして、このまま無為に時間を消費するのは勿体ないという結論に達したんだ!と姉弟は言う。
季良(きよし)「旅に出るって……」
トモナミ「まずは八大帝国……」
 そして、それが終われば、歴史の墓場をくまなく旅してみようと思うんだ……
季良(きよし)「そ、そうか……」
 なんだよ、俺が考えるまでもなかったわけか……とハハハっと笑い声が出てくる。
ライタ「何だよ、馬鹿にしてんのか?」
季良(きよし)「いや、すまん、そうじゃない。そうじゃないんだ……」
 そして、今度は涙ぐむ
ライタ「お、おいおい……」
 泣いたり笑ったりと忙しい奴だな……
 ともかく、トモナミとライタは旅に出た。その旅路の果てに、何が待っているのか……今は誰も知らない。


END

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