Eighter -Extra Voyage-
63rder 〜琉球裏王家の零話(こぼればなし) B〜



#3
 琉球王朝第零代王、JJグソー……そして首裏城……
ザルキ「あっ……ああっ……」
 ガクガクと震えながら後退るザルキ
 いかにザルキが馬鹿でも、この祠に封印されている魔神が危険な代物であることは分かっている。
ザルキ「俺は……」
*「貴様が望む力を、我が与えてやろう」
ザルキ「何を……馬鹿なことを……」
*「だが、貴様はあの漢が憎いのだろう?」
 確かに、突如この地に現れたゼルシーなる人物が憎い!殺してやりたいほどに!
 だから、既に答えは出ていた!
 カカッ
 そして、祠が邪悪な光に包まれる。
*「ハハハハ!ハハハハッ!」
 そして、悲劇の幕は開く!
*「お、おい、見ろ……祠が!」
 謎の高笑いに引き寄せられ、近くの者が祠に集まってくる。
 そして、祠の御本尊とも言うべき石柱が真っ二つに割れているのを目の当たりにする。
 ここに、死をまき散らす魔神、JJグソーが復活した!
ザルキ「分かる……力が満ち満ちてるのが……分かる!」
 ググっと拳を握りしめながら、ザルキだった漢が叫ぶ
*「お前、なんてことを……」
ザルキ「死は幸いなり、死は災いなり……須らく、とく死ね!」
 無造作に腕を薙ぎ払うと、集まっていた一行がバッタバッタと倒れていく。
 無論、気絶などという生易しいものではない。死だ!

 そして、その最悪は、すぐさまトモナミ、ライタの元へ知らされる
*「か、火急お伝えいしたいことが!」
ライタ「何だ?騒々しい……」
*「例の祠が……」
トモナミ「なんですって!?」
 全てを聞くまでもなく、トモナミとライタの二人は祠のあった場所へと駆け付ける。
ライタ「これは……」
トモナミ「酷い……」
ザルキ「フハハ!ハハハハ!」
 そして、その場にはまだザルキだったJJグソーがいた。
ライタ「ザルキ、貴様がこれを!」
ザルキ「あぁ?」
 ギロリとライタを睨み付けるザルキ……だが、それはもはや人の眼光ではなかった。
ライタ「くっ……」
トモナミ「ゼルシーの報告ではまだ少しの猶予はあったはず……」
ザルキ「この愚かな人間が猶予を叩き砕いた!ただそれだけの話よ!」
 律儀に説明してくれるJJグソーであった
ライタ「馬鹿な……」
 なんでそんな愚かなことを……と考えるが今はそんな場合ではない。
 未だ首裏城は完成ならず……しかし、JJグソーは復活してしまった……このままでは近いうちに琉球は死の島と
化してしまう。
ゼルシー「やれやれ……これは厄介なことになったものだな……」
トモナミ、ライタ「ゼルシー!?」

#4
 いつの間にか、ゼルシーもそこへやってきた
ザルキ「来たな!」
 俺はまず貴様を殺す!貴様の持つ封印の祭壇は厄介な代物なんでな……完成させられる前に着様を殺せばチェッ
クメイトだ!とこれまた律儀にしゃべりだすJJグソー。
※JJグソーってこんな性格だったっけ?とか突っ込んではいけない。きっと素体となったザルキの意志みたいなも
 のがまだ少し残っているんだろう。知らんけど……
ザルキ「貴様は……」
 ゼルシーを見つめて、JJグソーはあることに気づく。
ザルキ「やはり、貴様を真っ先に殺さないと俺に未来はなさそうだ!」
ゼルシー「それは是非とも遠慮させてもらいたい」
ザルキ「黙れ!」
 ズダンッ
 一足問いにかかり、拳を叩きつけるJJグソーだが、ゼルシーはひらりとそれを涼しい顔で躱して見せる。
ゼルシー「私は肉体派ではないのだがな……」
ライタ「ここは俺が何とかする!」
トモナミ「ライタ!?」
 その結果、死ぬことになろうとも……アンタが生きていれば、必ずこの魔神を封印できるのだろう?……ならば
俺はここで奴を食い止める事が使命!と豪語する。
ゼルシー「う、むぅ……」
 ちょっと微妙な顔をしだすゼルシー
ザルキ「馬鹿が!たかが人間風情に、この俺を止められるか!」
 ボウンッ
一同「なっ、何!?」
 その次の瞬間、ゼルシーは懐から煙幕を取り出すと地面にたたきつける。
 そして、その隙にトモナミ、ライタと共にその場を後にするのであった。
ザルキ「無駄なことを……」

 逃げ延びてからすぐ、ライタはいきり立つ
ライタ「どういうことだ!ゼルシー!」
ゼルシー「不測の事態に備え、一応封印装置の根幹樽部分は出来上がっている」
ライタ「なっ、本当か!?」
ゼルシー「だがなぁ……一つ問題がある」
トモナミ「それは?!」
ゼルシー「人柱が必要……それが最大の問題だ……」
 もう少し時間があれば、無人封印装置が完成したのだが……こればかりは仕方がない……とゼルシー
トモナミ「でしたら、私が」
ライタ「なっ、姉さん、本気か!?」
トモナミ「私一人の命で、この地に平穏が齎されるならば、私は喜んで人柱になりましょう」
ライタ「駄目だ!姉さん……そんなことが、許されるわけがないだろう!」
 だって、姉さんは……この地を統べる女王なのだからッ!
トモナミ「いいえ、だからこそ、これは私が責任を取るべき問題なのです!」
 凛として時雨……もとい、言い放つトモナミ。彼女がこうまで言い切ったのであれば、その意見は覆らないとい
うことはライタもわかっていた。
ライタ「だったら、俺も!」
ゼルシー「……うん、まぁ、いいか……」

#5
 かくて、三人はいずれ首裏城と呼ばれる場所、その深奥へと足を運ぶ。
ゼルシー「最期にもう一度だけ確認するが、人柱になる覚悟はできているのだな?」
トモナミ「はい!」
 ならば是非もない!
 ズドオンッ
 そして、ザルキもそこへ到着
ザルキ「見つけたぜぇ!」
ゼルシー「やれやれ……お早い到着で……」
ザルキ「そして、ここが貴様らの墓場だ!」
ライタ「そうはさせん!ここから先は俺が通さん!」
 そう叫び、ライタは突撃槍に盾を組み合わせたような形状の兵器を構える。
 それはローティンベー……琉球に古くから伝わる一組の兵器、すなわちティンベーとローチンを組み合わせた兵
器だ
ザルキ「さほど死に急ぎたいのならば、貴様から先に……」
 バリバリバリッ
ザルキ「あぎゃはああ!?」
 その時、突如雷が落ちる様な衝撃がザルキを貫く
ゼルシー「眠れ!」
ザルキ「あっ……あがががっ、貴様!馬鹿な……まさか、既に封印術式を!?」
ゼルシー「そういうことになるな……」
ザルキ「だが、こんなことで……」
 いつの日か必ず、貴様ら全員い死を与える!それが……
 そのセリフを最後にJJグソーは封印された……
ライタ「終わった……」
 カランとローティンベーを地面に落としてライタが呟く
ゼルシー「いや、ここからが始まりだ……」
 まだ首裏城も完成してはいない……そして、何より、ここから先は長く辛い道のりの始まりだ!
ライタ「いいさ……姉さんと一緒ならば、俺は……」
 そして、ライタは首裏城の番人としてJJグソーの復活を阻止し続けるために!
 その後、首裏城は完成し、トモナミ、ライタと共に歴史の表から葬り去られたのは言うまでもない。


END

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