Eighter -Extra Voyage-
60ther 〜狂犬と魔狼の幽戯 A〜



#0
 天宮裕(あまみや・ゆたか)……與鷹(よたか)と同じく双狼拳(そうろうけん)の使い手だが、今は與鷹(よたか)を殺すことを至上の命題と考えている迷惑極まりない漢
である。
 かつて與鷹(よたか)のフリをして彼の名を貶めようと画策するも、あえなく捕縛されてしまった(ゆたか)だが、今回はそんな(ゆたか)
の獄中生活を綴ったエイプリル
※エ『イプリル』じゃなく、エ『ピソード』……4月か!?紫色の脳細胞を持つアフォ探偵か!?

#1
 東京、某所
 ここは東京地方の洋上に建造された城塞監獄、水晶の騎士。建造されたなどと言われているが、難破した豪華客
船を改造して収容施設にしているに過ぎない。
※騎士は英語でナイト……水晶はクリスタル……クリスタルナイト……って、水晶の夜!?
 そして、そんな監獄に(ゆたか)は投獄されていた。
 手錠に足かせ、更に白と黒の縞々模様の囚人服という、いかにもな格好で……
※いかにもっていうか、ルパン三世で出てきそうな感じのいでたちだ。
天宮裕(あまみや・ゆたか)「……」
 海の上に作られた監獄とあっては脱獄しようがない……だからといって、(ゆたか)は脱獄を諦めたわけではなかった。
 何しろまだ與鷹(よたか)を殺してないからである。それ程までに(ゆたか)の執念は凄まじかった。
*「おい、出ろ!」
(ゆたか)「あぁ?」
 そして、(ゆたか)の前に一人の漢が現れる。彼は水晶の騎士において、(ゆたか)らが投獄されているエリアの統括を任されて
いる看守長。毒島美人(ぶすじま・びぃと)と言った。
 彼に対してブスなんだか美人なんだからはっきりしろ!なんて暴言を吐いたものは残らず投獄された等という逸
話を持つ恐ろしい漢だ
※いや、どこが?……というか、ブスと(ぶす)は違うからね!
毒島美人(ぶすじま・びぃと)「貴様に恩赦のチャンスをやろう……」
(ゆたか)「何だと!?」
美人(びぃと)「まぁ、貴様がこのまま監獄で朽ち果てるのを良しとするなら話は別だが……」
(ゆたか)「ハッ!終身刑でもない俺がこんなところでくたばるワケねぇだろうが!」
 などと毒づきつつも、(ゆたか)美人(びぃと)の言葉に従い檻の外へ出る。
(ゆたか)「恩赦ってなんだ?」
美人(びぃと)「まぁ、焦るな……必ず恩赦がもらえるってわけじゃない……チャンスを与えると言ったのだ」
(ゆたか)「だから、そのチャンスってのは何だよ?」
 そして、(ゆたか)美人(びぃと)に付き従い、道を進み……出入口にまでやってきてしまった。
美人(びぃと)「乗れ!」
(ゆたか)「は!?」
 そこには小型の船が一隻。
美人(びぃと)「貴様にチャンスを与える場所へ移動する。それだけだ……」
(ゆたか)「……」
 一体どういうことなのか?
 だが、監獄から脱出できるのであれば、ありがたい。渡りに船というのはこういうことを言うのだろう……

#2
 東京地方、藺灘波島(いなんばじま)
 船がたどり着いたのはそこだった。
美人(びぃと)「さて……」
(ゆたか)「なっ、こりゃあ!?」
 その島には既に大量の人間が集まっていた。
美人(びぃと)「恩赦というのは他でもない……ここにいる奴ら一人を倒すごとに一日懲役を減らしてやるというものだ」
(ゆたか)「ハッ!たった一日程度減ったところで何になる!」
美人(びぃと)「慌てるな……こいつらは365人でセットよ!」
(ゆたか)「何?!」
 一人倒せば一日懲役が減る……365人ならば一年だ!
(ゆたか)「面白ぇ……一人斃す毎に一日減るってんだな?」
※『たおす』ってニュアンスが違います……
美人(びぃと)「あぁ、そうだ……」
(ゆたか)「やってやろうじゃねぇか!」
 一日でも早く與鷹(よたか)を殺せる日が近づくならば……そして、その為の経験が積める……これは一石二鳥と言うもの
だ!
美人(びぃと)「では、早速……」
(ゆたか)「おい、ちょっと待てよ!」
 早速開始の合図を行おうとする美人(びぃと)に対して、手錠にかかったままの両手を突き出して(ゆたか)が叫ぶ。
(ゆたか)「手錠と足かせ、外しやがれ!」
美人(びぃと)「それは出来ない相談だな……」
(ゆたか)「貴様ッ!」
 最初からこのつもりで……
 無茶なゲームをふっかけて楽しむつもりか……貴様らそれでも警察か?!などと(ゆたか)が心の中で叫ぶ
※看守って警察とは違うのでは?……まぁ、どっちにしても人道にもとらない外道な所業なのは変わりないけど
美人(びぃと)「それはハンデだよ、天宮裕(あまみや・ゆたか)……」
(ゆたか)「はぁ?ハンデだぁ!?」
美人(びぃと)「無敵の双狼拳(そうろうけん)ならば、その程度、ハンデにもならんだろう?」
 そうだぜ、ギャハハハハ……と嘲笑が(こだま)する。
 こいつら、舐めてやがるな……と(ゆたか)は静かに怒りを燃やす。
美人(びぃと)「我ら魔狗蜃牙拳(まこうしんがけん)双狼拳(そうろうけん)に比べれば格下なんでね……悪く思うなよ」
(ゆたか)「……魔狗蜃牙拳(まこうしんがけん)だと!?」
 それは久しく懐かしい響きであった……それを聞いたのは九星団に居た頃か……
美人(びぃと)「そうだ!貴様に殺された火渡櫺(ひわたり・れんじ)の恨み、今こそ晴らさんッ!」
(ゆたか)「はぁああ〜〜〜!?」
 なお、彼らは完全な勘違いをしている。火渡櫺(ひわたり・れんじ)を殺したのは天宮裕(あまみや・ゆたか)ではなく、白拍子かれんだ。
 (ゆたか)が唖然とするのは無理もないが、今ここで俺ではないと叫んだところで誰も信じないのも明白だった。
美人(びぃと)「果たして、君は生き延びることが出来るか?」
 なんで今ここでそんなセリフを叫ぶのか?
(ゆたか)巫山戯(ふざけ)るなッ!」
 かくて、戦いのゴングは鳴った!
*「うぉおおおお〜〜!」
 四方八方から襲い来る魔狗蜃牙拳(まこうしんがけん)の使い手……(ゆたか)はどこまでいけるのか!?


続

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