Eighter -Extra Voyage-
59ther 〜艦の中の地獄絵図 B〜



#3
 豪華客船、百合丸雨号は爆弾で作られた艦だった!?
 一体、誰が何の目的でこんなことをしでかしたのか?
*「フッフッフッフ……お楽しみいただけていますかな?」
一同「なっ、誰だ!?」
 突如艦内放送で謎の声が聞こえる。
*「フッ、フフフ……フハハハ……忘れたとは言わせんよ?」
 そして、突如部屋の中にホログラムで一人の漢の姿が映し出される
樹舞螺(きまいら)幽之介「馬鹿なッ、貴様ッ……貴様はぁッ」
 ガタンッと思わず車椅子から立ち上がって鬼のような形相で幽之介が叫ぶ
一同「ボス!!」
 お体に障ります故、お座りください……とすかさず椎馬(しいま)がボスの元へ駆けつけるも、彼はそれが煩わしいとでも
いうような風に腕を振るう
幽之介「貴様ッ!何故……生きている……いや、ありえん!貴様は……誰だ!?」
*「ハハハハッ……ハハハハッ……ハハハッ!お前がよくご存じの漢だよッ!」
 その言葉を最後に、ホログラムはブツリと切れる。
淋多雨(りん・たう)「おい、今のは……」
無籍任太郎「はっ、はい!放送室かと……」
多雨(たう)巫山戯(ふざけ)やがって!」
 怒りに満ち満ちた表情で多雨(たう)が走り去っていく。

柄覇鋳ナ馬(がらはう・しいま)「ボス……今のは……一体……」
幽之介「ふぅ……」
 どかりと車椅子に座るボス。忌々し気に眼帯に手をかざしながら、ボスは続ける
幽之介「劉漸院(りゅうぜんいん)……界吏(かいり)……」
一同「なっ、何だとッ!?」
 ざわりとどよめきが広がる。
惑星死陸(まどほし・だいろく)「その、劉漸院界吏(りゅうぜんいん・かいり)ってのは、誰なんだ?」
椎馬(しいま)「奴の事を語るには、今から十年前の惨劇を語らなければならない……」
幽之介「……」
 ちらりと幽之介を見ると、構わんよと言わんばかりに頷くボス
椎馬(しいま)「闘王ってのは知ってるか?」
死陸(だいろく)「とう、おう!?」
椎馬(しいま)「闘王……それは、一般人百人を一定の地域に閉じ込めて殺し合いを行わせる裏の世界のゲームのことだ」
 生き残った一人が闘王の称号を得られる!それが闘王!
※ってか、それ、どう考えも人を使った蠱毒(こどく)じゃねぇか
死陸(だいろく)「うへぇ……そいつはまた……」
 そして、劉漸院界吏(りゅうぜんいん・かいり)……奴は十年前の戦王の優勝者だった漢だ!と続ける椎馬(しいま)死陸(だいろく)「過去形?」
椎馬(しいま)「奴の殺人能力は凄まじかった……表の世界の住人ではなく、裏の世界の住人ではないかと見紛う程……」
 なぜなら、奴は三日で九十九人をブチ殺し、優勝したほどの逸材だから
死陸(だいろく)「マジかよ……」
 思わず冷や汗をかく死陸(だいろく)

#4
幽之介「奴に賞賛の一つでも与えてやろうと近づいたのが、全ての間違いだった……」
椎馬(しいま)「あぁ、奴は……そのままボスを半死半生の目に合わせたクソヤロウだからなッ!」
 ドカンと壁に拳を叩きつけながら椎馬(しいま)が叫ぶ
死陸(だいろく)「おいおい、まさか……」
幽之介「……ふふ……(わし)が車椅子生活を余儀なくされたのも、全てはあの時のせいよ……」
 それが十年前の惨劇……
 死ななかったのが不思議なくらいの怪我を負い、ボスは今の姿となった……今の姿にされてしまった。
椎馬(しいま)「そして、後は凄絶な報復だ!……ボスを半死半生に合わせたあの野郎を活かしてはおけねぇ!」
 それこそ乃代込組(のだいごめぐみ)総出で奴の始末にかかった!
椎馬(しいま)「そして、多大な犠牲の果てに、奴は死んだ……」
死陸(だいろく)「……だが、奴は生きていた……?」
椎馬(しいま)「それはありえんッ!」
 なぜ言い切れる?……と死陸(だいろく)が訪ねようとした矢先、椎馬(しいま)が続ける
椎馬(しいま)「奴のそっ首を叩き落したのは俺だ!……そして、俺はその首級(みしるし)をボスに献上した!」
死陸(だいろく)「なるほどなぁ……」
 ならば、万に一つも奴が生きていたなんて可能性はないな……

多雨(たう)「クソッ」
 そこへ、放送室に向かっていた多雨(たう)が帰ってくる。
死陸(だいろく)「その様子じゃ……はぁはぁ……放送室はもぬけの殻だったってことか……ゼェゼェ……」
多雨(たう)「……おい、司郎!てめぇ、何ボケっと突っ立ってやがる!」
瓜泰(うりたい)司郎「そう怒るな……アンタの言いたいことも分かる……」
 流離(さすら)いの解体屋の異名を持つ彼に、分解できないものはない!
司郎「だが、アンタだって忘れたわけじゃあるまい……この船は爆弾で作られたも同然の代物……それを分解(バラ)すっ
てことは……」
一同「艦を……」
司郎「そういうこった……爆死するか、溺死するか……二つに一つ……」
無籍任太郎「そんな……」
死陸(だいろく)「もう一つの手は……はぁはぁ……犯人を見つけ出して止める……ぜぇぜぇ……」
*「だがよぉ、十年前に椎馬(しいま)の兄貴に首を落とされて死んだはずの人間が生きているなんて思えねぇぜ……」
司郎「しゃあッ」
 ズババッ
*「あがあっ!?」
 その時、突如として司郎が動く。ほんの一瞬の間にそいつは手足を切り落とされて床に転がるハメとなった
任太郎「ひぃっ!……い、一体、何を!?」
椎馬(しいま)「簡単な話だ、コイツが爆弾を仕掛けた犯人だってことだ!」
任太郎「ど、どうして、そんなことが……」
椎馬(しいま)「十年前に奴の首を叩き落したのは俺じゃねぇ、俺のオヤジだ!」


続

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