Eighter -Extra Voyage-
58ther 〜土星の輪は誰の為〜



#0
 土山(しんぎ)。彼はサートゥルヌスグループのお嬢様と婚約を交わしている将来が約束された逆玉の輿な御仁である。
 今日はそんな彼と彼女に関するエセルドレーダ
※エ『セルドレ』ー『ダ』じゃなく、エ『ピソ』ー『ド』だから!……ってかナコト写本の精霊ですか!?

#1
 京都府、サートゥルヌスグループ・本社
土山(しんぎ)「……」
 ある日、社長室に呼び出された(しんぎ)は冷や汗ダラダラで社長でもあり、自分の婚約者の父親でもあるエピメット氏
と対峙していた。
 しかも彼の隣には母親のプロメもいるから緊張がさらに倍である。
エピメット・U・刺炭(さたん)「さて、今日お前を呼び出した理由は分かるか?」
(しんぎ)「い、いや、ちょ、ちょっとわからない、です……」
 俺何かしでかしたのか!?と割と人生最大のピンチな(しんぎ)。
エピメット「いつだったか我が娘が誘拐された事件があったであろう」
(しんぎ)「あっ、はい。それは……」
 俺がいながらにして、何たる不覚ッ!と頭を下げる(しんぎ)
プロメ・T・刺炭(さたん)「今日はそのことについて責め立てるためい呼び出したわけではないの」
(しんぎ)「はい?」
 恐る恐る頭を上げる(しんぎ)
エピメット「今後も、あのようなことが繰り返されんとも限らん……そこでだ……」
(しんぎ)「俺にボディーガードをやれと、いうことですか?」
エピメット「いや、違う」
(しんぎ)「では……ボディーガードに足る様な人物がいたら紹介してほしい……とかですか?」
エピメット「そうではないのだ……」
プロメ「貴方のお友達を疑ってしまうようで申し訳ないけれど、これ以上外部の人間をサートゥルヌスグループに
招き入れたくもない……というのが事実よ」
(しんぎ)「……」
 と、言うことは、一体どういうことなのか?
 (しんぎ)がボディーガードをやるわけでもなければ、新たにボディーガードを雇うわけでもない……
エピメット「お前が娘に護身術を教えてやって欲しい」
(しんぎ)「い、いやいやいや、いやいやいや……それこそお門違いというものでは……」
 第一、(しんぎ)は誰かに護身術を教えられるほど芸達者ではない。
※護身術を芸って……
エピメット「ふむ、言い方が悪かったな……」
 顎に手を当てて、エピメットはこう続ける
エピメット「娘にお前の持つ拳法を娘に授けてほしいと、そういうことだ」
(しんぎ)「そんな無茶なッ!」
 (しんぎ)が叫ぶのも無理はない話だ。素人もいいところのお嬢様に(しんぎ)の使う現殺神拳(げんさつしんけん)が扱えるわけがない。
プロメ「でもね、困ったことに娘はあなた以外の男性と一緒に居たくないというのよ」
(しんぎ)「そ、それは……」
 なんだかとっても嬉しい感じ。

#2
(しんぎ)「……とりあえず、話は分かりました……」
エピメット「では、引き受けてくれるな?」
(しんぎ)「……は、はい……」
エピメット「では、早速今すぐに」
(しんぎ)「今すぐぅ!?」
プロメ「善は急げという言葉があるではないですか」
(しんぎ)(俺の拳法が善だとは思えないけどな……)
 ともかく、とんとん拍子にコトが進み、(しんぎ)はそのまま本社の地下にある闘技場へと足を運ぶことになる。
(しんぎ)(ってか、俺の拳、現殺神拳(げんさつしんけん)ってのは殺気で相手を斬り飛ばす拳なんだが……)
 実践方式で教え込んだら間違いなく彼女がバラバラになってしまう……
(しんぎ)「うへぇ、本社の地下にこんな施設があったとはなぁ……」
ディオネ・B・刺炭(さたん)「無理を言って大至急作らせてもらったのよ」
(しんぎ)「マジかよ……」
 流石日本で五本の指入る財閥の一つ、金遣いがパねぇ……なんて思いつつも振り向くと、そこには(しんぎ)の幼馴染で
恋人でもあるディオネがいた。
 そして、何をどうしたらこうなったのか……黒いエナメル質のハイレグじみたボディスーツをぴっちりと着込ん
でいた。
 なんかこう、悪く言うとSMの女王様チックないでたちである。
ディオネ「さ、私を貴方の色に染め上げてっ!」
(しんぎ)「いや、なんかその言い回しおかしいから……」
 気を取り直して、(しんぎ)の手ほどきによるディオネ育成計画が始まった。
 拳の握り方から始まり、足運びに腕の突き出し方……
 暫く教え込んでからわかったことは、やっぱり、(しんぎ)は人に何か教えるのはあまり向いてないってことだった。

 そして、暫く茶番のような稽古が続き……
ディオネ「なるほど、なるほど……今の私ならきっと、範馬勇〇郎も斃せますわね」
(しんぎ)「いや、無理にも程があるッ!」
 ってか、範馬〇次郎を知っていたことに驚きを隠せない(しんぎ)。
ディオネ「いいえ、何事もやってみなければわからない!」
 だが、やらずとも結果が分かることもある。
ディオネ「さぁ、今までの練習の成果を今、見せる時!」
(しんぎ)「あ〜〜、もう、分かったわかった……」
 ぼりぼりと頭をかきながら、(しんぎ)もディオネと相対する
(しんぎ)(お前には悪いがちぃっとばかし、現実ってのを見てもらわないと困るからな……)
 生兵法ほど危険なものはない。
ディオネ「行きますわよっ!」
 ささささっ
 だが、足運びだけはなかなかのものだった。
ディオネ「くらえぇ〜!」
(しんぎ)「ハッ」
 ズドゴンッ
 だが、所詮は素人に毛が生えた程度。数々の道場破りを繰り返し、拳を磨いた(しんぎ)の敵ではない。
※ってか、思ったけど、数々の道場破りを行っておいて、サートゥルヌスグループからは何も言われなかったのは
 凄いというか、実はまだバレてないだけで、バレたらヤバイのかな?
ディオネ「あふん!?」
 掌底を食らって派手に吹き飛ぶディオネ。

#3
(しんぎ)「……やっべ、やりすぎたか!?」
 すぐさまディオネの元へ向かってゆさゆさと体を揺らす。
ディオネ「はっ!?」
 暫くすると目を覚ますディオネ
(しんぎ)「気がついたか……」
 ほっと一安心する(しんぎ)
ディオネ「先ほど、何かつかめた気が……もう一度、もう一度さっきのあのなんとも言えない高揚感を……」
 はぁはぁ……となんか頬を紅潮させているディオネ。
(しんぎ)「ちょ、ちょっと待て……」
 これはもう、なんか開けてはいけない扉を開いてしまったのではないか!?
ディオネ「縛ってもみてほしい……あと鞭なんかも、なんかこう、じゅんとします」
(しんぎ)「うおおおい!マテマテマテマテマテ」
 なんか取り返しがつかない感じになってしまい慌てふためく(しんぎ)であった。

 なお、それを密かに見ていた両親は、孫の顔が見られるのも近い……と喜んでいたのは別の話だ……


END

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