Eighter -Extra Voyage-
57ther 〜鷹舗家と(いわく)虚舟(うつろぶね) C〜



#5
 兎園(とえん)商会が潜伏している場所へと乗り込んだかんなと(おぼろ)。
 そこで(おぼろ)は思いがけない再会(?)をする!?
木山影脇「うおおっ!八仙過海(はっせんかかい)!」
 ズガガガガガガガガッ
 両手、両足、腹、心臓、頭、首を貫きにかかり完全に相手を殺すための刺突を放つ影脇。
雨水朧(うすい・おぼろ)旋抉黎杭打刳撃(スクリュー・パイルドライバー)」
 ドズゴオオオンッ
 対して(おぼろ)は抉りで生じた渦によって相手を吹き飛ばしにかかる
影脇「うごごごご!?」
 やはり、影脇 < (かぎり) < (おぼろ)という力関係は間違っていなかった。
一同「ば、馬鹿なぁ!?」
(おぼろ)「さぁ、まだやる?だったら相手になるわよ?」
 ドカンと(いしづき)で地面を叩きつつ、(おぼろ)が吠える
*「ど、どうします?」
*「どうするも、こうするも……」
*「いや、まだ手はある!」
 そういって一人の漢は奪い取った装置に眼をやる
*「アレを動かすことが出来れば、この場から逃げることも可能!」
*「確かに!」
(おぼろ)「そんなことさせると思う?」
 ぐるんぐるんと八咫鉾(やしむ)を片手で振り回しながら、(おぼろ)が叫ぶ
白拍子かんな「壊しちゃダメですからね?」
(おぼろ)「うっ……」
 逃げないようにあの装置をぶっ壊してやろうなどと考えていた(おぼろ)は、かんなに忠告されて動きを止める。
*「よし、今だ!みんな乗り込め!」
 その隙をついて兎園(とえん)商会の連中は装置に乗り込む
*「……う、動きません!」
*「そんな馬鹿な!?」
*「こ、これ見てください……どうやらENがゼロだとかそんな表示に見えますが……」
一同「な、何だってぇ?!」
(おぼろ)「さて、もう、万策尽きた感じかしら?」
一同「ヒ、ヒィイイ……」
 ここまで来たら後はお手上げするしかない兎園(とえん)商会の連中であった。

かんな「では、戻りましょうか」
 そろそろあっちの方も遺跡の調査も終わっている頃でしょうし……とかんな。
 それは超運を持つかんなだからこそ分かる芸当なんだよね。

影脇「くそっ、アンタ、強ぇな……」
(おぼろ)「あ〜〜、なんというか、アンタが勝てなかった女っていたじゃない?」
影脇「おう!」
 何故かお前が知っていたあの女な……って言うと、(おぼろ)は更に続ける。
(おぼろ)「それって金谷(かぎり)じゃなかった?」
影脇「な、なぜそこまで知っている!?」
(おぼろ)「だって、私は彼女に勝った身だから」
影脇「うそん……」
 ガックリと項垂れる影脇。
 最初から敵う相手ではなかったということだ。

#6
 天四斗(あまよと)、鷹舗家
鷹舗ちえり「にゃはははは〜、お帰りなさいませご主人様」
(おぼろ)「いや、なんでメイドみたいなことをやってんのよ……」
 しかも、マジでメイド服だったので一体何があったんだ?と首をかしげるしかない(おぼろ)であった。
ちえり「裏山を探索したら服が汚れちゃったのさ……」
 だからって着替えにメイド服(ソレ)をチョイスするか?
梓與鷹(よたか)「どうやらそっちも片付いたようだな……」
 奪還した装置とぐるぐる巻きにされた兎園(とえん)商会の面々を見ながら與鷹(よたか)が呟く
(おぼろ)「当然よ!」
 ぶいっとブイサインをしつつ(おぼろ)が宣言する。
かんな「そちらの方は何か分かりましたか?」
 超運を持つかんななので既に答えは悟っているようなものだが、與鷹(よたか)に問う。
與鷹(よたか)「ああ……まず、一つ」
 そういって、與鷹(よたか)兎園(とえん)商会の連中の前に歩み寄る
與鷹(よたか)「アンタらは兎園(とえん)小説に出てくる『うつろ舟の蛮女』について調査している組織だな」
*「クッ、そこまでばれているとは……」
ちえり「にゃははははっ、名前でバれないわけがないのさ」
 最もな意見だった
(おぼろ)「な、何それ?」
與鷹(よたか)「江戸時代のUFO伝説ってヤツだ……」
(おぼろ)「江戸時代のUFO伝説ぅ!?」
 そう聞いて、(おぼろ)は真っ先にジャ〇プコミックの銀〇を思い浮かべた。
 あのギャグコメって実は史実をなぞらえていたのか!?とかオカしなことまで妄想しだす始末だ。
 ンなわけはない!(ってか、時代違わない?)
かんな「……1803年(享和3年)に常陸国(ひたちのくに)の浜辺に突如現れたとされるこのUFO型の物体が虚舟(うつろぶね)です」
 当時の文献によれば、中には異国の女性が乗っていたそうだ。虚舟(うつろぶね)についても、中の女性についても現在でも正
体はなんなのかはっきりとしたことは不明なままだという。
 なお、余談になるが常陸国(ひたちのくに)には金色姫という、異国の女性が虚舟(うつろぶね)にのってやってきて、日本に養蚕を伝えたなど
という伝説も残っているらしい。
(おぼろ)「ってことは何、歴史的発見のためにこの虚舟(うつろぶね)ってのを奪い去っていったってこと!?」
*「グッ……だ、だが、しかし!」
 弁明しようとする兎園(とえん)商会の連中だが、それを遮り、與鷹(よたか)が続ける
與鷹(よたか)「それはこの際置いておくとしてだな……虚舟(うつろぶね)ってのが出現したのが常陸国(ひたちのくに)……これが現在でいうところの茨
城県、大洗(おおあらい)町だ!」
(おぼろ)「え!?それって……」
ちえり「にゃははは、かつてウチらが住んでいた場所なのさ」
 え!?ここでそんな話に繋がるの!?って思う一行。
 誰だってそう思う。

 この装置……虚舟(うつろぶね)はもともと茨城県の鷹舗家にあったもの。だが、今は富山県にまるっと移動した……
 いつ頃移動したのかは定かではないが、当時に土地ごとまるっと移動させるような技術があったのだろうか?

#7
 とりあえず、兎園(とえん)商会の連中を窃盗の現行犯として警察に引き渡す一行。
 気を取り直して、與鷹(よたか)は語る。
與鷹(よたか)「俺はちえ……ちぇりりんに頼んで鷹舗一族いまつわる文献を調べさせてもらったんだが……」
 ちえりって言おうとしたらムっとした表情になったので慌ててちぇりりんって言い直す與鷹(よたか)。
 さておき、そこで驚くべき事実が発覚した!と言い出す與鷹(よたか)
かんな「……虚舟(うつろぶね)の蛮女が、鷹舗一族の先祖だった……と」
一同「えええぇええ!?」
 超運でかんなが続きを語る。そんな事実に一同は驚きを隠せない。
ちえり「にゃはははは〜、驚くべき新事実発覚ってとこなのさ」
 別段びっくりしている様に見えないのがちぇりりんの凄いところだ。
與鷹(よたか)(ここからは本当に推測ってか、最早妄想に近いかもしれないが、鷹舗家ってのが本当に江戸時代に宇宙から
やってきたのかもしれん……)
かんな(モノポールも、もしかしたら虚舟(うつろぶね)と何か関係がある……ってことですね)
 思えば虚舟(うつろぶね)がENゼロで動けなかったのは、モノポールがなかったからではなかろうか……
※モノポールがENってどこぞのタイムマシンじゃないんだから……
與鷹(よたか)(そういえば、俺、ちぇりりん以外の鷹舗家の人間を見たことがないな……)
 もしかして、ちぇりりんは江戸時代からずっと……まさかね……
 ともかく、こうして、ちぇりりんからの依頼は終わった。虚舟(うつろぶね)もまた、モノポールと同様にEighterで管理する
ことになったのだった。


END

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