Eighter -Extra Voyage-
57ther 〜鷹舗家と(いわく)虚舟(うつろぶね) B〜



#3
 天四斗(あまよと)、鷹舗家
鷹舗ちえり「にゃはははっ、ソロモンよ、英霊たちよ、私は帰って来たよん」
 いや、いきなり何を叫んでいるんですかね、この人は……
梓與鷹(よたか)「と、とりあえず、装置が置いてあったっていう遺跡の奥にでも案内して貰おうかな」
 何か兎園(とえん)商会に繋がる手がかりの一つでも残っていればいいなと思いつつ、メインは遺跡を探索したいだけとい
う與鷹(よたか)の思わくだ。
白拍子かんな「では、二手に分かれて行動しましょう」
 遺跡探検する與鷹(よたか)チームと、賊を追う追跡チーム。
 これが適材適所という奴だ。
※いや、違うから……
 追跡チームには誰がいるのか、そして、その結果としてもう、オチが見えたかもしれませんが、一応話を続けま
しょう。
 追跡チームにはかんながいる。そして、かんなの超運が炸裂し、すぐさま兎園(とえん)商会が潜伏している場所に辿り着
くことに成功するのであった。
雨水朧(うすい・おぼろ)「人のものを取ったら泥棒……ポケ〇ンの世界でも常識ってことを叩き込んであげないとね」
 いや、ポ〇モンの世界じゃなくても常識なんですが……
(おぼろ)「そこまでよ!あなたたち!」
一同「な、何だ、貴様ら!?」
かんな「鷹舗家からの依頼を受けて、貴方方が奪い去ったソレを取り返しに来ました」
*「クッ、いつまでもこんな場所でまごついている場合ではなかったということか……」
 後悔先に立たずとはまさにこのことだ。
*「ど、どうするんです?」
*「フッ、だが、こんな時のための用心棒だ!木山先生ッ、よろしくお願いします」
*「ったく、ようやく俺の出番ってわけかい」
 そうやって兎園(とえん)商会の連中をかき分けて木山先生などと漢が現れる。彼は名を木山影脇と言った。
*「こう見えて木山先生は槍の達人でなぁ……爵羅(しゃくら)流免許皆伝の腕前よぉ」
木山影脇「いや、俺なんてまだまだ未熟よ……」
 なんか謙虚な人だな、コイツ……
(おぼろ)「んん……爵羅(しゃくら)流?!」
 爵羅(しゃくら)流……それはかつてEighterと敵対した組織、九星団にいたメンバー、金谷(かぎり)が使っていた流派だ。
※ちなみに、どうでもいい情報だが、九星団壊滅後において、唯一それからどうなったのかが分からないのがこの
 金谷(かぎり)である。
影脇「ほう、どうやらお前は爵羅(しゃくら)流の事を知っているようだな……」
(おぼろ)「まぁ、それなりには……」
 ここは私の出番ね!といわんばかりに(おぼろ)八咫鉾(やしむ)を構える。
影脇「ならば、かかって来い、我が梅華雪炎(ばいかせつえん)の錆にしてやる!」
 かくて両雄は一足飛びにかかる。

#4
影脇「双龍争珠(そうりゅうそうじゅ)!」
 ドッドッ
(おぼろ)双腕黎杭打刳撃(ダブルアーム・パイルドライバー)」
 ガガッ
 二度の刺突でほぼ確実に相手を仕留めにかかる影脇と、右手で槍を突き出して左手で(いしづき)を押してさらに突きを進
める(おぼろ)。
 槍の(きっさき)同士が激突し、激しく火花が散る。
影脇「少しは出来るな……お前を見ていると、あの女の事を思い出すぜ!」
(おぼろ)「あの女ぁ?」
 死合の最中に女の話なんて余裕ね……って思っていると、観戦している兎園(とえん)商会の連中がしゃしゃり出てくる。
*「フッ、その女ってのはなぁ、木山先生が唯一勝てなかったっていう女のことよ!」
*「なんでも、ある日いきなり爵羅(しゃくら)流の道場に現れて門下生になったその女傑はなぁ、驚くことに砂漠にブチ負け
られた水の様に爵羅(しゃくら)流の技を吸収していったんだとよ!」
 そこは、スポンジが水を吸収するようにって例えなさいよ!なんでその例えをチョイスしたの?
(おぼろ)「……ねぇ、まさかとは思うけど、その女性って……鉄鎖術をやめて槍術を極めたいとか言い出したりは……」
影脇「なっ、なんで貴様がそれを知っているんだ!?そのエピソードはつまんないと思ってこれまで誰にも話した
事が無かったというのに!」
(おぼろ)「……」
 それは、もう、紛れもなく金谷(かぎり)のことに違いなかった。
 ならば、なおのこと、江戸の敵を長崎で討たせるわけにはいかない。負けられない理由がたった今出来た。
影脇「だがな、俺の見立てでは、貴様より俺の方が強い!」
(おぼろ)「そういうのを矛盾って言うのよ!」
一同「はい!?」
 ぽかんとする一同。まぁ、当然といえば当然だわな……
 (かぎり)よりも(おぼろ)の方が強かった。影脇より(かぎり)の方が強かった。でも、影脇は(おぼろ)より強いという。
 それは数学(というか、算数)で(かぎり) < (おぼろ)、影脇 < (かぎり)であるとき、影脇 > (おぼろ)となる数値を求めよといわれてい
るようなものである。
(おぼろ)「まぁ、いいわ、アンタは次でハコにしてあげるわ!……当然、ハコシタ無しよ!」
影脇「次から次へとワケの分からないことを……叩き潰されるのはお前の方よ!」
 余談となるがハコというのは麻雀用語で持ち点がなくなることを意味します。
 そして、ハコシタの有無というのは、持ち点がマイナスになっても続行するか否かの違いとなります。
 今回はハコシタ無しなので次の一手で決着ってことですね。
※じゃ、(おぼろ)が言うハコシタになっても試合続行って何?……って思う人もいるかもしれませんが、きっとそれは、
 どちらかが死ぬまで続けるってことなんだと思います。
 さておき、死合は最終局面へ!?


続

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