Eighter -Extra Voyage-
54ther 〜銃の声が聞こえる B〜



#3
 ホクホク気分でEighterに戻ってきた凍子(とうこ)。彼女は一人の女性を引き連れていたのだが、その女性が問題だった
梔曹(くちなし・つかさ)「お前は、海源留(うみもと・るーぶる)!」
海源留(うみもと・るーぶる)「ど、どうも……」
 バツの悪そうな感じで挨拶する(るーぶる)であった。
 ……今となっては随分と昔のことに思えてくるが、彼女、海源留(うみもと・るーぶる)はかつてEighterと敵対していた組織・九星団
の一員だ。
 ガンマンであるということで(るーぶる)の相手は(つかさ)が勤めていたため忘れようがない。
梓與鷹(よたか)「なんでここにお前が!?」
 なんでここに先生が?ってなノリで叫んでみる。
(るーぶる)「いや、なんでって言うか……無理やり……」
枳篤(からたち・あつし)「姉貴が無理言ってすいません……」
 とりあえず先に謝っておく(あつし)であった。
枳凍子(からたち・とうこ)「聞いて驚きなさい、見て叫びなさい、なんと!彼女はゼリーチップ社の社員なのよ!」
一同「な、何だってぇ〜〜!?」
 とりあえずノってみる一行であった。
(つかさ)「あ、そういうことか……」
 ここで、(つかさ)に電撃走る。
 (るーぶる)が九星団をやめて、どこで何をやっていたのか。
 先ほど、(つかさ)がしみじみ過去に想いを馳せていたアレ……ゼリーチップ社の製品が奇抜なデザインになった件と、
九星団壊滅の時期は同じような頃だ。
 つまり、そこから導き出される結論は……
凍子(とうこ)「そして、コレが彼女の準新作、SUPSS999(スパススリーナイン)!」
 そうして凍子(とうこ)が見せびらかすのは一丁のライフル。ナイフがついているいわゆるベ〇ネッタ……じゃなかったバ
ヨネットといわれるタイプだ。
※ベヨ〇ッタってをい……
 いや、新作じゃないんかい!と心の中で突っ込みを入れる一行
(るーぶる)「一応説明しておくと、このSUPSS(スパス)ってのは『Superalloy Used Pageant Sharp Shooter』の略で、意味は……割
愛するけど……」
與鷹(よたか)(あ、これ絶対意味考えてないヤツだ……)
凍子(とうこ)「前の9999(フォーナイン)コルトパイソンもいい出来だったけど、こっちもなかなかの出来ね」
(あつし)「んなっ、あれもゼリーチップ社の製品だったのかよ!」
 衝撃の事実発覚と言ったところだ。
※衝撃でも何でもないけど……
(るーぶる)「いや、ゼリーチップ社の製品ではないわよ……」
(あつし)「どういうことだよ?」
 私が個人的に制作してあげたものなのよ……と続ける(るーぶる)(るーぶる)「私が個人的に作ってあげた代物なの」
一同「個人的にって……」
(るーぶる)「こう見えても私はゼリーチップ社、日本支部では結構な役職についているのよ」
 唐突に始まる自慢話?
 ともかく、(るーぶる)が言うにはゼリーチップ社に自分専用の重火器開発工房を持つ程の重役なんだとか。
 それがすごいことなのかどうか、イマイチピンとこない一行であった。

#4
(るーぶる)「私がもつ工房は名を無限の銃製(アンリミテッド・ばばんがBang!)って言うのよ!」
 ドヤ顔で決まった!といわんばかりの(るーぶる)だった
※それ、『じゅうせい』の意味違うだろ……
(あつし)「ってか、姉貴はいつコイツと知り合ったんだよ?」
凍子(とうこ)「今はそんなことはどうでもいいの!」
(あつし)「そんなことって……」
 プチショックを受ける(あつし)
凍子(とうこ)「重要なことは、彼女が銃を作って、私がそれを撃つ。これが適材適所ってことね」
 まぁ、重火器を作りたい人と重火器を使いたい人がタッグを組んだら、こういう展開にもなるわな……と考える
與鷹(よたか)であった。
凍子(とうこ)「ところで重火器の開発には意外とお金がかかるのよね……」
與鷹(よたか)「いや、重火器に限定せんでも、開発ってのはだいたいどこも同じだとは思うけど……」
(あつし)「いや、待って……まさか……」
 キラ〜〜ンと目を輝かせる凍子(とうこ)。
 もう、次の展開は読めた(あつし)はその場から逃げようと背を向けるが、ジャカっとSUPSS999(スパススリーナイン)を突きつけられたことで
身動きが取れなくなる。
 思わず両手を上げて服従のポーズ。
(あつし)「俺の金が……とけてなくなっていく……」
凍子(とうこ)「馬鹿ねぇ、(あつし)……違うわよ」
(あつし)「え?」
 くるりと振り向いて凍子(とうこ)の方を見る(あつし)凍子(とうこ)「アンタにやってもらうのは金を出してもらうことだけじゃなくて、新型重火器の的にもなってもらうことな
んだから」
(あつし)「命がいくつあっても足らんわッ!」
 魂の叫びだった。
 当然だ。『死ね』って言っているようなもんだ"死"ね
※をい……
凍子(とうこ)「出しな、てめぇの金と命をな!」
 どこかで聞いたようなセリフを告げる凍子(とうこ)であった。
(あつし)「嫌だぁ〜〜」
 と、叫んだところでどうにもならないことは、既に(あつし)も悟っていた。
 だから、(あつし)は考える。この場を打開する一手がないか……
 ざわ……ざわ……考えろ、考えろ、考え抜くんだ!諦めたらそこで人生終了ですよ!と、言うような心理描写が
なされているような感じで(あつし)は額に手を当て必至に考える。
(あつし)「はっ!」
 その時、(あつし)に電撃が走る
(あつし)「な、なぁ、新型重火器の性能を図るには、俺じゃなく、銃を使う人の方が適役なんじゃないか?」
(つかさ)「おい、お前ッ!」
 言いたいことが分かったのですかさず(つかさ)が突っ込む。
(るーぶる)「確かに、ゼリーチップ社の製品の性能を試すにはそっちの方がいいわね……」
 さり気なく(つかさ)に負けたことを今でも根に持っているのだろうか……

#5
凍子(とうこ)「確かに、銃の性能を試すにはアンタよりもそっちのガンマン気取りを相手にした方がいいわね」
(つかさ)「おい!」
 ガンマン気取りとか言われて流石にムカっとする(つかさ)凍子(とうこ)「でも却下よ!」
(あつし)「何で!?」
凍子(とうこ)「私……弟に銃弾をプレゼントしたいの……」
 これは、姉からの弟に対する愛なのよ……とウットリと語る凍子(とうこ)であった。
(あつし)「それ、プレゼントじゃねぇから!」
 愛の歪みがハンパねぇ!
(るーぶる)「待って、それはそれでおいといて」
(あつし)「置いとくなよ!」
(るーぶる)「やっぱり、ゼリーチップ社の製品の性能も試したい」
凍子(とうこ)「じゃ、仕方ないわね……(あつし)で試し打ちを終えたら性能テストを行うってことでっどう?」
(るーぶる)「それでいいわ」
(あつし)(つかさ)「よくねぇ!」
 勝手に話が進められ思わず、(つかさ)(あつし)は抗議の声を出す
凍子(とうこ)「じゃ、今開発中の新作が出来たらよろしく」
與鷹(よたか)「あぁ、準新作ってそういうことだったのか……」
 しみじみと語る與鷹(よたか)(つかさ)「いや、そんなこと納得してないで何と……あっ……」
(あつし)「何とか言ってやってくださいよリーダー!」
 (つかさ)は途中で言い淀み、(あつし)はその続きを言い放つ。
 (つかさ)がなぜ途中で言い淀んだのか……それは、ここで『何とか言ってほしい』と言っても與鷹(よたか)(つかさ)が欲しい言葉を
返してくれないということを今までの経験から学んでいたからだ。
 だから、ちゃんと考えてから與鷹(よたか)に訴えようとしたのだが、(あつし)が先走ってしまったため、全ては終わった。
與鷹(よたか)「その……なんだ、Eighterの大事な仲間なんで、殺さない様にお願いするわ」
(あつし)「ちょっ!」
(つかさ)(あつし)ぃッ!!」
(あつし)「えぇ!?なんで俺!?」
 こうして、(あつし)を恨みがましい目で睨みながら、(つかさ)は性能テストに付き合う羽目となったのだった。


END

前の話へ 戻る 次の話へ