Eighter -Extra Voyage-
1ster 〜世にも奇妙なゾク C〜



#5
楠木南「……じゃ、行ってきま〜〜す」
 依頼を受けちゃったのでガックリしながら南が出立しようとするが……
楠木(ごう)「待ちなさい……南」
 すっと大鉾を持ち出す(ごう)
南「こ……これって……」
楠木(あやめ)「ええ……ウチに代々伝わる神器、天神明(てんしんめい)……この鋒には我が楠木家の先祖……楠木正成の魂が宿っている
と言われているわ……」
南「そ、そんなものを私に!?」
(ごう)「ああ……これならば……孤高の剣鬼と呼ばれておるあの冥時(みょうじ)の娘とも互角に戦えるであろう……」
 南、無言で鋒を受け取る
(ごう)「生きて帰ってこいよ……」
南「はい」

 天四斗(あまよと)、修羅の門
 元々ある人物の修行の場として作られたそこは……今や、古今東西ありとあらゆる殺人者が殺人術を磨くべく集
合する場所となっている
南「……ここね……」
 ギギィ〜〜〜
 門を開けると、中に、萌が佇んでいた
冥時(みょうじ)萌「……何だ?お前は……」
南「楠木南……ちょっとした依頼であなたを成敗しに来たわ……」
萌「楠木……?あの楠木家の!?」
南「……分かっているなら話が早いわね……」
 ぐぐっと天神明(てんしんめい)を構える南
萌「……馬鹿な女だ……表世界では屈強かもしれんが……そんな強さが裏の世界でも同じように通用すると思わな
いことだ!」
 スラっとまずは二刀流
南(くっ……やっぱ彼女……バケモノね……でも……負けられない……私は……武芸百般全てをこなす楠木家の末
裔!!)
萌「ハッ!斬空破(ざんくうは)!」
 ゴッ
 刃風による斬撃が南を襲う
南「楠木流征剣術……厭月斬(えんげつざん)!」
 ブウンッ
 大鉾を小枝のように振り回し、その横薙ぎで刃風を弾き飛ばす
萌(ぬ!?……あんな重量兵器を軽々と……)
南「これが、楠木家の者の力よ!どう!?思い知った!?」
 ビシっと天神明(てんしんめい)を突き付けて南が咆える
萌「ハッ!馬鹿力だけが取り柄か……そんなものでこの俺に勝てると思うな!轟計都(ごうけいと)ッ!」
 ドドッ
 左右の刀による十文字斬り……
南「湖沼割(こしょうわり)!」
 ガオンッ
 上段から一気に打ち下ろし応戦する南
 ギギッ
萌「ぐっ……くっ……」
 流石に重量のある鋒の一撃は重く……萌を圧す……

#6
萌「ぬうんッ!」
 ゴアッ
南「くっ!?」
 ザザザッ
 力任せに南を押し切る萌
萌「……良かろう……貴様は本気で相手になってやる!」
 スララッ
南「来たわね……元屠歳殺(げんとさいさつ)流……四屠(しと)の陣……」
 例の如く両手にて、親指、薬指、小指で1本、人差し指、中指と薬指、小指の背で1本を持つ持ち方での四刀流
萌「シャアアッ転移衝(てんいしょう)!!」
 ヴオムッ
 萌、咆哮と共に消ゆ
南「なっ!?」
萌「死ねぇあああ!!」
 ゴッ
 そして、死角の背後から兇刃が迫る
南「くっ……ぐううっ……」
 ゴロゴロゴロゴロゴロッ
 辛うじて、死角からの兇刃を察知できた南は無様に転げまわって回避
萌「甘いわっ!!四屠斬空破(しとざんくうは)!」
 ゴビュアアッ
 斬空破(ざんくうは)四屠(しと)の陣で行う……それは、通常の2倍なんかではなく……凶悪な刃風が南を襲う
南「ちょ、冗談じゃないわよっ」
 ガガガッ
 天神明(てんしんめい)の刃の腹にて斬撃を防ぎきる南
萌「……ほぉう……その鋒……ただの鋒かと思っていたが……神器か!?」
南「……ええ、神器よ……」
南(まぁ、でも、どんな神器なのかって詳しくは知らないのよね……)
萌「良いだろう……潰す!!」
 ヒュッ
 瞬時に南の間合いを浸食する萌
萌「はあっ!絶天突牙(ぜってんとつが)!!」
南「厭月斬(えんげつざん)!」
 ブウンッ
 4本の刀を使い切り刻みを行う萌……に対し、横に薙ぎ払う南
 ビキッ
萌「うっ!?」
 一瞬の交錯……そして……萌の持つ刀に罅が入る……
南「……」
 対する南の天神明(てんしんめい)は傷一つ無い……これが、神器とそうでないものとの差か!?
 ズッ
 そのまま萌に天神明(てんしんめい)を突き付ける南
南「その状態で……まだやる!?」
萌「当然だ!武器に(ヒビ)を入れたくらいで……俺の牙を折ったつもりでいるなよ!楠木のぉ!!」
 ズゴゴゴゴゴッ
 邪眼覚醒し、禍々しい殺気が辺りを包みこむ
南「くっ……」
 その邪気に当てられ知らずに後退る南
南(……これが……彼女の……孤高の剣鬼の本気ってわけ!?)
南「でもっ……私だって……」
 キイイインンッ
 そして、その時、天神明(てんしんめい)が眩く光り輝く
萌「くっ!?何だ!?この……光はぁ!?」
 それは……萌の邪気を浄化していく
萌「……なめるなぁ!!!四屠斬空破(しとざんくうは)!!」
 ズギャアアアッ
 4刀の刃風を刃に纏わせたまま南に斬りかかる萌
南「ハァアッ!大車輪撃天刃(だいしゃりんげきてんじん)!!」
 ブオアアアアアッ
 天神明(てんしんめい)を振り回しながら一気に萌に迫る南
 ビキッ
 バキャアアッ
萌「!!!!」
 そして……萌の刀の内、2本が南の技に耐えきれず砕け散り……残りの2本にも修復不可能な大きな罅が入る
萌「くっ……転移衝(てんいしょう)」
 ヴオムッ
 不利と判断した萌は咄嗟に勝負を捨てる
萌「この勝負、引き分けだ!楠木の小娘……貴様の名は!?」
南「……楠木……南……」
萌「……覚えておこう……貴様の名……そして、俺の方も覚えておけ……冥時(みょうじ)萌だ!」
 タタッ

 ブシュウウッ
 そして、萌は去り……最後の萌の一撃をくらってしまっていた南も出血し、その場に倒れこむ
 ドサッ
南「はぁ……はぁ……厳しかった……でも、これで……一矢報いたから……いいんだよね……」
 もう、萌と死合うのはこりごり……そう思った南であった……


END

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