Eighter -Chaos Desorder-
8ther 〜古刹に眠れし神刀カタナ B〜



#3
ジャリッ
かんな一行が慶応けいおうの計らいで奉刃宮ほうじんぐうの中に案内されたころ……封刃宮ふうじんぐうの前に1人
*「……」
橙の上着と蒼い袴、左右に2本ずつ、合計4本の刀を下げた藤色のポニーテールの女侍……そう、九星団の
一員で、いさむもとよりの師匠の仇……何故彼女がここを訪れたのかといいますと……
スラッ
抜刀して、刃を見る彼女……その刃……随分手ひどく痛んでいた……
*「やはり……ここにしかないな……」
ズガシャアアッガキンッ
かくて、彼女は封刃宮ふうじんぐうの堅牢な封印を破り、中へ……
ガタガタッ……ガタガタガタタッ
人の生き血を吸いたくてたまらない……そして、今まで封印されており、血に飢えている刀身が……久しぶり
のエモノの来訪に騒ぎ出す
*「俺を……殺す気か……?フン……」
ググッ
*「来いッ!」
ジャッ
封をされている鎖を持ち、一気に引っ剥がし、封印を破る
ドドドドドッ
次の瞬間、飢えていた刃が一斉に彼女を襲う
*「だがっ!」
ババッ
迫る兇刃……を回避し、茎を掴んで我がものにする……
*「……俺が使うに相応しい刃であるかどうか……見せてもらうぞ!」
ギャキンッギギギィンッ
そのまま妖刀で妖刀を折る……
※……そういえば、彼女、第一人称が『俺』なんですね……(今更だな……)
・
・・
・・・
暫く妖刀と妖刀がぶつかり合い、折り、折られ、取り換え……そして、彼女の手には4本の妖刀が残った……
*「……龍яツ毘りゅうとうだび……か」
手にした妖刀が語りかけてくる……ひとまずは彼女に身を委ねようということらしい……
※ちなみに、龍яツ毘りゅうとうだび……は号。無銘の刀でございます。
ザッ
そして、彼女は封刃宮ふうじんぐうを後にする

#4
一方奉刃宮ほうじんぐうでは……
スラッ
かんな、炎の記憶を手に取り、そしていとも簡単に抜刀して見せる
一同「なっ!?」
慶応けいおう「馬鹿なぁっ!!?」
一番驚いたのは慶応けいおう……今まで誰が挑戦しても抜けなかったその刀が今、一瞬で抜けたから当然である。
慶応けいおう「貸せっ!」
バチッ
慶応けいおう「なっ!?」
抜かれた刀……触れようとした矢先、はじかれる
某敢それがし・いさむ「結界……でござるか!?」
白拍子かんな「……」
パチリ
そのまま納刀するかんな
かんな「……あれ!?」
そして、なんで今、こんな状況に!?とちょっと困惑
梓與鷹よたか「……かんな……?」
かんな「……えっと……はい?」
慶応けいおう「……ちょっと貸してみろ……」
慶応けいおうの言葉に、かんなは手にしていた炎の記憶を差し出す……すると。今度は結界に弾かれることなく手にする
ことができる……
慶応けいおう「……今まで数々の人物が挑戦し……そして無理だったこの炎の記憶……それが、先ほど抜けたと
 いうことはだな……」
抜刀準備しながら慶応けいおうは叫ぶ
慶応けいおう「挑戦のしすぎでゆるくなっていたのか……もっ!?」
ぐぐぐぐぐぐっ……
しかし、いくら力を入れたところで抜けやしない
慶応けいおう「ふぬっ!」
ぎぎぎぎぎぎぎっ
歯を食いしばっても……抜けないものは抜けない
慶応けいおう「はぁ……はぁ……」
諦めて、再びかんなに渡すと……かんなの場合、いとも簡単に抜刀してみせる
與鷹よたか「……つまり、かんなにしか抜けない……?いや、違うな……炎の記憶がかんなを選んだ……そう
 言うことなのか!?」
いさむ「……うむ、俄かには信じられぬが……相手は神刀でござる……そのような出来事があっても不思議
 ではないかもしれぬでござる」
慶応けいおう「……ハハハハ……そうか……そうかい……炎の記憶は……ここでずっとお前さんが来るのを
 待っていたってことか……」
ガックリと項垂れる慶応けいおう
かんな「あの……慶応けいおうさん……?」
慶応けいおう「……いいさ……持っていけ……毎年、無償で手伝ってくれたお礼だ……」
いさむ慶応けいおう殿……よろしいのでござるか!?」
慶応けいおう「その方が……炎の記憶のためにもなるであろう……」
いさむ「然らば……」
と、言うわけで、炎の記憶を入手したかんな……
それにしても、なぜかんなが!?……そして、何かに操られたかの如く炎の記憶を手にしたアレは……
何だったのか……と與鷹よたか暫し考える……
・
・・
・・・
その後、奉刃宮ほうじんぐうを出る一行……と、何やら邪悪な気配を感じる
與鷹よたか「……なっ!?あれは!」
見ると、封刃宮ふうじんぐうが解放されている
慶応けいおう「馬鹿な!?」
すぐさま駆けつけてみると……封刃宮ふうじんぐう……その中にある危険な妖刀は全てたたき折られていた
いさむ「こ……これは……いかに妖刀とは言え、酷い……」
慶応けいおう「……い、一体……何が起きた!?」
與鷹よたか「……足跡が……ないか?」
與鷹よたか封刃宮ふうじんぐうの床を見ながら語る
慶応けいおう「むっ!?」
一見分からないが、封刃宮ふうじんぐうの床に無数の踏み散らされた足跡が……
慶応けいおう「まさか……誰かが封を破り……この中に!?」
しかし、そんな自殺行為を……それに、どこにも死体はない……と考える慶応けいおう
いさむ「……ならば、その御仁はこの場で、妖刀の中の妖刀を得た……と、いうことでござるか!?」
慶応けいおう「なっ……にぃ!?」
だが、知らない場所で起きたこの事件……迷宮入りしざるを得なかった……という。
ちなみに、後日、慶応けいおうは再び封刃宮ふうじんぐうを封印しなおしたのだが……それはまぁ、今回の物語には重要なことでは
ないので割愛……


END

前の話へ 戻る 次の話へ