Eighter -Chaos Desorder-
5ther 〜仇は何処いずこに居るか B〜



#4
ギリギリッとそのまましのぎを削る折衝が続き……
地田もとより「ハッ!」
バッ
鋼砕こうさいを捌くと同時に距離を置き、納刀するもとより
もとより「おおっ!虎龍鳳こりゅうほう!」
ゴギュオアッ
抜刀術に追撃で斬撃、更に刺突と3連撃を繰り出すもとより
某敢それがし・いさむ「ぬぅん!」
ギャギャッ
それを一度に二度の抜き打ちを行う朱雀鳳陣すざくおおとりじんにて応戦するいさむ
※ちなみに、いさむのときだけ、後でとってつけたかのように技名の説明があるのは……いさむは基本、技名を
 叫ばないからです。(……いや、まぁ、技名を叫びながら斬りかかるのが普通じゃないんですけど……)
ザダダンッ
再び距離を置き、対峙する両雄
いさむ「……剣の腕を上げたようでござるな……もとより殿……」
もとより「当然だ!我は……今までずっと師匠の仇を討つべく修行に励んできた!!」
チキッ
刀を構え直すもとより
いさむ(……しかし、もとより殿……御主は怒りに任せて刀をふるっておる……故に……本当のことが見えておらぬ
 でござるよ……)
ジキッ
いさむ(やむを得ぬでござる……颶風雷鳴陣ぐふうらいめいじんにて……終わらせるでござるよ……)
いさむもまた、刀を構え直し、雑念を振り払う
いさむ某敢それがし・いさむ……参るッ!!」
ダッ
一足飛びにかかるいさむ
もとより「終わりだぁ!いさむぅ!!煉風幻影陣れんぷうげんえいじん!!!」
ズドガギギンッ
刹那の瞬間に上下左右からいさむを斬りつける。
いさむ「キエイッ!」
……しかし、もとよりの奥義よりも早く、そして、広く、いさむの奥義が……剣を振るう事により生じた真空波が
もとよりを……いや、正確にはもとよりの持つー砕がんさいを弾き飛ばす
もとより「はっ!?」
キュラキュラキュラキュラ……ザスッ
ジキッ
もとより「くっ!?」
そして、刃を突き付けるいさむ……流石に覚悟を決めたもとよりは眼を瞑るのであった……

#5
もとより「……?」
……いくら待っても終焉の時は訪れず……眼を開けると……眼前で納刀しているいさむの姿が……
いさむ「……もとより殿……拙者の話を聞いてくだされ……」
もとより「誰……」
そのとき、もとよりは見た……いさむにダブって見える……師匠の幻影を……
もとより「し……師匠!!?」
かくて、いさむは……事の発端であった園児殺害の件について語る
もとより「……それは……分かった……と、しよう……だが……」
いさむもとより殿……もうひとつ聞いて欲しいことがござる……師匠は……13代剣聖丈太郎殿が、拙者に鋼砕こうさいを
 渡したのではござらん。拙者がもとより殿にー砕がんさいを賜るように頼んだのでござる」
もとより「なっ!?」
ここで暴かれる事実……しかし、納得できない……
もとより「……な……なぜだ!?いさむ……」
いさむ「拙者は刀に頼らず剣の道を進むと決めたでござる……確かに、ー砕がんさいはよき刀でござる……しかし、
 刀に頼ることで奢りができる……故に、拙者は鋼砕こうさいを選んだでござる……」
※ちなみに、余談ですが、ー砕がんさい青生生魂アボイタカラで、鋼砕こうさい緋々色金ヒヒロカネで作られた刀だそうです。
 ……いや、本当余談ですね……
もとより「くっ……ならば……」
そのとき、いさむにダブって見えた13代剣聖丈太郎が語る
剣聖丈太郎(……お前は……いさむの剣に何を見た!?……)
もとより(それ……は……)
丈太郎(哀しみだ……いさむは……誰よりも人の命を殺める哀しみを知っておる……だから……その剣気、
 剣圧にも自ずと哀しみが現れる……)
……誰よりも人を斬り殺すことを躊躇う侍……いさむ……そんな漢に師匠を殺すことなど出来ようか!?
いや、出来やしまい……
もとより「……ならば……」
たたっ
と、そこへ、死合を終えたということで、かんなと與鷹よたかが駆けつける。與鷹よたかは勿論、弾き飛ばされたー砕がんさいを
手に……
いさむもとより殿……拙者も、師匠を殺した犯人を追っているでござる……もしよければ……」
もとより「……だが……それは……出来ぬ!」
與鷹よたかからー砕がんさいを受け取り、納刀したもとよりは頑なに拒絶する
いさむ「何故……でござるか?」
もとより「我は……今、とある組織の末席に名を連ねている……故に……我の勝手な一存で、他の組織と組む
 など出来ぬ……」
いさむ「左様でござるか」
もとより「ああ」
くるり……
そして、もとよりきびすを返し、いさむの元を去る
いさむもとより殿……」
もとより「……いさむ……鍛え直して……もう一度お主と手合わせ願いたい……」
いさむ「是非に……でござるよ……」
そして、もとよりいさむの元を去り、己が組織へと戻った……
梓與鷹よたか「……師匠殺しか……」
いさむ「……それだけではござらぬ……師匠を殺した輩は……我らが流派、みたび明鏡止水流の秘伝書を奪って
 いったでござるよ……」
與鷹よたか「……なるほどねぇ……」
與鷹よたかもまた、去りゆくもとよりを見る……
白拍子かんな「……」
だが……このときはまだ、知る由も無かった……この……もとよりとの再会……それこそが、もとよりとの最後の
出合いであったなどと……
後日……もとよりは師匠を殺した犯人に辿り着き……そして、仇を討つべく挑むのだが……無残にも散る……
だが、それはまた……別の話である……
※あ、でも、かんなだけは持ち前の超運でもとよりが死ぬことを知っている……かもしれません。う〜〜ん、
 公表しないのは……なかなか罪な女ですぜ……かんな……


END

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