Eighter -Chaos Desorder-
5ther 〜仇は何処いずこに居るか A〜



#0
それは、ある依頼の帰り道で起こった事件……それは、ある侍と……その仇の物語……そして、それは
……とてもかなしい侍の物語……

#1
天四斗あまよと、某所
某敢それがし・いさむ「……」
……その、うらぶれた庵に、いさむはいた……
いさむ「……ん……」
懐紙を口に含み、真剣な面持ちで自分の愛刀の手入れを行ういさむ……
その刀……なかごに銘は無く……所謂『無銘』の刀ではあるが……長らくいさむと共に歩んできたため、並の銘刀
を凌ぐ輝きを放っている
いさむ「……鋼砕こうさい……」
いさむが呟いたそれは、その刀の号……柄尻にもしっかりと刻まれている。
いさむ「……済まぬ……」
……刀に詫びるいさむ……それは……先日の……兵器とはいえ、園児を両断したことに対する悔いか……
・
・・
・・・
ここは、いさむにとって特別な場所……静かでいて……厳か……このような場所だからこそ、いさむはここで刀の
手入れを行っている……刀の手入れはこの様な場所で行うべきだと、いさむがこの場所を買い取ったのだ……
※え!?いさむにそんな大金が!?……Eighterにて依頼の報酬をこつこつと貯め込んでいたのでしょうか?
 う〜〜ん、非常に気になるところでもありますが、本編とは何の関連も無いので不問の方向で行きたいと
 思います。
いさむ「……師匠……」
刀身を手に……いさむは思う……
いさむ「……うむ」
パチリ……
十分に刀身の手入れを行った後、いさむは柄に刀身を納め、目釘を打ち、鞘に納める
……そして、いさむはその場所を後にするのであった……

#2
後日……
天四斗あまよと、某所
梓與鷹よたか「とりあえず、今回の依頼は比較的簡単だったな……」
白拍子かんな「そうですね……」
いさむ「……む……う……」
與鷹よたか、かんなといさむと共に天四斗あまよとの街を歩く……いさむは、まだ、園児型兵器のことを気に病んでいるのか上の空
である……
與鷹よたか「……ん?」
と、その時、與鷹よたか、自分たちの前方にいる侍に気がつく
いさむ與鷹よたか殿……どうしたでごさるか?」
與鷹よたか「……いさむ……あそこにいる侍は……もしかして、お前の知り合いか何かか?」
いさむ「むぅ?」
と、視線の先には……茶色い短髪の……緑色の袴を身に付けた侍が1人……いさむを睨んでいる
いさむ「おお、もとより殿ではないか……久しぶりでござるよ……」
侍の名は……地田もとより……いさむと同じ師匠の元剣を学んだ弟子である。
旧友との再会の喜びに……いさむは足取り軽やかにもとよりの元へ……
與鷹よたか「待て!いさむ!さがれ!!」
ズラッ
いさむ「なっ!?」
地田もとより「見つけたぞ!師匠の仇ぃ!!」
抜刀し、刀を突き付けるもとより與鷹よたかの静止があと少しでも遅かったら……手傷を負っていたかもしれん……
いさむもとより殿……何を……言っているでござる!?」
もとより「惚けるな!我は見たり……貴様が顔色一つ変えずに園児を瞬断する様を……」
いさむ「あれは……」
だが、斬ったことは事実……弁解しようにも……と考えあぐねていると……もとよりが続ける
もとより「……そうやって……貴様は……我が師匠を殺め、秘伝書を奪ったのだろう!」
いさむ「それは違うでござる!!」
もとより「黙れぇい!」
ガキンッ
そして、斬りかかるもとより……いさむもすかさず抜刀し、応戦する
もとより「知っているぞ……我の持つー砕がんさい……貴殿の持つ鋼砕こうさいと兄弟刀。……なれど……我の持つ
 ー砕がんさいの方が格上の出来。貴様は……自分が格下の刀を与えられたからと……師匠を殺した!」
いさむ「違うでござる!もとより殿……拙者の話を聞くでござる……」
もとより「裏切り者の貴様の言葉に誰が耳を貸すかッ!」
ガアアッ
そのまま刀を捌き、刀を上段に構えるもとより
もとより龍牙斬りゅうがざん!」
ザムッ
そのまま一気にいさむ目がけて斬りおろしを繰り出すもとより……

#3
ザッ
いさむ「はっ!」
ボッ
もとより「ぬっ!?」
ザザザッ
もとよりの斬撃を半身ずらして回避すると同時にそのまま反動をつけて片手平刺突を繰り出すいさむ。
だが、すぐさま後退し、それを回避するもとより
もとより「……突虎衝とつこしょう……みたび明鏡止水流……基本の刺突……」
いさむもとより殿……どうか刃を納め、拙者の話を聞くでござるよ……」
もとより「黙れ!」
どうにか話し合いで解決に導きたいいさむだが……奴さんは聞く耳持たず……なれば……多少強引な手を使って
でも動きを止めるしかない……のか……
いさむ「くっ……」
いさむが逡巡しているその隙を逃さないもとよりは次の行動に移る
もとより「ハッ!投龍斬とうりゅうざん!」
ブウンッ
持っていたー砕がんさいいさむ目がけて投げつける。それは、ブーメランの如く、いさむを狙い……
いさむ「くっ……でぇい!」
キャギインッ
いさむいさむで基本の抜刀術たる天鳳閃てんほうせん……抜刀の刃風でー砕がんさいの軌道をそらす
パシッ帰ってきたー砕がんさいを手に取るもとより
もとより(クッ……流石はいさむ……剣腕は我より上手か……だがっ……それでも……師匠の仇は討たねば
 ならぬ!!)
もとよりいさむぅう!!!」
ダッ
刀を上段に構え、一足飛びにかかるもとより
いさむ「くっ……キィエエエエ!」
ガキィイイインッ
対するいさむも一足飛びにかかり、刀を受ける
もとより「ぬううぅうううう……」
いさむ「くっ……」
技量、膂力共にいさむの方が上なのだが、負い目を感じるいさむは……もとよりに圧される……
果たして……この死合……どう転がるのか!?


続

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