Eighter -Blindness Wizard-
59ther 〜黒の果て(デミウルゴス)舞踊(ダンス)を B〜



#3
デミウルゴス「あ〜〜、これはちょっと本気を出さないと、厳しいわね」
 平安を(もたら)す鳳凰を白と赤のコンビネーションで相殺したのち、すぐさま距離を置くデミウルゴス
梓與鷹(よたか)「なっ、まさかまだ本気を出していなかったとでも!?」
デミウルゴス「でも、それはそちらも同じでしょう?」
與鷹(よたか)「……」
 確かに、それもそうだ……
デミウルゴス「じゃあ、ちょっと待ってくれないかしら?」
白拍子かんな「いいですよ?」
白拍子かれん「ちょ、そこは間髪入れずに奥義を叩き込むところでしょうが!」
一同「お前な……」
 それは外道のすることだ。
デミウルゴス「はいっと」
 パチンッ
 指を鳴らすと七罪塔(しちざいとう)が闇に包まれる。
與鷹(よたか)「なっ、んだとッ!?」
 暫くして闇が晴れると、何ということでしょう!七人だからこそ七罪塔(しちざいとう)だったのに、今や九人に増えている。
デミウルゴス「クスクスクス……では改めて紹介するわね?あれが七罪塔(しちざいとう)の本来の姿、枢要九貴(すうようきゅうき)よ?」
一同「枢要九貴(すうようきゅうき)?!」
 七罪塔(しちざいとう)より増えたのは《虚飾(バインロリ)》・ベリアルと《憂鬱(サドネス)》・アスタロスだ。
※ちなみに、《虚飾(バインロリ)》は《嫉妬(エンヴィー)》より分離し、《憂鬱(サドネス)》は《強欲(グリード)》より分離した存在だ。
かんな「では、私も全力でお相手しますよ?」
 コオオオッ
 神々しくかんなの額に輝くは茜瑙哭(セドナ)の紋章。さらに神滅超越者(ラグナロクエクセル)の刃も五尺の長さに伸びる。
 これがかんなの全力全壊だ!
※いや、全力全壊て……
かんな「龍鳳麟龜(りゅうほうりんき)!」
 ゴガガガガッ
デミウルゴス「九罪天襲(くざいてんしゅう)!」
 ドムッ
 応龍(おうりゅう)に変幻する光の龍、平安を(もたら)す応報、信念を貫く麒麟、吉兆を占う霊龜(れいき)がデミウルゴスに迫るも、デミウル
ゴスも枢要九貴(すうようきゅうき)の力を一度に結集させてそれに抗う。
デミウルゴス(あっ、これは……無理ッ!)
 そして、勝利の軍配はかんなに上がった。

デミウルゴス「……そう、これがあなたの力、そして覚悟なのね……」
 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられているデミウルゴス。
 まさか、デミウルゴスが敗北を喫するなんて……と驚愕が覚めぬまま、枢要九貴(すうようきゅうき)はデミウルゴスへと駆け寄る
総介「フッ、勝負ありだ!」
デミウルゴス「いいわ、あなた方の望むとおりに、今後は互いに不可侵としましょう……」
 敗北は甘んじて受け入れる。

#4
デミウルゴス「では、《キツネザルの使途》の皆様、ごきげんよう」
 ぺこりとお辞儀をするや否やデミウルゴスと枢要九貴(すうようきゅうき)は自らの影に飲まれその場から消えゆく。
総介「サイレントウィザードは壊滅した、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)もこれ以上人を不要にに殺さなくなった。これ以上の
成果はあるまい」
白拍子かなり「終わりよければすべてよしってことね。オ〜〜ッホッホッホッ!」
かれん「いや、終わりがよかったのかって言われたら微妙……あ痛ッ」
 かれんの不用意な発言を見逃すはずもなく、かなりにドつかれるのであった。
エスティリオ・アリーフ・ザンスパイン「……ええと」
ファルゼシア「う、う〜〜ん。これでよかったのでしょうか?!」
 なんとも微妙な気持ちではあるが、こうして、一連の事件は終わった。

山咲(やまざき)桜「こちらの三人は、死んではいないようですね……」
 ラキエル、ドキエル、バーニーヤの歩み寄って桜がその安否を確認する。
 敵ではあったが、死んでなかったという知らせを聞いて少しほっとする與鷹(よたか)化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「なんだよ、もう終わっちまったのかよ……」
與鷹(よたか)「おっ、お前、大丈夫なのか!?」
 そこへ、安静にしていたはずの梶太郎(かぢだろう)がやってくる。見た限りでは元気そうに見える。
梶太郎(かぢだろう)「おうよ!この俺を誰だと思っていやがる!」
ウェル(あ〜、うん。そね……)
 脳内に響くウェルの声がウゼぇがと、心の中で叫ぶ。
 けれども、梶太郎(かぢだろう)は今やこの中で誰よりも上機嫌であった。なぜならば與鷹(よたか)と同じく魔術師として覚醒できたか
らである。
 拳法家であり、魔術師でもある。つまり、與鷹(よたか)と同じ土俵に立てたのだから、この調子でいけば、與鷹(よたか)を斃せる
日も近いなどと捕らぬ狸の皮算用までしている。
※世の中そんなに甘くはないと思います。
総介「……帰るか」
エスティリオ「待つであ〜る!」
 サイレントウィザードとの決戦も終わった。デミウルゴスとの死合も終わった。あとは帰るのみと……かに思わ
れたその時、エスティリオが止めに入る。

#5
エスティリオ「ワガハイ、やりのこしたことがひとつ」
與鷹(よたか)「なんだ?亡き前大導師(グランドマスター)の墓前に花でも添えるのか?」
エスティリオ「そう……って違うのであ〜る!」
 思わずノリ突っ込みしてしまうエスティリオであった。
エスティリオ「借りを返しておきたいヤツがいるのであ〜る」
かれん「借り!?」
 そして、エスティリオが向かう先は……地下牢であった。
 獄中に繋がれているのはエランドラとその配下、フキエル。かつてエスティリオがここから脱出する際に何をト
チ狂ったか離反してエスティリオに加勢してくれた物好きである。
フキエル「お、お前ら……どうしてここに!?」
エランドラ「ははぁ、ってぇことは、全て終わったってことか?」
エスティリオ「もはやサイレントウィザードは壊滅であ〜る」
フキエル「なっ、馬鹿なッ!?」
総介「これに懲りたらもう二度と域外神(アウターゴッド)召喚などと考えないことだな!」
 いや、お前が阻止したわけじゃないだろ!とは突っ込んではいけない。
エランドラ「ハッ!そんなことを告げるためにわざわざここへ来たってのかよ、物好きだな」
エスティリオ「いや、あの時、ワガハイを助けてくれた借りを返しにきただけであるよ」
 そして、エスティリオはエランドラ、フキエルを獄中から解き放つ。
エランドラ「そうかい、そいつはありがとうと言っておくぜ!」
 ついでに同じく違う場所にて封じられていたセラ、ナナとも引き合わせる。
 これで今度こそこの場所でやることは終わった。一行はEighter本部へと戻るのであった。

 それから、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)は人を殺すほどに天命(ネフェシュ)を奪わなくなった。
 生かさず殺さず。それが場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)にとって最上の策だと言わんばかりに……


第五部・FIN

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