Eighter -Blindness Wizard-
58ther 〜滅焉する魔術師達(ルーインウィザード) C〜



#5
偉大なるL(グレーテル)「さっきから一体何を言っているんだ!?……Hなる天使(ヘンゼル)?」
Hなる天使(ヘンゼル)「違うわ。私はHなる天使(ヘンゼル)ではない!……私はデミウルゴスよ!」
 そう、それが場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)、最上位存在の名だ。
 ぎゅるるん
 Hなる天使(ヘンゼル)、改め、デミウルゴスがそう名乗ると同時に、彼女が闇に包まれる。
 そして、闇が晴れるとそこには鞭のようなモノが生えたガントレットを左手にはめた少女がいた。これがデミウ
ルゴスの本来の姿だ。
ベルゼビュート、レヴィアタン、シャイターン、ルシュファー「あ〜〜、疲れた」
 ゴキゴキと肩を鳴らしつつ《暴食(グラトニー)》、《嫉妬(エンヴィー)》、《憤怒(ラース)》、《自尊(プライド)》が自由に動き出す。
ラキエル、ドキエル、バーニーヤ「なっ、ななな!?」
偉大なるL(グレーテル)「なっ、馬鹿な!?奴らは完全に支配下に置かれていたはず……」
デミウルゴス「何を言っているのかしら?」
(かみ)総介「なるほどな、最初から支配下に置かれていたわけではなかったというわけか」
梓與鷹(よたか)「どういう……」
山咲(やまざき)桜「七元徳(ななげんとく)というのは、まやかしに過ぎなかったということですね」
デミウルゴス「クスクスクスクス……」
ルシュファー「お前たちが七元徳(ななげんとく)と呼んだ代物……」
シャイターン「アレにはデミウルゴス様からのメッセージが入っていたにすぎないのさ」
ベルゼビュート「そして僕たちはそれに従ったまでさ……」
レヴィアタン「人間(パーツ)如きがあまりいい気になるなよ!」
偉大なるL(グレーテル)「そんな……馬鹿な!?」
 これまで信じてきたものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
 目の前が真っ暗になるような感覚が偉大なるL(グレーテル)を襲う。
総介「フッ、もはやサイレントウィザードもおしまいだな……」
偉大なるL(グレーテル)巫山戯(ふざけ)るなッ!俺は認めんッ!」
 叫ぶと同時にデミウルゴスに襲い掛かる偉大なるL(グレーテル)。それを現存する七罪塔(しちざいとう)が止めにかかるが、しかし、デミウ
ルゴスがそれを止める。
 デミウルゴスが手助け不要と言うのならば、その命令は絶対なのだ
偉大なるL(グレーテル)影に眠れ這刃(シャッテン・シュラーフェン)!」
 ばしゅんっ
 地面を這うような闇の剣閃が迫るも、それを軽々と受け止めて見せるデミウルゴス
デミウルゴス「馬鹿ねぇ……魔術を封じる結界を誰が作ったと思っているのかしら?」
 そして、掴まれたその先から魔術が掻き消されていく。

#6
デミウルゴス「もうあなたには用はないのよ」
偉大なるL(グレーテル)「カハッ!?」
 場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の最上位存在であれば、ただその場にいるだけで天命(ネフェシュ)を食らいつくせる。
 デミウルゴスの傍にいたがために、偉大なるL(グレーテル)天命(ネフェシュ)を食らいつくされれ絶命した。それはもう、呆気ない事切
れ方であった。
與鷹(よたか)「チッ、状況は何一つ好転してねぇ……」
 寧ろサイレントウィザードより厄介なことになった……
 アレが七罪塔(しちざいとう)よりも上の存在であるならば、激戦は必至。思わず與鷹(よたか)は天狼甲ショロトルを装備して身構える。
ラキエル、ドキエル、バーニーヤ「うっ!?」
 ドタリバタリ
 更に七罪塔(しちざいとう)の近くにいた三人が突如ぶっ倒れる。
 偉大なるL(グレーテル)と同様に天命(ネフェシュ)を奪われたがためだろう。
※だが、偉大なるL(グレーテル)とは違って絶命はしていない模様。
エスティリオ・アリーフ・ザンスパイン「……だ、だが、何を恐れているであ〜るか……」
 敵は五人。こちらにはそれ以上の人員がいるならば、勝てなくとも負けることはないだろうと
ファルゼシア「本当にそう思う?」
エスティリオ「……そ、そんなことを言われると、自信がなくなってくるのであ〜る」
與鷹(よたか)「をいをい……」
デミウルゴス「数で勝っているなんて思い上がりも甚だしいことこの上ないわね」
 パチリと指を鳴らすとビュート、サタン、レヴィア、ルキの間の三つに突如闇が渦巻く。
一同「なっ、なんだと!?」
 その三つの闇はすぐさま少年少女の姿をとる。
 そして、現れたるは、かつて撃滅したはずのアスモデウス、ベルフェゴール、アマイモンであった。
白拍子かれん「うっそでしょ、七罪塔(しちざいとう)が完全復活するなんて……」
デミウルゴス「クスクスクスクス……人がこの世のあり続ける限り、我らもまた不滅なのよ……」
総介「人が絶滅しない限り、七罪塔(しちざいとう)を滅ぼすことは不可能ということか……」
一同「ンなッ!?」
 それは衝撃の事実であった。
 しかし、七罪塔(しちざいとう)が司るは七つの大罪……それは人間の誰しもが持つ原罪であるならば、それもまた道理であると
言えよう。
※あるいは、人類がみな(けい)みたいに七つの大罪すら自分の意思で切り捨てられる、最早ソレを人間と呼べるかどう
 かも怪しい存在になれば、七罪塔(しちざいとう)の根絶も可能かもしれない。

#7
與鷹(よたか)(クッ、総、どうする!?)
 七罪塔(しちざいとう)とデミウルゴス……それに対してこちらはかんな、かれん、かなり、萌、(けい)、エスティリオ、総介、與鷹(よたか)
……数の上では互角だろうが、総力戦を行っても勝てるかどうかは怪しいところだ。
 魔術を封じる結界がデミウルゴスの手によって齎されたことを鑑みると、エスティリオは戦力外になる可能性が
高い。
 おまけにここはサイレントウィザードの総本山、総介をピンポイントで封殺するアーティファクトだってあるだ
ろう。
 そう考えたとき、こちらが勝利することは不可能ではないだろうが、かなり厳しい戦いを強いられることになる
だろう。
桜(警部……)
 桜も不安げな表情で総介を見つめる。
総介(フム、さて、どうしたものか……)
 だが、総介はそんなことを考えつつも、既に自分の中での考えはまとまっているようだった。
 果たして、それは一体何なのか!?
 それは、この状況を打開できる一手となりうるのだろうか?!


END

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