Eighter -Blindness Wizard-
56ther 〜激突する魔術師達(クラッシャーウィザード) D〜



#7
 サイレントウィザード VS Eighter一行。
 かれんがウェステリアと死合っているのと同時刻、(けい)はネサリウスと対峙していた。
天然蛍(あましか・けい)「そこをどいてくれるとありがたいんだけど」
ネサリウス「それはできない相談だな……」
突込魁(とつこみ・かい)「いや、明らかに話し合いで解決できる雰囲気じゃないでしょうが!」
 スパコ〜ンとどこからともなくハリセンを取り出し(けい)に突っ込みを入れる(かい)
(けい)「え〜〜、ほら、話し合いで解決できるのならそれに越したことはないじゃん?」
(かい)「無理がある!」
 そもそも最終決戦のためにここに来たのだから、今更話し合いで解決なんてできないのだ
ネサリウス(どこからハリセンを!?……まさか奴も魔術師か!?)
※いや、ハリセンを召喚する魔術ってなんだよ……
(けい)「え〜〜」
(かい)「え〜、じゃないッ」
(けい)「じゃ、び〜」
(かい)「こんのまぬ(けい)」
 スパコ〜〜ンと再びハリセンが炸裂するのであった
ネサリウス「夫婦漫才なら他所でやってくれないかな」
(かい)「だだだっ、誰が夫婦よッ!」
 若干顔を赧めながら(かい)が突っ込む。あんまりキレがないのは気のせいか!?
(けい)「まぁ、いいや……(かい)は危ないから離れて」
(かい)「……」
 なんか釈然としないものの、この場では(かい)は戦力外であることも(かい)自身は把握していた。そのため、大人しく(けい)
の言葉に従い死合を見守ることにする

(けい)「お待たせ……じゃ、始めよっか?……火龍双刃(かりゅうそうじん)……其の右に纏いしは紅き炎爪……燃ゆる紅蓮の(かいな)……夢炎の
刃、真・炎双刃」
 ボボボボボッ
 見る者を魅了するかの如く美しい深紅の炎が(けい)を包み込み、そして、彼の右手には炎が集いて刃と成す
ネサリウス(こ、これは!?)
 ネサリウスが得意とする召喚呪術はヤークシュ。その属性は氷だ!つまり、炎属性の(けい)とは絶望的に相性が悪い
のだ。
 これはもう消化試合待ったなしか!?
ネサリウス(炎使いが相手だと流石に分が悪い……しかし、文句を言っていられる場合でもないな……)
 しかし、ネサリウスは情報収集第一。(けい)を見極めればあるいは、もしかしたら逆転の眼があるかもしれない
ルル「イエス、マスター」
 そんな主の思いを汲んでか、ルルも覚悟を決める

#8
ネサリウス「……」
(けい)「……」
 そして、暫く無言のまま時間が経過する
(かい)(どういう?さっきから二人とも動かないけれど……)
 ぼけ〜〜っとしている(けい)と観察第一主義のネサリウス。
 静かに膠着が続く中、先に動いたのは(けい)だった
(けい)「ねぇ、仕掛けてこないの?」
ネサリウス「お先にどうぞ……」
(けい)「あ、そう……じゃ、行くよ。紅龍炎舞(こうりゅうえんぶ)!」
 ドドドドッ
ネサリウス「滑空する氷輪(ゲフリーレン・グライテン)!」
 リング状の氷の刃を飛ばして迫る四匹の深紅の炎の龍を斬り裂こうとするも、いとも簡単に溶かされてしまう
ネサリウス「チッ、赤の絶壁(レッドクリフ)」
 氷の刃で幾分か威力が削がれたところを魔導障壁で防いでみせるネサリウス
(けい)「へぇ、やるね……じゃあ、次はこれ、行ってみよう!蒼鳳炎舞(そうほうえんぶ)!」
ネサリウス「氷河で騒乱せし猫の九尾(グレッチャー・レルム・カッツェ)赤の絶壁(レッドクリフ)!」
 ズドドムッ
 青き炎の鳳が四匹、ネサリウスに迫るも、これを氷でできた猫のような魔獣を解き放って迎撃。威力を削いでか
らまたしても魔導障壁で防ぐという先ほどと変わらぬ攻防だ
(けい)「じゃあ、次、これ!黒炎虎舞(こくえんこぶ)!」
ネサリウス「ならばッ!吹雪く悲鳴に山猫と輪刃廻舞(ゲシュテーバー・ゲシュライ・ルクス)!」
 黒き炎で虎を作り、爪と牙によってネサリウスを叩き潰しにかかる(けい)。そして、これまでで大体(けい)の戦力を把握
できたと考えたネサリウスは左手にも魔形刀(マナヒョンド)でヤークシュを使い、一気に片を付けにかかる
 禍々しい冷気を纏った山猫を放って(けい)とその周辺を氷結させ、破砕させる
(けい)「あっ!?」
 バキバキバキッ、ガシャアアンンッ
(かい)「ああっ、(けい)ぃい!」
 氷漬けになって砕け散る(けい)を見て、思わず(かい)が悲痛な叫びをあげる
ネサリウス「はぁ、はぁ……流石にこれを使うのはキツい……」
(けい)「いや〜、流石にさっきのは危なかったね〜」
ネサリウス「なっ、なななっ、ば、馬鹿な!?」
 その直後、背後より声がする。恐る恐る振り向いて見るとそこには欠伸を噛み殺している(けい)の姿があった。
 しかも無傷だ。(かい)も思わず安どの表情を浮かべつつその場にぺたんと座り込む。
ネサリウス(馬鹿なっ、奴は一体何をした!?さっきの一撃は確実に奴を……)

#9
(けい)「う〜〜ん、どうにもまだ火力が足りないみたい……炎黒鎧爪(えんこくがいそう)!」
 カックンと首が折れたかのように傾げつつも、黒き炎を纏って更にパワーアップを図る(けい)
ネサリウス「馬鹿なっ、まだ全力ではなかったとでも!?」
(けい)「其の左に纏いしは蒼き炎爪……燃ゆる群青の(かいな)……夢炎の刃、真・炎双刃」
 ゴゴゴゴゴッ
 更に青き炎を集めて真・炎双刃をもう一本作り上げる。
ネサリウス(なんだ、このパワーは……ありえん、人間にこのような力……)
 思わず後退るネサリウス
(けい)「じゃあ、いくよ……死なないでね?炎水之極(えんすいのきわみ)夢刃冽火(むじんれっか)!」
 水と炎を螺旋の様に絡まり巨大な刃となってネサリウスに襲い掛かる
ネサリウス「くっ」
 ドロリッ
 咄嗟に氷河で騒乱せし猫の九尾(グレッチャー・レルム・カッツェ)吹雪く悲鳴に山猫と輪刃廻舞(ゲシュテーバー・ゲシュライ・ルクス)の連撃を放って威力を削ごうとするも、左右の氷
の爪が融解していく
ネサリウス「なっ、馬鹿な!?赤の絶壁(レッドクリフ)!」
 ドジュオッ
 だが、今はあたふたしてる場合ではない。すぐさま魔導障壁を展開し(けい)の凶刃を防ごうとするも、まるでバター
を切り裂くかのように容易く切り裂かれる
ネサリウス「う、うおおお!?」
 ネサリウスが意識を手放す直前、彼は(けい)の背後に二柱の炎の神性を見た気がした
ネサリウス(アレが相手では……勝てないのは、道理……)
 かくて、ネサリウスも(けい)の前に沈むのであった。


END

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