Eighter -Blindness Wizard-
47ther 〜憎悪燃ゆ憤怒の花 B〜



#3
冥時(みょうじ)萌「アアアアアッ」
 怒りに任せて刀を振るう萌。それはもはや、他人ではなく、剣鬼だ
某敢(それがし・いさむ)「くっ……ぬっ……」
 ザガガガガッ
 一撃でも食らえば一瞬で消し飛ぶほどの威力の斬撃をいなして受け流す(いさむ)。
伊達宗美(むねみ)「おぉ、凄いな……」
 (いさむ)の動きに思わず感嘆の声を漏らす宗美(むねみ)。
柳生衞琉(えいる)「これが剣聖の実力か……」
柳生兵子(ひょうこ)「……ですが、そう長くは続きません」
一同「え!?」
 兵子(ひょうこ)のお告げめいた呟きに驚きを隠せない一行
直江万夏(まなつ)「そうは見えないけどなぁ……」
 だが、(いさむ)が萌の剣撃を躱し続けられるのは、今の萌の剣に技量が全くないためである。
 ただ、怒りに任せて剣を振るう萌など、(いさむ)には恐るるに足らない存在なのだ。
(いさむ)(しかし、この状況をいつまでも続けられるわけでもござらん……)
 萌の怒りを鎮めるには、どうすればいいか……そもそも、なぜ萌はこれほどまでに怒り狂っているのか、死合い
の最中でも(いさむ)はそれを模索していた。
シャイターン「何をやってるんだろうねぇ、あいつは……」
 そして、そんな二人の死合を観察してため息をついているのはサタンだ。
シャイターン「まさか、元に戻せる術がないか探っているとでも!?」
 実に馬鹿らしい……そんなもの存在しないのに……とサタンは独り言ち
※だから、(けい)衞琉(えいる)(かい)と例外が今までに何人かいたんですが、忘れているわけではあるまい
シャイターン「これ以上つまらないことを続けるのなら、そろそろ死んでもらおうかな……」
 パチンと指を鳴らす。
萌「ウオオオオオッ」
 と、同時に萌が咆哮を上げる。
(いさむ)(こ、これは!?)
 そして、萌の動きが変わった。今までの獣性を前に出した剣鬼から、何者かに操られるがままに動く傀儡へと
(いさむ)「くっ……ぐっ……」
 四本の刀に対して、(いさむ)が繰るのは一本の刀のみ。
 多勢に無勢であれば、たちまち不利になるのは火を見るよりも明らかだ。
 ズドンッ
(いさむ)「ぐう!?」
 萌の四刀一閃(いや、四閃?)が(いさむ)を吹き飛ばす。
 壁に激突した(いさむ)はそのまま意識を失う
宗美(むねみ)「嘘だろぉ!?」
 まさか(いさむ)が負けるとは思っていなかった宗美(むねみ)。
 しかし、それ以上に驚いたものがいた。サタンである
シャイターン「殺してない……だと!?」
 サタンの傀儡となった萌が(いさむ)に手心を加えたということがサタンにしてみれば理解できなかった

#4
シャイターン「馬鹿な……奴は僕の完全なる傀儡……そして、僕の命令は絶対だ!」
 だから、今の一撃で(いさむ)はバラバラに切り刻まれて死んだはずなのだ……
 にも関わらず(いさむ)は死んでいない。
シャイターン「そんなこと、ありえない……」
 意のままに動くか試しに萌を動かしてみると、シームレスに萌はサタンの意のままに動いた
シャイターン「……偶然?!」
 あるいは、サタンの想定を超えた動きを(いさむ)がしたのか……

萌「……」
 そして、(いさむ)をノした萌が次にターゲットにするのは(かく)眼同盟の面々である
宗美(むねみ)「やっぱ、そうなるよね……」
万夏(まなつ)「どど、どうするのよ!?」
前田松子(しょうこ)「覚悟を決めて死合うしかないと思いますが?」
 逃げるという選択肢はない。と、いうか、今の萌を相手に逃げ切れる自信がない。
島友近(ゆこん)「ですが、こちらは多勢、あちらは無勢ですわよ?」
一同「……」
 とはいえ、数で抑え込める自信もあまりない。
萌「オオオオオッ」
 そして、迷っている時間もない。
兵子(ひょうこ)「覚悟を決めて特攻あるのみです」
宗美(むねみ)「いや、死にたくはないけどね……」
 戯言はここまでにして、一行は抜刀して……固まる。
 誰から萌に挑むべきか……悩んでいるというか、動くに動けない一行なのであった。
宗美(むねみ)「で、誰か行く?」
友近(ゆこん)「年功序列というものがありますわよね?」
宗美(むねみ)「いや、あえて逆年功序列という手もあるぞ……」
 誰が一番槍を手にさせるかでもめだす宗美(むねみ)友近(ゆこん)。おまえら余裕だな……
万夏(まなつ)「もう一斉に襲い掛かるでいいんじゃ?」
一同「じゃあ、それで!」
松子(しょうこ)(それにしても、もめている間に殺しにかかってきてもおかしくはなかったのですが……)
 松子(しょうこ)は疑問を抱くも、今はそんな場合ではないと、頭の片隅に追いやると、他のメンバーと一緒に襲い掛かるの
であった。
萌「オアアアッ!」
 まずは万夏(まなつ)友近(ゆこん)宗美(むねみ)兵子(ひょうこ)の四人で萌の四刀を封じ込め、松子(しょうこ)衞琉(えいる)の二人で萌にしかける。
松子(しょうこ)衞琉(えいる)「うっ!?」
 しかし、魔眼を極めた萌の眼力は人の動きを封じる。
 攻撃に転じることもままならない一行。果たして、萌を止めることはできるのか?!


続

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