Eighter -Blindness Wizard-
47ther 〜憎悪燃ゆ憤怒の花 A〜



#0
 百井(ももい)銀牙の復讐は、彼の非業の死によって終わった。
 しかし、これで全てが終わったわけではない。七罪塔(しちざいとう)の企みはここからが本番なのだ。
 無傷に近いとはいえ、消耗した萌を陥落させることは七罪塔(しちざいとう)にとっては朝飯前なのだ。

#1
シャイターン「ふふふ……これで最強の駒が完成したも同然だね……」
 ゆらりと幽鬼のように立ち上がる萌。彼女の眼は鬼のように真っ赤に、爛々と輝いていた。
冥時(みょうじ)萌「……」
シャイターン「さぁ、君の望むとおりに、殺戮の宴を始めよう」
萌「ウオオオオオオオオッ」
 女性とは思えないほどの雄たけびを上げ、萌はその場を去っていくのであった。
シャイターン「ふふふ……楽しみだなぁ……」
 いかに《キツネザルの使途》でも、《孤高の剣鬼》を前に無傷ですむわけがない。
 これまで七罪塔(しちざいとう)が傀儡にしてきた人間の中でも最高傑作と自負してやまないサタンであった。
※ちなみに、(けい)とか例外があったけど、今度こそ正気に戻ることもないって考えているサタン。果たして……

 しかし、この一部始終を静かに観察しているモノがあったことを、サタンは気づいていなかった。
 こんなことを仕出かすのはシレントワイザードだけなので、今更説明する必要もないのかもしれないが……
ラキエル(ネサリウス様……)
ネサリウス(いや、もう少し観察を続けてからだ……)
 今はまだその時ではない……と、言うわけで、ネサリウスとラキエルの二人はサタンの後を追跡する。
※なんだかストーカーのストーカーみたいですね。

 さて、場所は変わって(かく)眼同盟本部。
伊達宗美(むねみ)「あ〜〜、じゃあ、これから楽しい殺しあいを始めるよ〜」
某敢(それがし・いさむ)「いや、殺しあいではないでござるよ……」
 呆れ顔の(いさむ)。
 さて、どうして(いさむ)がここにいるのか……それは、修行の一環?
※なんで疑問形なんだ?
 と、ともかく、一人で修業するにも限界があるってなわけで、どうせなら合同で競い合った方が剣の道を高めら
れると、いうわけで、(かく)眼同盟に(いさむ)が呼び出されたのだ。
 そして、ややあって、(いさむ)松子(しょうこ)が死合を開始しようとした矢先、闖入者参上
柳生衞琉(えいる)「邪魔するわよ〜」
(いさむ)「ぬ?!おぬしは……」
 彼女は柳生衞琉(えいる)。江戸柳生の末裔にして、《孤高の剣鬼》の後継者の一人だ。
 どうして彼女がここにやってきたのか?……きっと兵子(ひょうこ)と切り結びたいと思っての行動なのだろう。と、一同は
軽い気持ちで考えていた。

#2
柳生兵子(ひょうこ)「来る……敵が来る」
宗美(むねみ)「おいおい、兵子(ひょうこ)、そんなチェ〇ゲのゴウみたいなセリフ……」
 ぞわりっ
 茶化しにかかった宗美(むねみ)だが、次の瞬間、凄まじい殺気に思わず刀に手をかける。
前田松子(しょうこ)「この邪悪な気配は……まさか……」
冥時(みょうじ)萌「オオオオオオアッ」
 冥時(みょうじ)萌、推参。
宗美(むねみ)「おいおい、こりゃ、ちょっとヤバいんじゃねぇか?」
島友近(ゆこん)「そんなこと、言われなくてもわかっていますわ……」
(いさむ)「この禍々しい気配は……」
 それは、かつて萌が九星団にいたころの邪悪さに似ていた。
 いや、似てはいるが、九星団にいたころでもこれほどまで禍々しい気配を放ってはいなかった。
 闇に落ちた剣の鬼……それが今の萌に相応しい呼称であろう。
衞琉(えいる)「あいつの相手は私がするわ」
直江万夏(まなつ)「あ、ラッキー」
(いさむ)「いや、拙者が相手をするでござるよ」
衞琉(えいる)「いや、《孤高の剣鬼》の後継者としては……」
萌「ウオオオオオオッ」
 譲りあっている(?)間に萌が咆哮を上げる。
一同「ッ」
 その邪悪な咆哮に身が竦む。こんなものを相手にしては命がいくつあっても足りない。
衞琉(えいる)「チッ、もはや一刻の猶予もないわね」
 蜘蛛切を抜刀し萌に立ち向かおうとする衞琉(えいる)だったが、萌は衞琉(えいる)を無視して(いさむ)に襲い掛かる。
衞琉(えいる)「え〜?!」
(いさむ)「萌殿……」
 ギンッ
 明星幻爪(みょうじょうげんそう)をもってして萌の凶刃を受ける(いさむ)。
 そもそも、(いさむ)は萌が最初から自分を狙ってここへきたと察知したからこそ、衞琉(えいる)を差し置いて自分が死合うと言
い出したのだ。
(いさむ)(くっ、これは……萌殿の怒り!?)
 刃を通してひしひしと伝わってくる怒りに、(いさむ)は戸惑いを隠せずにいた。
 一体、萌は何に怒り狂っているのか!?
※答えを言うとサタンの傀儡となったことで怒り一色に塗りつぶされているだけなのだが、それを(いさむ)が知る術はな
 いのだった。
宗美(むねみ)「まぁ、なんだ……とりあえずここはあいつに任せてみようぜ……」
 そして、いざというときはこちらが打って出る。
 そういうわけで、(かく)眼同盟の面々と衞琉(えいる)は死合を見守るほかないのであった。


続

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