Eighter -Blindness Wizard-
42nder 〜白鳩の嘘殺(きょさつ)黒蜥蜴 C〜



#5
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「うおお!銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 ゴアオッ
虎宙典(こ・ちゅうてん)「フッ、無駄無駄……聖狼躱虚(しょうろうたうろ)」
 ズドムッ
 虎の咆哮のような衝撃波も、事もなげに回避してカウンターを叩き込む宙典(ちゅうてん)
梶太郎(かぢだろう)「ぐぅ……だが、まだまだッ!」
宙典(ちゅうてん)「愚かなことを……聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!」
 ドスッ
梶太郎(かぢだろう)「ぐっ……」
 何度も殴りかかるが、その度に宙典(ちゅうてん)双狼拳(そうろうけん)奥義、をもってして回避と同時にカウンターを叩き込む。
 それは相手の心を折るには十分な仕打ちではあるのだが、生憎と梶太郎(かぢだろう)には効果はないようだった。
梶太郎(かぢだろう)「無彩虎襲!」
宙典(ちゅうてん)聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!」
 光を奪ってからの拳打の嵐……を見舞おうとするも、最初の一撃を回避されカウンターを叩き込まれる。
梶太郎(かぢだろう)「くっ……はぁ、はぁ……」
 既に満身創痍の梶太郎(かぢだろう)。しかし、相手はまだ余裕の表情を崩さない。
 もはや勝負は決した……かに見えたが……
梓與鷹(よたか)「なぁ、アンタ……お前、ひょっとして聖狼躱虚(しょうろうたうろ)しか使えないんじゃないか?」
宙典(ちゅうてん)「なっ、なななななっ、何を言い出すんだ貴様ッ!」
 わかりやすい動揺だった。
宙典(ちゅうてん)「俺は師匠より、双狼拳(そうろうけん)の正統伝承者として認めらしものッ!」
與鷹(よたか)「……双狼拳(そうろうけん)の正統伝承者……」
宙典(ちゅうてん)「そうよ!この俺こそがッ!」
 しかし、與鷹(よたか)はそんな話を聞いたことがなかった。
 第一、双狼拳(そうろうけん)の正統伝承者は梓與鷹(よたか)である。そりゃあ、自分以外にも無数の双狼拳(そうろうけん)の使い手はいるだろうが、自
分以外に正統伝承者がいるなどと聞いたことがない。
梶太郎(かぢだろう)「ゴチャゴチャ五月蠅ぇ!てめぇの相手はこの俺だッ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
 ゴドガガガガガッ
宙典(ちゅうてん)「そうだな、貴様を殺して、あそこの奴も倒すとするか……聖狼躱虚(しょうろうたうろ)」
 ズゴンッ
 またもや回避と同時にカウンター。
梶太郎(かぢだろう)「うおらぁッ!」
 しかし、梶太郎(かぢだろう)は自分に返ってくる拳を顧みもせず捨て身覚悟で拳を放つ
宙典(ちゅうてん)「ぬぐおお!?」
與鷹(よたか)「なっ、聖狼躱虚(しょうろうたうろ)を破った!?」
 與鷹(よたか)にとってそれは少なからず驚きであった。同じ双狼拳(そうろうけん)の使い手だからわかる。聖狼躱虚(しょうろうたうろ)を破ることは現実的
には不可能に近い……
 まぁ、現実的ではない方法でこれまでに二度破られたことがあるのですが……

#6
梶太郎(かぢだろう)「おっしゃぁ!まずは一発」
 思わずガッツポーズをとる梶太郎(かぢだろう)
宙典(ちゅうてん)「貴様ッ……」
與鷹(よたか)「やっぱお前、聖狼躱虚(しょうろうたうろ)しか使えないだろ……」
 と、ここで與鷹(よたか)は気づいたことを指摘してみる。
宙典(ちゅうてん)「ばばばっ、馬鹿なことを言うなよ!」
與鷹(よたか)「と、いうか、お前、そもそも聖狼躱虚(しょうろうたうろ)を使いこなせてないな……」
宙典(ちゅうてん)巫山戯(ふざけ)るなよ!貴様に何が分かる!俺は師匠にその実力を認められし双狼拳(そうろうけん)の正統伝承者だッ!」
山咲(やまざき)桜「……ちなみに、師匠とはどんな人なのでしょうか?名前とか……」
 素朴な疑問を投げかけてみる桜。
 すると宙典(ちゅうてん)は九にあたふたしだす
宙典(ちゅうてん)「そっ……それはだな……師匠はみだりに人に名を教えてはならぬ!とおっしゃられてだな……貴様如きに名
乗る名はないッ!」
 明らかに嘘くさい……
(かみ)総介「フッ、どうやら貴様はモノを知らぬようだな……」
宙典(ちゅうてん)「何だと!?貴様、双狼拳(そうろうけん)の正統伝承者たるこの俺になんたる暴言だ!」
 もはや、ここまでくるとその言葉に縋っているようにしか見えない。
総介「貴様も双狼拳(そうろうけん)の使い手ならば、ここにいるこいつも双狼拳(そうろうけん)の使い手であるということはわかるであろう?」
宙典(ちゅうてん)「なっ、何ぃ!?……いや、知っていたぜ……確かにそこにいる女は双狼拳(そうろうけん)の使い手であると」
 なぜか、かんなを指さしてトンチンカンなことを言いだす宙典(ちゅうてん)であった。
與鷹(よたか)「いや、双狼拳(そうろうけん)の使い手は俺だけど……」
 ポリポリと頬を書きながら與鷹(よたか)が呟く。
宙典(ちゅうてん)「ハッ!今のは敵を欺く嘘よ!……敵を欺くにはまず味方からってな!」
 いや、どうしてそんなウソをつく必要があるのか……
 そもそも、味方を欺いているわけでもないというか、欺く必要があるように思えない……
梶太郎(かぢだろう)「いいから外野は黙ってろや!」
宙典(ちゅうてん)「そうよ!外野は黙っていてもらおうか!」
 梶太郎(かぢだろう)の言葉に乗っかる宙典(ちゅうてん)。苦し紛れと言うかなんだか見ていて哀れだ……
與鷹(よたか)(奴の聖狼躱虚(しょうろうたうろ)は未完成……なぜならば、攻撃を一回だけしか回避できないからだ……)
 真の聖狼躱虚(しょうろうたうろ)とは攻撃を全て回避してカウンターを叩き込むチートな技。それが出来ない宙典(ちゅうてん)双狼拳(そうろうけん)の正統伝
承者なわけがないのだ。
 まぁ、あまり外野が出しゃばるのもなんだしと、與鷹(よたか)は口をつぐむことにするのだった。
 そんなことはおいといて、死合はどう決着つくのか!?


続

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