Eighter -Blindness Wizard-
40ther 〜漆黒墜(ダウンフォール)警告使い(アラーティスト) D〜



#7
 桜が狙撃するのは誠吾の手甲だけではない。ブーツにも銃弾を叩き込み、もはや警告電車の痺脚(アラートラム・レグナム)はボロボロだ。
ルシュファー(どこからの狙撃だ?)
シャイターン(それが分かれば反撃のしようもある……が……)
ウェステリア「なるほどなぁ、人の反応速度を超えた攻撃……って無理だッ!てめぇ、俺に喧嘩売ってんのか!」
 先ほどのかんなのセリフはシレントワイザードの魔術師にも届いていた。
 しかし、分かったところで今の状態ではどうにもできないため、ウェステリアはいつも以上に苛立っていた。
シャイターン「こうなったら、もう、退くしかないな……」
 その時、サタンがぽつりと漏らす。そんなサタンの言葉に、ルキは血相を変えて叫ぶ。
ルシュファー「本気で言っているのか!?」
シャイターン「分かっているんだろう?」
 これ以上、粘っても奴らを倒すことはできない……ならばこそ、今回は逃げる
ルシュファー「クッ……」
 ルキも歯ぎしりして悔しがる
ルシュファー「覚えておけよ、《キツネザルの使途》!」
ドキエル「はっ、ウェステリア様、七罪塔(しちざいとう)が逃げるつもりです」
ウェステリア「五月蠅ぇッ!てめぇ喧嘩売ってんのかッ!」
 そんなサタンとルキを見て焦るのはシレントワイザードの方だ。
ウェステリア「逃がすと思ってんのか、てめぇ!」
(かみ)総介「貴様らも、そこから不用意に動くとケガするぞ?」
ウェステリア「あぁ?てめぇ、俺に喧嘩売ってんのか!?」
 ドドオンッ
ドキエル「ヒッ、ウェステリア様、落ち着いてください!」
 桜が狙撃している間、不用意に動くのは危険だ。
 そう、桜は誠吾を封じ込めるだけではなく、シレントワイザードの動きも封じているのだ。
ドキエル「あぁっ!?」
 そして、そうこうしている隙に、サタンとルキは自分の影に沈みその場から消えるのであった。
ウェステリア「チッ、クソがッ!」
 狙撃が止んだ時、誠吾を操っていた警告電車の痺脚(アラートラム・レグナム)は見事に破壊されていた。
総介「今度は貴様らが相手になるか?」
梓與鷹(よたか)「お、おい、総……」
 シレントワイザード相手に與鷹(よたか)が啖呵を切るのは、なんだか滑稽だ……
ウェステリア「あぁ!?てめぇ、喧嘩売ってんのか!」
 総介の挑発にウェステリアがガンを飛ばす
ドキエル「お、落ち着いてください。ウェステリア様……」

#8
 しかし、こうなってはウェステリアを止めることはできないとドキエルは分かっていた。
ウェステリア「殺すぞ!」
 ダァンガァンッ
ウェステリア「チッ……」
 桜が次に狙うのはシレントワイザードの魔術師だ。
ウェステリア(狙撃などと突込魁(とつこみ・かい)やがって……)
ドキエル(そ、そうですよ、ウェステリア様……既に我らの目的は失敗していますし、ここは撤退するのが得策か
と……)
ウェステリア(あぁ、てめぇ、俺に喧嘩売ってんのか!)
 俺が使う召喚呪術はなんだ!とドキエルを睨みつけるウェステリア。
 そう、ウェステリアの使う召喚呪術は鋼タイプのストロンティ!……であれば銃弾なんて平気、へっちゃら
※いや、鋼タイプってポ〇モンじゃないんだから……
 ちなみに、正確には鋼タイプじゃなくて、陰陽五行の金属性。
ウェステリア「来やがれ!」
総介「フッ……その自惚れはケガに繋がるぞ?」
 総介とウェステリアの間で緊迫した空気が張り詰める
ウェステリア(いけるな?)
ミーコ(仰せの通りに……)
 ダアンッ
ウェステリア「おらあっ!」
 銃弾を受け止めるなんて無茶苦茶な芸当が普通の人間にできるわけがない。しかし、魔導書娘のサポートがあれ
ば銃弾であれ気配を察知することができる。故にそこから逆算して銃弾を弾くことは不可能ではない。
 多分……
※断定できないのかよ!
 バキィンッ
一同「何ぃ!?」
 タイミングはバッチリだった。
 桜が撃ち込んだ銃弾を、召喚呪術・ストロンティで生み出したハルバードで打ち返す……
 だが、カオサイトの銃弾がハルバードに激突した瞬間、ハルバードが砕け散る。
ドキエル「ウェステリア様の召喚呪術が?!」
 今までウェステリアをはじめとしてシレントワイザードの魔術師が使う召喚呪術が何らかの攻撃を受けて破壊さ
れることを見たことがなかった。
 だから、この事態は衝撃だった。
ウェステリア「……」
 砕かれたハルバードを暫く見つめていた後、ウェステリアはそれをぽいっと投げ捨てる
ウェステリア「退くぞ」
ドキエル「え!?」

#9
 呆気なくその場から去っていくウェステリア。
 そんなウェステリアにドキエルはぽか〜んとするのであった。
ドキエル「はっ!……ま、待ってください、ウェステリア様ッ!」
 慌ててドキエルもウェステリアを追って帰っていくのであった。

総介「終わったな……」
與鷹(よたか)「いや、まぁ、確かに……」
 そして、その場に残されたのは無人の会社と死に体の誠吾……
 七罪塔(しちざいとう)を退けることに成功したとはいえ、勝利したとは言い難い状況だ。
山咲(やまざき)桜「警部……」
 その後、ライフルを背負って桜が戻ってくる。
総介「行くぞ、もはや俺たちがここでできることは何もない……」
 やはり、これ以上この場に長居するのは間違っている……と、言うか、あらぬ誤解をうけてしまいかねない。
 と、いうわけで、一行は帰るのであった。

 歴史の墓場、某所
シャイターン「《キツネザルの使途》を撃滅するには、適合する人間(パーツ)を探してけしかけるだけではダメ
か……」
ルシュファー「なら、どうする?」
シャイターン「いや、適合する人間を探すという考えが間違っているんだろうね。やっぱり……」
 なぜならば、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)とは人間を使い潰す存在
 無理やりにでも適合させて使役することが場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)として正しい姿なのだから。
 かくて、サタンとルキは次なる一手のために暗躍するのだった


END

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