Eighter -Blindness Wizard-
37ther 〜間男の癖に生意気 C〜



#5
 三重県、某所、藍数永寺(あいすえいじ)
 寺の前にて富士子とその母とも合流したのだが、当然と言うべきか與鷹(よたか)という見知らぬ男性に縦谷親子は不審が
る
縦谷富士子「あの、こちらの方は?」
縦谷鷹子「弟さんは分かるんですが……」
茄子野真生(まいき)「放せば長くなるのだが……」
梓與鷹(よたか)「今はそんなことは後回しだ!」
茄子野嗚喇椎(おらしい)「あ、ちょっと……」
 與鷹(よたか)が先に寺の中へ足を運ぶ。
韻麗(いんれ)「おや、どちら様ですかな?」
與鷹(よたか)「俺はお前が大神の降真靈(こうしんりょう)の一員だということを知っている!」
 開口一番そんなことを叫ぶ與鷹(よたか)
※間違ってたら赤っ恥もいいとこですね……
韻麗(いんれ)「ほぉう?」
 柔和な顔をしていた韻麗(いんれ)の顔が一気に険しくなる。それは図星ということだ。
一同「え、な、なに!?」
與鷹(よたか)「こいつらから奪い取ったオーパーツを今すぐ返してもらおうか!」
韻麗(いんれ)「奪い取ったとは、無茶苦茶なことを言いますな……アレは依頼の代価として正式に譲ってもらった品なんで
すよ?」
與鷹(よたか)「お前は、一体何を依頼したんだ!?」
 韻麗(いんれ)から背を向けて與鷹(よたか)真生(まいき)に向かって叫ぶ。
真生(まいき)「それは……」
富士子「夫のギャンブラー癖をどうにかしてほしい……それが私たちのたった一つの願いだったんです」
韻麗(いんれ)「えぇ、そして私は願いをくみ取り、仏の慈悲を与えたにすぎません」
與鷹(よたか)「なッ!?」
 絶句する與鷹(よたか)與鷹(よたか)「お前ら、それがどういう意味か分かってんのかッ」
一同「どどど、どういうって!?」
 怒りに満ち満ちた表情の與鷹(よたか)に一行は気圧される。
與鷹(よたか)「知らないなら教えてやるッ!奴らの言う仏の慈悲のホトケってのはな、警察用語のソレだ!つまり、殺すっ
て意味なんだよッ!」
一同「ええっ?!」
 驚きの表情で一行は韻麗(いんれ)を見る。
韻麗(いんれ)「殺すだなんて物騒な……我々はただ、仏の慈悲を与えただけですよ?」
 笑顔が、恐ろしい……
真生(まいき)「お、俺はなんてことを仕出かしてしまったんだ……」
 膝をついて愕然とする真生(まいき)韻麗(いんれ)「大体ですな、仏の慈悲を与えるということがどうことを意味するのか聞かなかったそちらにも落ち度はある
はずですが……」
富士子「坊さんが人殺しをするなんて思うわけないじゃないですかッ!」
韻麗(いんれ)「それは差別ですな……僧侶とて人間。魔が差せば殺人だってします」
鷹子「た、確かに……」

#6
與鷹(よたか)「惑わされるなッ!奴らは魔が差さなくても人を殺す、そういう連中だ!」
韻麗(いんれ)「やれやれ、我々のことを何だと思っているのやら……」
 風評被害も甚だしいですな……といけしゃあしゃあと言い放つ韻麗(いんれ)韻麗(いんれ)「まぁ、ここまでご足労かけたお礼代わりとでも言いましょうか……件のオーパーツを一目だけでも見せてさ
しあげましょう」
 そうして指を鳴らすとDAの一人がやってきて韻麗(いんれ)にオーパーツを手渡す。
 それは不気味な異形の眼を模ったようなレリーフだった。
韻麗(いんれ)「これがあなたのお探しのものでしょう?」
與鷹(よたか)「……」
 それを見て與鷹(よたか)は黙り込む。
韻麗(いんれ)「ですが、これは本当にオーパーツなのか怪しいところですな……」
 見たところ何の変哲もないレリーフにしか見えない……と韻麗(いんれ)は続ける。
*「ならば教えてやろう、そのオーパーツの名称と効能をな!」
 と、その時、寺に新たなる漢の声が響く
與鷹(よたか)「総!?」
 現れたのは上総介だった。勿論、総介がいるということは桜もいるということである。
與鷹(よたか)「どうしてお前がここに!?」
(かみ)総介「この寺の近くの駐車場……そこに止められていた一台の車の中で男性の変死体が見つかった……」
富士子、鷹子「ま、まさか、それって……」
山咲(やまざき)桜「はい。死亡したのは縦谷麗輝(れいき)……」
 坊さんに担ぎ込まれているのを見たという目撃証言からもしかしたらと思って総介はここへ来たのだという。
韻麗(いんれ)「それで、このオーパーツのことを知っていると言いましたが……」
総介「そいつは聖人の壁眼(セイクリッド・スクイント)……適合者が使えば内に秘めたる力を開放できるが、それ以外にとってはただのガラク
タに過ぎん!」
韻麗(いんれ)「なるほど、私は適合していないから何の効力も発揮されないと、そういうわけですか……」
 あまり使い物にならないかもしれませんねぇ……と独り言ち
総介「さて、俺がここへやってきたのにはもう一つ理由がある」
與鷹(よたか)「もう一つの理由?」
桜「はい。それはここ、藍数永寺(あいすえいじ)が賭博寺だということに関係があります」
一同「な、なんだって!?」
 つまり、賭博寺の摘発が総介のもう一つの目的だ。
韻麗(いんれ)「それは私の預かり知らぬことですな……」

#7
 おそらく、麗輝(れいき)はここへ賭博をしにやってきた。
 そして、手痛い敗北を喫し、生命という対価を支払う羽目になったのだろう……
韻麗(いんれ)「では、私はこれでお暇させてもらいますよ?」
與鷹(よたか)「待て!逃がすか!」
韻麗(いんれ)「ほれ、取ってこ〜〜い」
 まるで聖人の壁眼(セイクリッド・スクイント)をフリスビーのようにぶん投げる韻麗(いんれ)與鷹(よたか)「俺は犬じゃねぇッ!」
 つい反射的にキャッチしてしまった與鷹(よたか)はそんなことを叫ぶ。ノリ突っ込みである?!
 そして、その隙に韻麗(いんれ)は姿を消すのであった。
総介「フン、オーパーツは回収できたんだ、良しとしよう」
與鷹(よたか)「いや、だとしてもだな……」

真生(まいき)「殺人教唆?!……俺は、なんてことをしてしまったんだ……」
富士子「その罪、私も同罪です……」
鷹子「いいえ、これも全ては私の不始末……だから、これは私の罪」
真生(まいき)、富士子「あ、じゃあ、どうぞどうぞ」
 手の平を返すとはまさにこのことだ。
鷹子「いや、ちょっと待てこら!ダ〇ョウ倶楽部じゃねぇわッ!」
 馬鹿なことはさておいて、三人は罪を償うべく自首することとなり、この悲しい事件は幕を閉じることとなった
のだった。
 ちなみに、聖人の壁眼(セイクリッド・スクイント)は当初の予定通りEighterで管理することになりました。


END

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