Eighter -Blindness Wizard-
37ther 〜間男の癖に生意気 A〜



#0
 これは、とあるオーパーツを巡る事件の物語である。
 しかし、運が悪ければ、明るみに出ることなく事件は闇に葬り去られていたかもしれない。
 そして、これは愛と怒りと憎しみに溢れた悲しき物語でもある……かもしれない
※断定しないのかよ!

#1
 三重県、鈴鹿市、某所
*「おらあっ!勝ったぜぇ!」
 今、一人の男が二人の女性の前にババ抜きで勝利していた。
 男の名は縦谷麗輝(れいき)。生粋のギャンブラーというクズ男だ。
 そして、敗北した二人だが……片方は縦谷富士子、麗輝(れいき)の妻であり、もう片方は縦谷鷹子。富士子の母である。
 ……つまり、この男は妻と姑相手にギャンブルで勝利したということなのだ。
縦谷麗輝(れいき)「約束通り、この十万は貰っていくぜ!」
縦谷富士子「ま、待って、もう一度……」
麗輝(れいき)「くどいぞ!」
 泣きついてくる妻をゴミクズでも見るような目で睨みつける最低な夫。
縦谷鷹子「どうして、この人は……」
 悲し気にヨヨヨと泣き崩れる姑。
 一体これはどういう状況なのかと言うと……連日ギャンブルでボロ負けして帰ってくる夫が金をせびるために妻
と姑相手にギャンブルをやってのけたと、そういう話である。
 それだけ言われてもイマイチ理解できないかもしれないが、この男、妻と姑相手なら無敗を誇る謎の強運を持っ
たクズ男なのだが、ひとたび外の世界でギャンブルをすればたちまちボロ負けするという悲しい男でもあるのだ。
 そして、これは縦谷家で行われた何度目かのギャンブル。金額の差異あれ毎回同じ条件で勝負をしている。
 その条件と言うのは、麗輝(れいき)が勝てば金はギャンブルにつぎ込む。麗輝(れいき)が負ければ金輪際ギャンブルは二度としな
い。と、いうものだ。
 だが、これまで妻と姑を相手にありとあらゆるギャンブルを行ってきたが、麗輝(れいき)が敗北したことは一度もなかっ
た……無論、妻と姑が接待してわざと負けているということはない。だって二人にも生活が懸かっているんだもの
※ちなみに、余談だが麗輝(れいき)が外の世界で成功した唯一のギャンブルというのは妻との結婚である。
麗輝(れいき)「今度こそ、競トライアスロンで勝って見せる!」
 謎の意気込みとともに、麗輝(れいき)は家を出ていくのであった。
※なお、競トライアスロンってのは競馬と競輪と競艇を組み合わせた全く新しい謎の賭博のことらしい。

#2
 三重県、某所、藍数永寺(あいすえいじ)
 この寺に富士子は足繁く通っている。その理由は不倫相手がこの寺の檀家だからである。そして、今日も不倫相
手に会いに彼女はやってきた。
 ただ、いつもと違うのはお母さんと一緒であるということだ。
*「ふ、富士子さん、それにお義母さん!?」
 寺の前で富士子に声をかけた男こそが彼女の不倫相手、茄子野真生(まいき)だ。誠実という言葉が服を着て生
きているようだ……と周りから称賛されている人物である。
※いや、そんな奴が不倫に応じるわけねぇだろ!
茄子野真生(まいき)「どうしたんですか!?……いや、わかります。あの人のことですよね?」
 力なく頷く富士子。ここではなんですから、中で話をしましょう……と真生(まいき)は二人を寺の中へと連れていく。

 寺の億にて、僧侶を読んでの人生相談……いや、作戦会議か!?
 ともかく、四人は話し合う。
 だが、やってきた僧侶と言うのが曲者だった。
 大神の降真靈(こうしんりょう)が高僧の一人、韻麗(いんれ)である。そう、何を隠そう、この藍数永寺(あいすえいじ)は大神の降真靈(こうしんりょう)が管理する寺院の
一つで、韻麗(いんれ)は特別顧問としてこの寺にやってきていたのだ。
※いや、特別顧問の僧侶ってなんだよ!
韻麗(いんれ)「どうやら決断をする時が来たようですなぁ……」
富士子、真生(まいき)「決断……とは!?」
韻麗(いんれ)「このまま行けば近い将来、破産するしかないでしょう」
鷹子「それは、確かに……」
韻麗(いんれ)「ならば、ここらで仏の慈悲を与える決断を!」
一同「仏の慈悲?!」
韻麗(いんれ)「はい、全て私にお任せくだされば……」
 改めて言っておくが、大神の降真靈(こうしんりょう)の連中が言う『仏の慈悲を与える』とは『殺す』と同義である。
 寧ろ、『殺す』の隠語として使っている位である。だが、そんなことは一般人は知る由も無いし、奴らがそれを
教えることもない。つくづく悪い奴らである。
真生(まいき)「……確かに、決断の時かもしれません」
富士子「……」
 真生(まいき)が二人を見つめると、うん、うんと頷いて返す二人。それは決断の証だ。
真生(まいき)「ならば、依頼料は私が払いましょう。いくらですか?」
韻麗(いんれ)「いえいえ、お金はいりません。ただ……」
一同「ただ?!」
韻麗(いんれ)「貴方の家に伝わるアレを私にお譲りくだされば……」
真生(まいき)「アレ……アレか!?」
 その、アレとは一体何なのか!?


続

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