Eighter -Blindness Wizard-
30ther 〜強欲が望む心深願(エイエン) A〜



#0
 七罪塔(しちざいとう)、それは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の最高峰。しかし、《色欲(ラスト)》と《怠惰(スロウス)》は打ち砕かれ、《暴食(グラトニー)》と《嫉妬(エンヴィー)》は
シレントワイザードの手に落ちた。
 残りは《強欲(グリード)》、《憤怒(ラース)》、《自尊(プライド)》……そろそろ後がない七罪塔(しちざいとう)はある計画を実行してみるのであった。
 これはそんな七罪塔(しちざいとう)の暗躍の物語だ。

#1
 天四斗(あまよと)、某所
突込魁(とつこみ・かい)「って、ここ、どこよ!?」
 その日、(かい)は道に迷っていた。
 どうしてこうなったのかは、言うまでもない。(けい)が勝手にふらふらとどこかへ行ってしまい、彼を追っていたら
いつの間にか迷ってしまったのだ。
(かい)「ったく、あのまぬ(けい)はぁ……」
 (けい)の天然っぷりに愛想をつかさない(かい)もまた、相当な変わり者と言えよう。
*「そんなにイライラしているのなら、いっそのこと見限ればいいんじゃないかい?」
(かい)「なっ、だっ、誰よ!?」
 音もなく、気配もなく現れしは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の最高峰、七罪塔(しちざいとう)が《強欲(グリード)》アマイモンである。
(かい)(子供!?……いや、でもこの禍々しい気配は……アレは一体何なの!?)
 アモンの邪悪な気配に、(かい)はとっさに身構える。
アマイモン「どうしてあいつを見限らないのかな……僕にはそれが不思議でならない」
(かい)巫山戯(ふざけ)たことを言わないで頂戴!」
 確かに(けい)は適当で何を考えているのかわからないけれど……だけど、それが見限る理由にはならない。
 憤怒の表情でアモンを睨みつける(かい)。
 それは、とある人物のセリフを借りるとするならば、きっと『この気持ち、まさしく愛だ!』と、いうことだろ
う。
アマイモン(なるほど、そういうことか……)
 しかし、(かい)の気持ちが手に取るようにわかるアモン。遥か古の時代から人の心を弄び、操ってきた七罪塔(しちざいとう)の面目
躍如といったところだ。
 で、あるならば、次の一手は……
アマイモン「じゃあ、欲しいものは奪えばいいじゃないか」
(かい)「な、何を……言ってるの!?」
 ニタリと邪悪な笑みを浮かべるアモン。その笑顔が、なぜか惹かれる……
アマイモン「ふらふらと勝手に出歩いていくようなそんなあいつが誰かの手に渡る前に、奪い去ればいい」
(かい)「あっ……」
アマイモン(かかった!)
 かくて、(かい)はアモンの手に落ちる。
 内に秘めたる強欲のままに、(けい)を殺しに……

#2
 一方、(かい)を放置してふらふら〜〜っと散歩していた(けい)はというと……
天然蛍(あましか・けい)「あれぇ!?」
 いつの間にか(かい)がいなくなったことに気が付く。しかし、特に気にしない。
 ちょっと待っていればすぐ追いつくだろうという能天気な考えた。
(けい)「ほらね?」
 誰に対してのセリフなのかわからないが、(かい)は来た。
(かい)「……」
 しかし、今の(かい)は明らかに様子がおかしかった。目が死んでいると言えば分かりやすいだろう。
 だが、しかし、(けい)はやっぱり気にしない。
 (かい)が無言で夢羅征(むらまさ)を抜き、その(きっさき)(けい)に突き付けても、動じない。
(けい)「ん〜〜〜?」
 カックンとまるで首が骨折したかのように傾げつつ、様子を見守っていると、(かい)は一足飛びにかかる
(かい)「殺す」
 ゴガッ
 迫る凶刃も、(けい)が放つ炎が盾となり止められる。
(けい)「遊んでほしいの?」
(かい)「死ねっ!」
 ギリギリと尋常じゃない膂力をもって夢羅征(むらまさ)で押し通しにかかる。
 流石にここまでくれば、(けい)(かい)の異常さに気づく
※いや、ここまでこないと気づけないのはどうなんだ……
(けい)「其の右に纏いしは紅き炎爪……燃ゆる紅蓮の(かいな)……夢炎の刃、真・炎双刃」
 ボボボッ
 炎が集いて刃を成す。
(けい)「じゃあ、しょうがないから付き合ってあげるよ……」
 たまには(かい)と死合うのも一興。
 どこまでも能天気な(けい)だった。
(かい)「死ね!死ね!お前を殺して私も死ぬ!」
(けい)「うわ〜。過激……」
 ガキンガキンと刃と刃を打ち鳴らしつつ、そんなことを呟く二人。
 物理的に燃えている(けい)が冷めていて、物理的に燃えていない(かい)が燃えている。なんだ、この巫山戯(ふざけ)た図……
※でも、(けい)にとってはこれが至って真面目なのがたちが悪い。
(けい)(う〜〜ん、今日の(かい)はいつにもまして不機嫌だなぁ……)
 はっ、もしかしてこれがあの日!?とか見当違いなことまで考える始末だ。
 アフォなこと考えてないで死合に集中しろよ!
(かい)「ハアッ!」
 ズダンッ
(けい)「おっ!?」
 余裕だった(けい)だったが、夢羅征(むらまさ)の斬撃が(けい)の炎の鎧を切り裂いたことで考えを改めざるを得なくなる。
(けい)「ふぅん……」
 果たして、(けい)は本気を出して(かい)と死合うのか、それとも、このまま自由気ままにふるまうのか!?
※いや、真面目にやんなさいよ!

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