Eighter -Blindness Wizard-
30ther 〜強欲が望む心深願(エイエン) B〜



#3
突込魁(とつこみ・かい)「死ね!死ね!死ね!」
 怒りに任せて夢羅征(むらまさ)を振るう(かい)。
 そんな凶刃をぼけ〜っとしつつも的確に(かい)の凶刃を回避したり受けたりする(けい)。
アマイモン(う〜〜ん……天命(ネフェシュ)が強いからアレを選んだのはいいけれど、あれは想いが強すぎて使い物にならない
なぁ……)
 (けい)(かい)の死合を遠巻きに覗いていたアモンは、早くも(かい)を選んだことを後悔していた。
 (かい)を殺戮の権化として天命(ネフェシュ)を刈り取る傀儡として使おうと画策したのだが、失敗したかもしれない……
天然蛍(あましか・けい)「とっとと終わらせて、遊びに行こうね……」
 やっぱりいつも通り、のほほんとしている(けい)なのであった。
(けい)「じゃあ、これ、行ってみよう!炎飛龍斬(ほむらひりゅうざん)!」
 ゴアッ
 炎で龍を作り、それを(かい)にけしかけてみる。まずはほんの小手調べと言ったところだ。
(かい)「無駄ッ!」
 ガシュオアッ
 夢羅征(むらまさ)を左手で持ち、右手をかざして炎の龍をかき消す。
(けい)「なっ!?」
 これにはさすがに(けい)もびっくり仰天。
(かい)「はああッ!」
 気を取られて茫然としているところに(かい)の渾身の一撃が直撃する。
アマイモン(()った!)
 呆気ない幕切れ。
 と、思った次の瞬間、(かい)の背後にひっそりと佇む(けい)の姿が
アマイモン「馬鹿なッ!?」
(けい)「夢でも見たんじゃないの?」
アマイモン「ッ!?」
 今の(けい)のセリフは、明らかに隠れて二人の死合を見ているアモンに向けて放たれたもののように見えた。
アマイモン(馬鹿な、まさか、奴は僕に気づいたとでもいうのか!?)
 完全に気配を消して覗き見をしている七罪塔(しちざいとう)を見つけるなど、不可能のはずだ……
 だが、(けい)は何もない虚空をじ〜っと見つめる。
 そう、その先にこそ、アモンが潜んでいるのだ。しかし、(けい)はアモンを察知して呟いているわけではない。そし
て、先程のセリフも単に独り言である。
※そんなことあります!?
 (けい)がやっている行動は、猫が何もない虚空をじ〜っと見つめるような仕草に近いのだ。
アマイモン(奴は危険すぎる。早いところ奴を始末しなければ……)
 謎の焦燥感にかられるアモン。場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の最高峰、七罪塔(しちざいとう)が《強欲(グリード)》たるアモンが恐怖を覚えるなどと
あってはならない出来事だった。

#4
(けい)「じゃ、次はこれ、行ってみよ〜。炎鳳凰斬(ほむらほうおうざん)!」
 ゴガアッ
 炎で鳳凰を作り、(かい)に解き放つ(けい)(かい)「だから、無駄だと言っているッ!」
 ガシュオッ
 再び(かい)が右手をかざすと、先ほどと同じように炎の鳳凰が掻き消される。
(けい)「う〜〜ん……あんまり効果がないみたい」
 カックンと首が折れたような感じに傾げつつ、そんなことを呟く(けい)。
 いや、あまり効果が無いというか、全く効果が無いと言った方が正しいと思うんだが……
(かい)「ならば、死ねッ!」
 ドッ、ガガッ
 力任せに夢羅征(むらまさ)を振るう(かい)。しかし、その斬撃は今度は(けい)には届かない。
 先ほどよりも強力な炎の鎧が凶刃を阻んでいるのだ。
(かい)「死ねッ!死ねッ!死ねッ!」
(けい)「う〜〜ん、無駄だって言ってるのに、今日の(かい)は聞き分けがないなぁ……」
 いや、聞き分けがいいとか悪いとかそういう次元の問題じゃないんですけどね……
(けい)(さて、どうしたものかなぁ……)
 能天気な(けい)だったが、実はこう見えて内心焦りが見え始めていた。
 (けい)の本気はまだこんなものではない。しかし、(かい)相手に本気を出すわけにもいかなかった。そのワケは簡単だ。
 (けい)が本気を出せば、(かい)は簡単に死んでしまう。そして、それは(けい)の望むところではない。
 (かい)を殺さず無力化するには、どうすればいいか。(けい)は悩んでいた。
 しかし、実際のところ、アモンの傀儡と成り果てた(かい)は人知を超えた力を有しており、(けい)が今よりも本気を出し
ても死ぬことはないのだが、(けい)にそんなことを知る由はなかった。
エリィウラ(ならば、死を受けいてるか?)
(けい)(まさか……)
 その時、(けい)に力を貸す存在……エリィウラが(けい)に語り掛けてきた。
エリィウラ(では、どうする?あやつを殺すか?)
(けい)(それも、まさかだよ)
エリィウラ(なら……)
(けい)(俺のやり方で解決させるだけだよ……)
 静かなる決意とともに、(けい)の周りの炎が激しく猛る。
 滅多に感情をあらわにしない(けい)が、珍しく怒っていた。
エリィウラ(ならば、お手並み拝見といこうか……)
(けい)「来なよ、(かい)……たまには全力でぶつかってみるのも一興だよ?」
(かい)「殺す!貴様は必ず私が殺す!」
 かくて、ここからが(けい)(かい)の本当の殺し合いだ。
 いや、これは、おそらく、(けい)(かい)の殺し愛だ!


続

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