Eighter -Blindness Wizard-
29ther 〜虎の尾を踏む蒼天 C〜



#5
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「はぁあっ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
梓與鷹(よたか)「おおおっ!神狼九断(しんろうくだん)!」
 ドドドドドドドドドドッ
 互いに拳打の嵐を繰り出すが、その威力は互角!
 と、言うか、拳打が拳打で相殺されて相手に一発も当たらない。
梶太郎(かぢだろう)「や、やるじゃねぇか……だっ、だが、今のはまだほんの小手調べに過ぎないぜ!」
與鷹(よたか)「奇遇だな、俺もだ……」
 既に声に震えが出ている気がする梶太郎(かぢだろう)。これはもしかして早々にケリがつくのかもしれない。
梶太郎(かぢだろう)「ならば、これはどうだッ!無彩虎襲(むさいこしゅう)!」
與鷹(よたか)「なんのっ!冥狼舞吼(めいろうぶこう)!」
 カカッドガガガガガガガガガッ
 次に両者は相手の視界を封じてから拳打の嵐を叩き込むという奥義を繰り出した。
 だが、こちらも拳打が拳打を相殺し、視覚を奪うという一撃までもが相殺されるという結果となった。
梶太郎(かぢだろう)(チッ、互角か……)
 俺は今まで與鷹(よたか)を倒すために修業に明け暮れてきたってのに、それでもまだ差は埋まらないってのかよ!と内心
毒づく梶太郎(かぢだろう)であった。
※いや、アンタがやってきたことは道場破りとか弱い者いじめであって断じて修業ではないからね!
與鷹(よたか)梶太郎(かぢだろう)か……真っ当な鍛え方をしていたら一廉(ひとかど)の拳法家になれていただろうに……惜しいな……)
 一方、與鷹(よたか)の方は、拳を交えただけで力量とかその他もろもろ把握して、そんなことを思う。
 (ゆたか)(れつ)のように歪んだ妄執に取りつかれているわけではないからこそ、その実力が惜しまれた。
與鷹(よたか)(さてと、総介のためというわけでもないが、終わらせるか……)
與鷹(よたか)「これで終わりだ!神狼九断(しんろうくだん)!」
梶太郎(かぢだろう)「まだだ!まだ終わらんよ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
 ゴガガガガガガガガガッ
與鷹(よたか)「むっ!?」
 今まで手を抜いていたわけではないが、全力と言うわけでもなかった與鷹(よたか)は、これまでの手合わせの中でこれな
ら梶太郎(かぢだろう)を倒せるという威力で拳打の嵐を見舞った。
 だが、しかし、梶太郎(かぢだろう)はその拳打の嵐に拮抗して見せた。そのことに與鷹(よたか)は少なからず驚きを隠せないでいた。
梶太郎(かぢだろう)「どうした!?終わらせるんじゃなかったのか!?」
與鷹(よたか)「お前……」
 梶太郎(かぢだろう)を改めて見てみると、先ほどよりもパワーアップしているように見受けられる。
 奴もまた、力をまだ隠していたということなのだろうか!?

#6
梶太郎(かぢだろう)「ようやく体が温まってきたところだぜ!俺の力はここからが生本番よ!」
與鷹(よたか)「いや、お前な……」
※生本番とか下品すぎる……ってか、『生』はいらないからね……それつくと別の意味になるからね!
與鷹(よたか)「なるほど、まだ力を隠していたってことか……」
梶太郎(かぢだろう)「フッ、そいつは違うぜ!」
與鷹(よたか)「何!?」
 じゃあ、どういうことなのかと與鷹(よたか)が首をかしげてみると、律義に答えてくれる梶太郎(かぢだろう)
梶太郎(かぢだろう)「俺の虎伏絶掌(こふくぜっしょう)はまだまだ未熟でなぁ、時間をかけないとエンジンがかからないのよ!」
 いや、どういう技だよ……
 じゃあ、完全に使いこなせれば発動と同時に大幅なパワーアップが図れるってことなのだろうか?
梶太郎(かぢだろう)双虎拳(そうこけん)の神髄、貴様に叩き込んでやる!行くぜ!」
 そう叫ぶなり、突如後方へと飛び退る梶太郎(かぢだろう)。一体何をしでかすのかと思っていたらまるで波〇拳でも打ち出す
かのようなポージングをとって吠える
梶太郎(かぢだろう)銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 ゴガアアッ
與鷹(よたか)「ぐっ……」
 それはまるで虎の咆哮。放たれた衝撃波が與鷹(よたか)を怯ませる
梶太郎(かぢだろう)「捕えたぜ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
與鷹(よたか)「いや、まだだっ!穹狼極樹(きゅうろうきょくじゅ)!」
 ガガガガガッズゴンッ
 迫りくる拳打の嵐を受け流すと同時にカウンター気味にアッパーを放つ與鷹(よたか)梶太郎(かぢだろう)「むおお!?」
 宙に放り出された梶太郎(かぢだろう)を追い越す感じでジャンプするとそのまま重力加速をつけて肘鉄を繰り出す與鷹(よたか)
與鷹(よたか)「おらあっ!」
梶太郎(かぢだろう)「ぐっ、だがっ!」
 ガドッ
 梶太郎(かぢだろう)もただでは転ばない。反撃とばかりに強烈な一撃を繰り出し、拳と肘とが激突する。
梶太郎(かぢだろう)(クソッ、これでもダメか……)
 激突するかのように地面に着地するや否や転がるように距離をとる梶太郎(かぢだろう)與鷹(よたか)窿狼遍厳(りゅうろうへんげん)!」
梶太郎(かぢだろう)金鯱流楼(きんこるろう)!」
 ガカッ
 手刀をもってして梶太郎(かぢだろう)を十字に切り裂きにかかる與鷹(よたか)だが、梶太郎(かぢだろう)はそれを流れる水の如くステップで華麗に
回避。更に與鷹(よたか)の死角をついて反撃を行う
 ガシッ
梶太郎(かぢだろう)「ぬなっ!?」
 しかし、その拳は與鷹(よたか)によって受け止められる
與鷹(よたか)「これで終わりだッ」
 ドゴアッ
梶太郎(かぢだろう)「あげはっ!?」
 與鷹(よたか)のケリが炸裂、ここに勝負はついたのだった。

#7
梶太郎(かぢだろう)「うぐっ……くっ……」
 暫くすると、ノびていた梶太郎(かぢだろう)が目を覚まして立ち上がる。
(かみ)総介「フッ、勝負あり!」
梶太郎(かぢだろう)「くそっ、俺の負けかよ!」
 ドカンと地面に拳を叩きつける梶太郎(かぢだろう)。
総介「戦力としては申し分ない。実にいい拾い物をした」
與鷹(よたか)「いや、拾い物って……総、お前な……」
 満足げな総介に呆れ顔の與鷹(よたか)
梶太郎(かぢだろう)「クソッ、仕方ねぇ……約束は約束だ、貴様の手駒でも、使い走りでもなんでやってやるよ」
與鷹(よたか)「……」
 お前は強かったよ……少なくとも(ゆたか)(れつ)よりは……と言おうとしてやっぱりやめる與鷹(よたか)。
 ここでそんなことを言っても聞き入れてくれないだろうということが分かっていたからだ。
梶太郎(かぢだろう)「だが、一つだけ条件を付けろ!」
総介「フン、貴様の生殺与奪は俺が握っているのだが、聞くだけ聞こう」
 いやいや、生殺与奪まで握ってないでしょ……って思っていると梶太郎(かぢだろう)は口を開く
梶太郎(かぢだろう)「これからも與鷹(よたか)を殴らせろ!」
総介「フン、いいだろう」
與鷹(よたか)「まてまて!本人の許可なしに話を進めるなっての!」
総介「返り討ちにしてやればいいだけだ!」
與鷹(よたか)「いや、あのなぁ……」
 他人事だと思って……と恨みの一つでもこぼしてみる與鷹(よたか)。
 ともかく、これで総介の手駒となる戦力は確保できたのであった。


END

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