Eighter -Blindness Wizard-
26ther 〜遺体なき殺人と罪 B〜



#3
 数年前、尹楠娜(い・なんな)を唆したのは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)、中位存在が一人、泥諏(でぃす)クォヴァ
 そして今、その上司(?)、七罪塔(しちざいとう)が《嫉妬(エンヴィー)》レヴィアが彼女の前に現れた。
尹楠娜(い・なんな)「何なの、貴方!?」
レヴィアタン「数年前のことでちょっとね……」
尹楠娜(い・なんな)「数年前!?」
 それは言わずもがな、殺しても死なない漢、萄鵡路(どぅ・むじ)殺害の件だろう。
尹楠娜(い・なんな)「あれはもう終わったはずよ」
 もう、当時の記憶はあまり覚えていないが、死体も完全に滅却し、事件は明るみにはなっていない。
 そもそも、事件として報道されていれば、愛人のために夫を殺した悪女としてニュースになっており、今の地位
にはいない。
レヴィアタン「……そうね……あの時はね……」
 ニタリと悪い笑みを浮かべるレヴィア。
尹楠娜(い・なんな)「あの時はっ……て何を言っているのよ!」
レヴィアタン「何かを借りる時には利子がつきもの……なんだよ?」
 利子を受け取りに来たよ……としたり顔でそういうレヴィア。
尹楠娜(い・なんな)「……」
 数年前、元夫を殺して玉の輿を目指すために悪魔の力を借りてしまった尹楠娜(い・なんな)。そのツケを今支払うときが来た
のだろう。
尹楠娜(い・なんな)「じ、実は私、こう見えてユダヤ人なのよ!」
レヴィアタン「はい!?」
 この状況を打開するためには再び悪魔にだって魂を売る?!
 とりあえず、尹楠娜(い・なんな)はユダヤ人は金を貸しても利子をとらないという豆知識(トリビア)を思い出し、苦し紛れでそんなこと
を言ってみた。
 だが、そんなものが七罪塔(しちざいとう)に通用するはずがない。そもそも七罪塔(しちざいとう)はユダヤ人でも何でもない。
レヴィアタン「まぁ、要するに、こちらの要望を聞き入れてくれればそれでいいってことなんだけどね……」
 その言葉にほっと一安心する尹楠娜(い・なんな)
尹楠娜(い・なんな)「そういうこと……で、その要望ってのは何?」
レヴィアタン「うん、それはね……」
 しかし、レヴィアの言葉を聞いて、尹楠娜(い・なんな)は夜叉のように表情を変える。
尹楠娜(い・なんな)巫山戯(ふざけ)ないでッ!」
 レヴィアの要望はただ一つ。株式会社センサスの全社員の命……即ち天命(ネフェシュ)だ!
 だが、そんなものを尹楠娜(い・なんな)が受け入れられるはずがない。だって、彼女が愛した男の命を差し出せと言っている
のだから。

#4
レヴィアタン(今回は、前回のようにはいかないか……)
 前回とはアル中、エン高の時のマッチポンプの件だ。
※詳しくはその話を見てね。
レヴィアタン「でも、それでいいのかな?」
尹楠娜(い・なんな)「何が?」
レヴィアタン「だって、君は、デュランダルより信用されていないじゃないか……」
尹楠娜(い・なんな)「なっ!」
 聞き捨てならないセリフに、思わずカっとなる尹楠娜(い・なんな)。
レヴィアタン「君は確かに、あの人からすれば有能な人材なのかもしれないけど、それでも、あの人は選ぶとなっ
たらデュランダルを選ぶよ?」
 別にホモってことじゃないねどね……
尹楠娜(い・なんな)巫山(ふざ)()ないでッ!」
 怒りは身を滅ぼす。その言葉は今、この時点においては正しく言いえて妙だった。
 嫉妬の炎に駆られた尹楠娜(い・なんな)は我を見失う。
レヴィアタン(はい、一丁上がり)
 かくて、尹楠娜(い・なんな)はレヴィアの前に落つ。
レヴィアタン「ラティオテクノロジーか……なるほどねぇ……」
 レヴィアの傀儡となり果てた尹楠娜(い・なんな)は自分が今行おうとしている計画について死んだ目をしながら語りだす。
レヴィアタン「これは面白いことができそう……」
 ニタリと再び悪い笑顔を見せるレヴィアであった。

 翌日、株式会社センサスにて
尹楠娜(い・なんな)「デュランダルさん……ラティオテクノロジー攻略のことで話があります」
デュランダル・ギランバレート「ふむ……」
 目が死んでいるのはなんか奇妙だな……と思いつつも特に疑いもせずにデュランダルは尹楠娜(い・なんな)と一緒にある会議
室へと向かう
※いや、ちょっとは疑いを持とうぜ!
デュランダル「それで、話というのはなんだ?」
 こちらも忙しいので、手身近にな……と、思った次の瞬間、突如そこに謎の声がする
レヴィアタン「じゃあ、手身近に説明しようかな」
デュランダル「なっ、なんだ貴様は!?」
 どこから、どうやってここへ?!とデュランダルが困惑していると、私が今回の作戦のために呼びましたと言い
出す尹楠娜(い・なんな)
デュランダル「こんなガキに何ができるってんだ?」
尹楠娜(い・なんな)「こんなナリでも軍師ですから……」
デュランダル「はぁ!?」
 軍師だぁ!?馬鹿も休み休み言えとデュランダルは続けるが、誰だってそう思う。
 さておき、デュランダルにもレヴィアの魔手が迫る。果たして、デュランダル()は生き延びることができるか?!


続

前の話へ 戻る 次の話へ