Eighter -Blindness Wizard-
21ster 〜狛犬は異界を見る D〜
#7
典解、蒙解(と與鷹(、総介が死合っている一方、慈円とウェステリアはというと、やはり死合っている。
※そりゃそうだ。これで話し合いとかやってたらおかしいわ。
慈円「ほほう、なかなかやりますな……」
ウェステリア「あぁ?てめぇ、喧嘩売ってんのか!」
いつにもましてイライラしているウェステリア。
先ほどから召喚呪術を放ってはいるものの、効果はいまひとつのようだ。それがウェステリアのイライラを加速
させている。
ウェステリア「唸る鉄刃(!」
慈円「塞押超絶獄悪手(!」
ドゴゴガッ
一気に距離を詰めてハルバードで一刀両断にかかるウェステリアに対して慈円は左右の手刀を横に薙ぎ払う形で
応戦、さらに衝撃波を飛ばしてカウンターまで行ってくる。
ウェステリア(クソッ、このままではマズい……)
召喚呪術は無制限にいつまでも使えるものではない。死合が長引けば、ウェステリアが苦境に立たされるのは必
至。
奴の隙をつこうにも、なかなかその隙も見えてこないので、死合は膠着状態にあった。
コオオオオオッ
一同「な、何!?」
突如、上空が鳴動する。
思わず、與鷹(、総介も動きを止める。
慈円「お、おおっ!遂に!」
そんな中、慈円は目頭に涙を溜め感極まった声で天を仰ぐ。
ウェステリア「俺を無視するとは、貴様、喧嘩売ってんのか!」
それは最大にして最高の好機!今こそ駆ける時!とウェステリアは召喚呪術を叩き込もうとしたのだが、しかし
体が動かない
ウェステリア「なんだ、これは!?」
別に慈円がなにかやったわけではない。
※いや、最初から異世界の神召喚って儀式やってましたけど……
空気が重い……
しかし、それでいて清々しくも、禍々しくもあり……けれども、どこか神々しい。
典から降り注ぐ光とともに、ソレは来たれり!
慈円「異世界より来たりし神よ……私は慈円。大神の降真靈(が高僧……」
ソレは両目を瞑っており、微睡みの中にいるような存在であった。
そして、その存在のことを一番よく知っているのは、この中では総介であった。
そう、あの神こそは怒愛座(世界の神が一柱。万古(の時空を淀みし天空(の獅子……鬥址偶襾(
#8
慈円「さぁ、異世界よりの神よ!我にその力を示せ!」
鬥址偶襾(「……」
しかし、鬥址偶襾(は何も応えない。
そのまましばし沈黙が続いたのち、総介が思わず口を開く。
上(総介「貴様は自分が何を呼び出したのかわかっているのか?」
慈円「……恥ずかしながら、知りませんな……」
ウェステリア「あぁ?てめぇ、喧嘩売ってんのか!」
なんとも巫山戯(た話である。自分で呼び出しておいて、呼び出した存在の名すら知らぬとは……
これでは力を貸そうかと思った神も、へそを曲げるだろう。
慈円「……我らが今行った儀式は今風に言えば異世界の神召喚ガチャ……」
ソシャゲかッ!
慈円「故に、どの世界からどんな神が呼び出されるかは全くの未知数!」
そんなことを堂々と宣言されてもな……
梓與鷹(「……」
もしかして、俺たちはそんなもののために……と、急に疲労が襲ってくる與鷹(であった。
慈円「だがっ!コレは正しく当たりの部類ッ!」
いや、アタリ、ハズレ言うなッ!
ビシッ
と、その時、四つの狛犬に亀裂が走る。
慈円「むむ……これは!?」
バリ〜〜ンッ
四つの狛犬は一斉に、粉々に砕け散った。
そして、時同じくして鬥址偶襾(も姿を消すのであった。
典解(、蒙解(「慈円様、これは?!」
まさか、失敗ですか!?と僧兵どもにどよめきが走る。
慈円「厳密には失敗ではないでしょう……」
おそらく、召喚した神格を繋ぎ止めておけるだけの力が今回使った狛犬のようなナニカにはなかったのだろう…
…と慈円は続ける。
より質の良いアーティファクトを使えば、もっと長く留めさせることも可能。
さらに言えば、今回はいきなり強力な神を引き当て過ぎたのも原因である……と冷静に分析し始める。
ウェステリア「フッ……フフフ……フハハハハッ」
顎に手を当てて考え出す慈円や、それを黙って聞き続ける僧兵ども。そんな中、突如ウェステリアが大声を出し
て笑いだす。
いつも怒ってばかりいるウェステリアが笑い出すなどと、天変地異の前触れかもしれなかった
※そこまで言う!?
ウェステリア「そうか、そういうことか……やはり、我らシレントワイザードは間違ってはいなかった」
與鷹(「は!?」
#9
いや、お前ら最初から全て間違っているんだよ!と與鷹(が思わず突っ込みを入れそうになったが、それよりもに総介が声を荒げる
総介「巫山戯(るなッ!」
與鷹(「そ、総!?」
ウェステリアとは打って変わって怒りに満ち満ちた表情の総介に、思わず與鷹(はぎょっとする。
総介「貴様らは間違っている!」
慈円「何を言い出すかと思えば……」
総介「クソッ、こんなことならここへ俺がやってくるべきではなかった……」
山咲(桜「警部……」
そんな総介を見て、桜は少し狼狽えている様子。
総介「いや、仮に俺が来なかったとしても、同じような結果になっていたのか……」
ガリガリと頭を掻きむしりながら総介は自嘲気味に呟く。
與鷹(「それは、どういう……」
桜「ですが、これは警部の責任なんかでは……」
與鷹(が疑問を投げかける中、桜は総介が言わんとしていることを察したのか、慰めの言葉をかける。
総介「……クソッ」
ガンと地面に拳を叩きつける総介。
だが、しかし今は後悔をしている場合ではなさそうだ……
END
前の話へ 戻る 次の話へ