Eighter -Blindness Wizard-
20ther 〜黎光(ひかり)皎影(かげ)の柳生 C〜



#5
 江戸柳生の剣を見せる!と言いつつ見せられたのは蜘蛛切という妖刀の性能だった。
柳生衞琉(えいる)「……う、五月蠅い!五月蠅い!五月蠅ぁ〜〜〜いッ!」
 思わず友近(ゆこん)が突っ込むと、ぶんぶん蜘蛛切を振り回しながら抗議(?)する衞琉(えいる)であった。
衞琉(えいる)「ぶっ殺す!お前は江戸柳生最大の秘剣でぶっ殺す!」
 ずごごごごっと今まで以上に殺気が膨れ上がる。
柳生兵子(ひょうこ)「いいえ、それは遠慮します……」
伊達宗美「おいおい、友近(ゆこん)のせいですさまじいとばっちりだぞ……」
島友近(ゆこん)「わ、私は悪くありませんわ〜」
 せんわ〜、せんわ〜、せんわ〜とエコーが続いた。
衞琉(えいる)「江戸柳生究極秘奥義ッ!裏活人剣太刀(うらかつじんけんのたち)!」
 ズドンッ
 怒りと共に斬撃一閃
 ……通常ならば気を刃に纏わせ剣閃を放ち、相手を殺さずに斃す秘剣なのだが、今回はその逆。相手を活かさず
斃す殺人秘剣である。
兵子(ひょうこ)「あっ……」
 モロに直撃を受けてハデに吹き飛ぶ兵子(ひょうこ)であった。
宗美「なっ!?」
 勝負は一瞬で終わった?!その突然の出来事に宗美も友近(ゆこん)も茫然とする。
宗美「おいおい」
友近(ゆこん)「ええ、これはちょっとピンチですわね……」
 冷や汗をかきながら、宗美は村正・梵天丸に、友近(ゆこん)闇炎(やみほむら)に手をかける。
衞琉(えいる)「そこを退きなさい!お前たちザコに用はない」
 ビキッ
 そんなことを言われれば引き下がるわけにもいかない。宗美も友近(ゆこん)もキれた。
宗美「面白い!誰が雑魚か思い知らせてやるよ!」
 眼帯に手をかけながら宗美は叫ぶ。
友近(ゆこん)「うふふふ……楽に死ねるなんて思わないでくださいまし?」
 人を殺せる笑みを浮かべて凄まじい殺気を放つ友近(ゆこん)兵子(ひょうこ)「……貴方の相手は私です」
宗美、友近(ゆこん)兵子(ひょうこ)……」
 お前、生きてたのか!?と思わず驚きの声を上げる二人。先ほどの斬撃で真っ二つには言いすぎだが、最早戦闘
不能になったと思っていたのに、案外ぴんぴんしていることは驚嘆としか言いようがない。
 あっちにふらふら〜、こっちにふらふら〜そんな調子で兵子(ひょうこ)が戻ってくる。
 その恰好はなんかボロボロで煽情的だ……
宗美「おいおい、兵子(ひょうこ)、お前、本当に大丈夫なのか?」
兵子(ひょうこ)「……あんまり大丈夫ではない……」
宗美「えぇ〜〜!?」
 そこ、正直に言うんだ……なんて考える宗美
兵子(ひょうこ)「だけど、今はそんなことを言っている場合ではない!」
友近(ゆこん)「いや、それはそうなんですけれども……」
 ここは三人で力を合わせるべきなのでは?と友近(ゆこん)

#6
兵子(ひょうこ)「先ほどの貴方のそれ、江戸柳生ではありませんね?」
宗美「何だって?!」
兵子(ひょうこ)「ましてや尾張柳生でもない」
衞琉(えいる)「殺す!殺すッ!殺すぅうううッ!」
 更に吹き荒れる殺気。最早止めようがない……
宗美「おいおいおい、どうすんだコレ……」
友近(ゆこん)松子(しょうこ)万夏(まなつ)も連れてこないと流石に……」

 そして、それを陰ながら観戦するモノがいた……無論、七罪塔(しちざいとう)の面々である。
 歴史の墓場、某所
アマイモン「なるほどなぁ……嫉妬かぁ……」
シャイターン「実にレヴィアらしい方法よねぇ……」
 兵子(ひょうこ)衞琉(えいる)……その二人の間にある確執……それはある種の嫉妬にも近い。影の柳生として刺客の剣の道を歩ま
ざるを得なくなった衞琉(えいる)にとって光の柳生たる兵子(ひょうこ)は眩しく、そして羨ましかったというわけだ。
 レヴィアは正しくそこを突いたのだ。
レヴィアタン「うふふ……」
 最早衞琉(えいる)はレヴィアの操り人形(マリオネット)……
 ちなみに、レヴィアが衞琉(えいる)に眼をつけたのは七罪塔(しちざいとう)にとって赫眼(かくがん)同盟が邪魔だったからではない。衞琉(えいる)が他の人
間よりも天命(ネフェシュ)が高かったからだ。
 そして、今後も裏の人斬りとして天命(ネフェシュ)を集めるのに色々と都合がいい。
ルシュファー「なるほど、それは面白そうね……」
 最早、赫眼(かくがん)同盟の命運は尽きた。怒りに満ち満ちた衞琉(えいる)は容易く兵子(ひょうこ)を始め、宗美、友近(ゆこん)の命を刈り取るだろう
 そして、アジトに戻ってきた松子(しょうこ)万夏(まなつ)もまた、同じ運命を辿ることになるだろうと思い描いていた。

 でもって、話は死合に戻る
兵子(ひょうこ)「……私があなたに柳生の究極の剣を見せてあげる」
衞琉(えいる)「死ぃぃいねぇああッ!」 
 荒ぶる殺気をまき散らしながら、人とは思えないような……と、言うか、人には出せない程の超スピードで兵子(ひょうこ)
に迫る衞琉(えいる)。
 ガガッ
宗美、友近(ゆこん)「んなっ!?」
 だが、次の瞬間には、兵子(ひょうこ)は迫る蜘蛛切を無刀取で奪い去ってしまう。これで白雷と蜘蛛切の二刀流だ!
 それはライフルの弾丸を素手で掴む様な芸当であり、宗美、友近(ゆこん)が驚きの声を上げるのも無理はない。
兵子(ひょうこ)斬魔無限位(ざんまむげんい)」
 ズドンッ
 愛刀の蜘蛛切を奪われようが関係ない、獣の如く両手の爪をもって殺しにかかる衞琉(えいる)……が、それをサラっと回
避してカウンターとばかりに左右の刀で斬撃を叩き込む兵子(ひょうこ)衞琉(えいる)「がっ?!」
兵子(ひょうこ)活人剣太刀(かつじんけんのたち)……それは相手を殺さずに斃す秘剣……」
 そう告げたのち、ふら〜っとぶっ倒れる兵子(ひょうこ)。
宗美、友近(ゆこん)「おいおいおい!」
 思わず兵子(ひょうこ)に駆け寄る二人。
 果たして、兵子(ひょうこ)は無事なのか!?
 そして、この死合はどうなったのか!?


続

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