Eighter -Blindness Wizard-
20ther 〜黎光(ひかり)皎影(かげ)の柳生 D〜



#7
 江戸柳生 VS 尾張柳生
 その死合は今、最終局面を迎える!?
 人智を超えたスピードで襲い来る衞琉(えいる)に対してカウンターを叩き込む兵子(ひょうこ)。
 だが、しかし、直後、兵子(ひょうこ)もぶっ倒れる。
伊達宗美「お、おい、大丈夫か、兵子(ひょうこ)?」
 ぶっ倒れた兵子(ひょうこ)をゆさゆさと乱暴に揺さぶる宗美。
※こんな時はハデに動かさない方がいいのでは?とか考えてはいけない。友近(ゆこん)「いや、それよりも、ですわね……」
 兵子(ひょうこ)の斬撃を受け、派手に吹き飛ばされたとはいえ、まだ決着はついていない。
 だからこそ、友近(ゆこん)はもしも兵子(ひょうこ)よりも先に衞琉(えいる)が目覚めるようなことがあれば、代わりに自分が死合おうと愛刀
の闇炎(やみほむら)に手をかけて、相手の出方を窺っていた。

 そして、衞琉(えいる)の出方を窺っていたのは友近(ゆこん)だけではなかった……
 そう、歴史の墓場の片隅にて、一部始終を観察するモノ……それは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の上位存在、七罪塔(しちざいとう)だ。
アマイモン「まさかこれでお終い……なんてことはあるまい?」
レヴィアタン「ええ、それはもう、当然……」
 くすくすと笑みを浮かべながらレヴィアは語る。
レヴィアタン「まさか、人間(パーツ)如きにあれほどの力があったとは、少々計算外でしたが……」
 それでも、所詮はそこまで……
 次に衞琉(えいる)が目を覚ます時、それが奴らの終焉の時だ。
 ゆら〜り……
友近(ゆこん)「くっ……」
 かくて、その時は来たる!?
 まるで幽鬼の如く立ち上がるは衞琉(えいる)衞琉(えいる)「……」
友近(ゆこん)「来ますわよ……宗美さん」
宗美「言われなくともさッ!」
 目配せするや否や、既に分かっていたといわんばかりに宗美は兵子(ひょうこ)を担いでその場から一旦距離を置く。
 その際、兵子(ひょうこ)の左手から蜘蛛切が零れ落ちるが今は気にしている場合ではない。
※そもそも、蜘蛛切は兵子(ひょうこ)の愛刀ではなく、衞琉(えいる)の愛刀だしね
 そして、それを待ちわびていたかのように衞琉(えいる)は蜘蛛切の元へ一足飛びにかかる。
友近(ゆこん)「速っ……」
 やはり、蜘蛛切も回収しとけばよかったのでは?などと後悔しても既に遅い。
 ひゅおっ
 ガキンッ
 迫る兇刃を友近(ゆこん)闇炎(やみほむら)で受け止める。
衞琉(えいる)「そこをどきなさい!」
友近(ゆこん)「くっ……」
友近(ゆこん)(なんて力ですの!?)
 友近(ゆこん)とて小柄ながら巨大で重量な大太刀、闇炎(やみほむら)をふるまう女傑である。だが、そんな友近(ゆこん)の膂力を以てしても、
衞琉(えいる)の前には苦戦を強いられていた。
 尋常ではない力……こんな力がどこに!?と疑っている場合ではない。今は目の前の死合に集中しないことには
友近(ゆこん)に明日はない!

#8
衞琉(えいる)「はぁあああ!」
友近(ゆこん)「くっ……」
 ギリギリギリッ
 徐々に押されていく友近(ゆこん)
宗美「やべぇな、こりゃ……」
 友近(ゆこん)衞琉(えいる)の死合を見て思わず呟く宗美。
 更に、そのはずみで思わず担いでいた兵子(ひょうこ)を落っことす宗美であった。
※こらこら、ちゃんと担いでなさいよ!
 ただ、それでも目を覚まさない兵子(ひょうこ)……それはそれで大丈夫なのか!?

衞琉(えいる)「……」
友近(ゆこん)「……ん?!」
 だが、その時、衞琉(えいる)の動きがピタリと止まる。
 それはまるでスイッチが切れたかのようだ。
兵子(ひょうこ)(江戸柳生……その真髄は刺客の剣……そして、尾張柳生……その真髄は活人剣……)
 衞琉(えいる)の頭を兵子(ひょうこ)の言葉が過ぎる。
衞琉(えいる)「あっ……」
 がらん……とその場に蜘蛛切を落とす衞琉(えいる)衞琉(えいる)「あ、ああ……ああ……」
 そのまま顔面蒼白のまま、よろよろと後退る衞琉(えいる)友近(ゆこん)「これは……一体どういうことですの?」
宗美「えぇ!?お前が何かやったんじゃないのか?」
友近(ゆこん)「そんなわけないですわ!」
 第一、何かする余裕なんてなかったでしょうに!と友近(ゆこん)は続ける。
 それは、先ほどの兵子(ひょうこ)の斬撃が(もたら)したモノ。
 一見傷一つないように見える衞琉(えいる)肉体(カラダ)ではあるが、確かに、衞琉(えいる)はあの時、兵子(ひょうこ)に斬られたのだ!
 衞琉(えいる)の心……レヴィアによって縛られた邪悪を、兵子(ひょうこ)が断ち切った。
 これぞ、活人剣の真髄、尾張柳生の究極の一太刀
 そして、衞琉(えいる)はそのままその場に倒れこむのであった。
友近(ゆこん)、宗美「……」
 こうして、この死合は終わった……
 そこに勝者はない……だが、敗者もない……
宗美「ええと……どうする?」
友近(ゆこん)「どうする……といわれましても……」
 ただ、このまま外に放置しておくというのもマズいというのは分かっているため、宗美と友近(ゆこん)は手分けして兵子(ひょうこ)衞琉(えいる)赫眼(かくがん)同盟本部の中へ……
 そのままベッドに寝かせてみるのであった。

 ちなみに、その後、先に目覚めたのは兵子(ひょうこ)。何事もなかったかのように目を覚まし、何事もなかったかのように
動き回る。
宗美「お、おい、もう大丈夫なのか、兵子(ひょうこ)」
 ガクガク兵子(ひょうこ)を揺さぶる宗美。
(むし)ろ、今の状況が兵子(ひょうこ)にとって危険なのでは?!
友近(ゆこん)「目覚めましたのね……」
兵子(ひょうこ)「……ええ……」

#9
衞琉(えいる)「う、う〜〜ん……」
 その後、気絶していた衞琉(えいる)も目を覚ます。
衞琉(えいる)「はっ、ココはどこ!?私はダレ!?」
※いや、アンタは衞琉(えいる)だから!何もそこまでひどい記憶障害なわけないでしょうに……はっ!?レヴィアの傀儡に
 なった後遺症!?
兵子(ひょうこ)「気が付いた?」
衞琉(えいる)「なっ、兵子(ひょうこ)っ!なんでアンタがここに!?」
 ババっと兵子(ひょうこ)から距離を置く衞琉(えいる)
宗美「いや、それはこっちのセリフなんだが……」
衞琉(えいる)「ってか、本当に、ここどこ!?」
 きょろきょろしだす衞琉(えいる)。

シャイターン「これはどういうことなの?」
レヴィアタン「そんな馬鹿な……」
 レヴィアの術にかかり、傀儡となったはずの衞琉(えいる)が、元の状態に戻っている……それが七罪塔(しちざいとう)には信じがたい出
来事だった。
 柳生新陰流の真髄。相手を殺さず斃す秘剣。その心優しい剣が衞琉(えいる)をレヴィアの呪縛から救ったのだ。

衞琉(えいる)「あ〜、まぁ、いいわ……」
 なんかどっと疲れたわ……と、さっきとはまるで別人。憑き物が取れたかのような衞琉(えいる)。
 尾張柳生と江戸柳生の間の確執は消えたわけではないが、だとしてもッ!
※いや、そのつなげ方何なの!?
衞琉(えいる)「でもいいこと!尾張柳生!」
兵子(ひょうこ)「私の名前はそれではありませんが……」
衞琉(えいる)「ええい!五月蠅いッ!次に逢う時こと尾張柳生の終わりだと知りなさいッ!以上ッ!」
宗美、友近(ゆこん)「ちょっと待ったぁ!」
 そんな捨て台詞を残して帰ろうとした衞琉(えいる)を引き留める宗美と友近(ゆこん)
宗美、友近(ゆこん)「私とちょっと死合ってもらおうかしら?」
 さっきの状態が例え誰かに操られていたのだとしても、あの暴言は許せない!
 ずごごごごっと殺気を放ちつつ、ずずいっと衞琉(えいる)に迫る宗美、友近(ゆこん)
衞琉(えいる)「なななっ……何なの、貴方たち!助けて尾張柳生!」
 その日、衞琉(えいる)は宗美と友近(ゆこん)とも死合い、疲労困憊になって帰る羽目になったのであった。


END

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