Eighter -Blindness Wizard-
13ther 〜暴食王(ベルゼビュート)は捕縛せり C〜



#5
 かんなが到達するよりも前に、シレントワイザードの手により、七罪塔(しちざいとう)は陥落した。
白拍子かんな「……」
 迥巛(はるかわ)工業専門学校のとある教室へ足を運んだかんなだったが、そこで、全てが終わっているという
事は既に悟っていた。
※無論、それはかんなの超運のなせる技である。
サーフィス「き、ききき……君は?!」
かんな「あなたは、シレントワイザードの……」
サーフィス「……あ、ああ……シレントワイザードのサーフィス……」
 呪装四天王の一人だ。
茜瑙哭(セドナ)(やはり、あそこで足止めを食いすぎた……)
 虚ろな目をしたベルゼビュートを見て、茜瑙哭(セドナ)が呟く。
 全ては遅きに失したか?!
かんな(……いえ、まだです!)
 だが、まだ全ては終わってはいない。少なくとも、かんなはまだ諦めていない。
 確かに、七罪塔(しちざいとう)のひとつ、ベルゼビュートはシレントワイザードの手に落ちたと見える。
 だが、Eighterの敗北条件はそこではないのだ。
イオ(警告)
サーフィス「ま、ままま、まさか……やるってのか?」
 かんなが臨戦態勢を取っていることを警告するイオ。だが、サーフィスにしてみれば何故今更そんなことをする
のか理解が出来なかった。
 もはや、勝敗は決したのだから。
かんな「シレントワイザードの手に落ちたのは事実。ですが……」
 持ち去られる前に破壊できれば、それがEighterの勝利となる。
 だから、この場に居合わせられたのはある意味僥倖だ。
かんな「はあっ、龍鳳麟龜(りゅうほうりんき)!」
 キィンッ
 ズドドドドンッ
 いきなり茜瑙哭(セドナ)覚醒、そして、最速で最短で最大出力を叩き込む。応龍(おうりゅう)に変幻する光の龍が、平安を(もたら)す鳳凰が
信義を貫く麒麟が、吉凶を予兆する霊龜(れいき)が、サーフィスに襲い掛かる。
 キュゴガッ
 しかし、サーフィスもサーフィスで目にも止まらないスピードで移動、迫りくる四霊を回避する。
かんな「ですが、まだっ!」
 かんなの運をもってすれば回避されることは分かっていた。と、いうわけで、前言撤回しよう。先ほど最大出力
を叩き込んだと言ったがすまん、ありゃあ、嘘……ではないけれど、全力の一撃ではない。
かんな「龍鳳麟龜(りゅうほうりんき)!」
 ドドドドッ
 サーフィスが逃げ込んだ先に対してもう一度、四霊を解き放つ。
サーフィス「ベ、ベベベ……ベルゼビュート、鋩隕鋩蝕(ぼういんぼうしょく)!」
 ガボンッ
 だが、しかし、それはサーフィスの支配下にあるベルゼビュートの手によって食らいつくされる。
茜瑙哭(セドナ)(……)
 これもまたかんなの予測の範囲内?

#6
 一方、総介とバーニーヤはというと……
(かみ)総介「クソッ」
 突如ズキリと片頭痛に顔をしかめる総介。
バーニーヤ「どうやら貴様はそこまでのようだな!」
 そんな総介を自分の攻撃の蓄積でダメージが限界を突破したとか勝手に考えるバーニーヤは鬼の首級(くび)()ったかのよう
な顔で叫ぶ。
 だが、実際は違う。真理の断片が今回の敗北を察知したのだ。
山咲(やまざき)桜「(かみ)警部?!」

 更に、そこへ現れたるはサーフィス。
梓與鷹(よたか)「なっ、あいつは、まさか?!」
バーニーヤ「フッ、どうやら貴様らの負けのようだな!」
 ドンッ
 そして、更に背後からかんながすさまじいスピードで迫る
サーフィス「……」
 ズドゴンッ
バーニーヤ「げはあっ?!」
 目にもとまらぬスピードで上空へ逃れるサーフィス。そして、勝ち誇ったかのようにぼけ〜〜っと突っ立ってい
たバーニーヤはかんなの直撃を受けてハデに吹き飛ぶ。
サーフィス「あ、あああ、遊んでいる場合では……ない……ぞ」
與鷹(よたか)「くそっ、間に合わなかったってことか!?」
総介「チッ……」
 ギリリと歯軋りする総介が全てを物語っている。
 ヒュオンッ
與鷹(よたか)「なっ?!」
 次の瞬間、上空に居たサーフィスは地上へ、と、言うか、吹き飛ばされたバーニーヤの元へ
 そして、そのまま気絶していたバーニーヤを抱えると再び上空へ
與鷹(よたか)(こいつ、なんてスピードだ?!)
サーフィス「再々の黄門(リレミト)!」
かんな「鳳鸞舞刃(ほうらんぶじん)!」
 ドゴアッ
 かんなが平安を(もたら)す鳳凰を繰り出すと同時にサーフィスが転移のアーティファクトを駆使して逃げる。
かんな「……」
 上空を見上げながら、かんなも、悔しそうに神滅超越者(ラグナロクエクセル)の刃を納めるのであった。

総介「クソがッ!」
 ドカンと壁を殴りながら総介が叫ぶ。
與鷹(よたか)「総……」
桜「(かみ)警部……」
與鷹(よたか)「それにしても、シレントワイザードが、まさか七罪塔(しちざいとう)を従えるなどと……」
総介「いや、違うッ!」
與鷹(よたか)「え?どういうことだ?」
総介「……帰るぞ!最早、ここにいる必要は何もない」
與鷹(よたか)「お、おい、ちょっと待てよ、総……詳しく説明しろよ!」
 だが、與鷹(よたか)の声を一切合切無視して総介はその場を去る。
 それは、一体どういう意味なのだろうか?!

 なお余談であるが、ベルゼビュートに利用された哀れな人間(パーツ)たる渡持如考前悪(わたもい・かめあ)は、シレントワイザードの手によっ
ていまだに止められた状態のままである。
 だが、皮肉にも止められた状態であることが、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)に利用されても廃人にならずに過ごせる方法で
あったのだ。
※ってか、このままずっとってことは死んでいるも同義なんで結局場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)に利用されて生還なんてでき
 ないってことになるんですけどね……

#7
 歴史の墓場、とある一角にて……
 一部始終を見ていた残りの七罪塔(しちざいとう)には激震が走る。
アマイモン「こっ、これは……一体どういうことだよ!?」
*「そんなこと、分かるかよ!」
*「人間(パーツ)如きが作ったプログラムに、我らが屈するだと?!」
 ありえない出来事に、動揺も大きい。
*「かかったと見せかけて……ってわけではないのか?」
アマイモン「さっきからずっとビュートに呼びかけているが、通信が届かない……」
 七罪塔(しちざいとう)は、互いに通信を行っている。それで情報の共有などを行っているようなのだが、ベルゼビュートに対し
ては通信が届かないのだという。
 それは、つまり……
*「馬鹿な……完全に陥落したとでも言うのか……」
 七元徳(ななげんとく)……それは、七罪塔(しちざいとう)を沈黙させる切り札。この日、彼らは人間如きに使役されるという脅威を思い出した
 七罪塔(しちざいとう)、シレントワイザード、Eighter……三つ巴の戦いは今後、一層激化することだろう……


END

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